#わたしたちでもできること
犬山紙子×坂本美雨(前編)
犬山:うん。まとまっていないと動けないという感じではないですよね。
坂本:みんなそれぞれのアイデアがあって、興味がありそうな人がいたら「一緒に行く?」というのがLINEグループに投げかけられて、スケジュールが合う人で行くという感じですね。それと、今は、とにかく虐待問題についての勉強。乳児園や児童養護施設を訪れて、職員の方々のお話を聞かせていただいています。あとは、すでに長くこの問題に取り組んでこられた方々も多くいらっしゃるので、その方々にお話を聞くなど、引きつづき勉強をしたいなと思っています。
ーこれまでの活動で、現状の問題点や改善されるべき点について学びはありました?
犬山:死ぬほどあって、調べれば調べるほどどんどん出てくる。その中で見えてきたのは、これをやれば虐待がなくなるということは絶対にないということと、まず親のケアが超大事ということ。
そのうえで私たちが厚労省に出した提案書は、親に対する根本治療と子どもへの対症療法の二つに分かれていて、どちらもめちゃくちゃ大事なんです。
坂本:命が危険な子どもは今このタイミングにもいるからね。
犬山:そうなんです。対症療法として、そういう子たちを保護する仕組みを整えてほしい。具体的には、一時保護所が満員だから保護できないということがないようにしてほしいし、専門的な知識を持った児童福祉司さんがひとりで120人もの子どもを抱えているという状況は改善すべき。でも、それ以上に大事なのは、なぜ虐待をしてしまうのか、どうすればしなくなるのかということを丁寧に話していくことだと思います。学びを通して見えてきたのは、孤立の問題。実は、親自身は虐待を躾と思っていたり、子どもが憎くてしているわけではなかったり、親なりのSOSだったりするということ。
坂本:徐々に麻痺するものだと思うんですよ。最初は、ちょっとしたきっかけで、だんだん暴力にも慣れてきて、だんだん蝕まれていく。「はい、一線を越えました」というところがないからこそ、親もだんだんよくないサイクルにハマってしまうんじゃないかなと。
ー自分に起こる可能性はない、とは断言できないということですよね。
坂本:うん、絶対にないとは言えないし、紙一重だなって。まず、赤ちゃんと向き合ったときに、それだけでいっぱいいっぱいになるというのも事実で、そのときに私が経済的に困窮していたら、全然違う精神状態だったと思う。