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ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ

あんふぁん
気持ちの切り替えがスムーズにできない…。そんなわが子への対応のヒントを、公認心理師・佐藤めぐみさんが教えてくれました。
イラスト/杉浦さやか

ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


公認心理師:佐藤めぐみさん
育児相談室「ポジカフェ」主宰。欧米で心理学を学び、ポジティブ育児メソッドを考案。ポジ育ラボにてスマホで受講できるママ向け子育て心理学講座を配信中。
HP:

■あんふぁんママに聞きました
Q.嫌なことがあった後や好きなことに熱中している時、わが子はスムーズに気持ちの切り替えができる方だと思いますか?

ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


※2020年6/3~7/1あんふぁんWebアンケート。有効回答数1314

3人に1人のママが「わが子は切り替えが苦手」と感じている
嫌なことがあった後や好きなことに熱中しているときなどに「そろそろ次のことをしようか」と声を掛けても、全く聞く耳を持たない…。子どものそんな姿を見て、途方に暮れたことはありませんか?右のアンケート結果のように、ママの約4割弱が「わが子は気持ちの切り替えが苦手」と感じていることが分かりました。

上手に気持ちを切り替えることができれば、親子両方にとってうれしいこと。では一体どのように声を掛けたり、行動したりすれば良いのでしょう。それにはまず、気持ちの切り替えが「早い・遅い」の原因について知ることが大事!
その原因について紹介していきます。

気持ちの切り替え要因は気質と学習
ケンカの後、お友達はすぐにケロッとしているのに、わが子はいつまでもぐずぐず…。
同じ環境で育っているはずのきょうだい間でも、気持ちをサクッと切り替えられる子とそうでない子がいます。これはなぜなのでしょうか?

気持ちの切り替えの「早い・遅い」には、大きく「気質」と「学習」の2つの要因があります。
気質的なことの場合、その気質がどういう場面で使われるかで状況が変わります。
粘り強い・集中しやすいタイプの子は、親に指示されることを「自分の意思が妨げられた」と感じ、強く反発することがあります。

親としてはとても困るシーンなのですが、前述の通り、ある程度は生まれついたものである、と認識しておくと良いでしょう。気質の見極めには、生後21カ月(1歳9カ月頃)に見られる姿が一番参考になると言われています。
自我が芽生え始め、かつイヤイヤ期突入前のこの時期の様子は、子ども本来の気質である可能性が高いようです。
その頃の子どもの様子を振り返ってみると、適切な対応の仕方のきっかけが見つかるかもしれません。

そしてもう一つの要因が「学習」です。
これは、生まれた後の経験などから習得したもののこと。自分の気持ちを自分でなだめるということは、成長する上で必要なことですが、園児の場合、それができる子とできない子の差が顕著な時期でもあります。
そのため、「うちの子はできていない」ということが悪目立ちしてしまい、親は余計に気になってしまう…ということになるのです。

これら生まれ持った気質的な素因と、生まれた後の学習が掛け合わさることで切り替えの得手・不得手が決まっていきます。
例えば、気持ちが一点集中して意固地になってしまう気質を持った子が、さらに「自分が粘ればママ・パパは折れてくれる」と学習すれば、親にとっては一番大変な状況になってしまうのです。

ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


わが子はナゼ早い?遅い?気持ちの切り替え、原因はコレ
「気のそれやすさ」という気質
気質とは、その子が持って生まれた素因のこと。気がそれにくい子は一般的に集中力が高いとされ、反対に気がそれやすい子は、他のことに目が行きやすいです。それやすい=気が散りやすいことはあまり良いイメージを持たれませんが、「他のことを提案すると気がそれる=気持ちの切り替えがしやすい子」ともいえます。集中しやすい子はその逆の素質を持っているので、「切り替えは苦手」という子が多いようです。

生まれた後に「学習」したこと
0歳時の絶対的依存期(感情を他者によってなだめてもらう期間)を過ぎ、自分で感情コントロールできるようになっていく過程で、誰もがいろいろなことを学びます。切り替えが遅い子の場合、切り替えないことでメリットがあるから遅くなることがありますが、これは「10分泣けば、ママは折れてくる」と学習し、切り替えないことが自分の意思を通すツールになっているケースと言えます。


どうしたらいいの? 子どものこんなとき
あんふぁんママに子どもの「こんなとき困った!」をアンケート。みんなの切実な声を、一部紹介します。
● 夜、自分の見たいテレビやDVD、動画を見ていると、「あと1回だけ!」を繰り返してなかなか消そうとしません。
● 公園で遊んでいるとき、帰る時間だと声を掛けるとまだまだ遊ぶとだだをこねます。何度もあと10分あと10分と繰り返し、1時間帰れないことも…。
● 集中していると声掛けしても聞こえなくなるほど入り込んでしまいます。そういうときは何を言ってもやめないし、自分のタイミングで終わりにしないと泣いて怒ります。
● 兄弟げんかをしたりママに怒られたりするとしばらくすねています。
最近は「ママはもううちの子じゃない、出ていけ!」と部屋の角で座っています。仲直りだよと言っても拒否。「ママ1人でゲームしよっかなぁ」と言うと僕も!となるのですが、やめる時間を過ぎてもやり続けているとまたママに怒られ、そうすると…繰り返しです。
● 仲間に入れてもらえなかったり、おもちゃを貸してもらえなかったり、鬼ごっこで捕まったり…と自分の思いが、通らないと大声でわめき、八つ当たりがひどくなります。
● 子どもが眠いとき、疲れているとき、空腹のときなど、切り替えがうまくできません。

試してみよう!ケース別、気持ちの切り替え方
子どもの気持ちを上手に切り替えるために、声掛けはとても大切。
誰かに説得されると反抗したくなる心理を「心理的リアクタンス」と言います。
この心理を理解した上で、どういった言葉を掛けると良いのかを紹介します。


case.1
子どもが熱中していることを無理やり中断させられたとき、いつまでも機嫌が直らない

先々の良いことを想像して、今我慢するという「満足遅延耐性」力が、まだまだ低いのが子ども。
大人でも、ダイエットしているからとケーキを食べることを我慢できる人もいれば、できない人もいますよね。
子どもであれば、目の前にある好きなこと・楽しいことに流れるのは当たり前。
その方向を変えなくてはいけないのだから、少し言ったくらいですぐにやめられるわけではない、と理解しておきましょう。
その上で、声を掛けるときに気を付けたいのは、突然一方的に中断しないこと。まずは先を見越して前振りをしつつ、先々の楽しみを提示してみましょう。

[例]「18時からごはんだよ。タイマーかけておくから、鳴ったらテレビはおしまいね」
→タイマーが鳴る5分前に「あと5分でタイマー鳴るからね」と声を掛ける。
このときは必ず、子どもと目を合わせて、聞いていることを確認しましょう。
→「18時だからテレビはおしまいね。きちんとごはんが食べられたら、食後に大好きなデザートがあるよ」

case.2
叱られると、いつまでもぐずぐずと気持ちを立て直せない

子どもを叱るとき、どんな言葉で叱っていますか?その子の行動を改めようとするあまり、子ども自身を否定していないでしょうか。
「あなたなんかいらない」というような、子どもを全否定する叱り方をすると子どもも引きずりがちです。
もし言い過ぎてしまった場合は、「ママが間違っていた、ごめんね」ときちんと謝りましょう。
親の謝罪は、子どもが気持ちを切り替えるきっかけにもなります。
そして、完璧にできていなくても、少し良くなった部分を認めてあげると、子ども自身に対する信頼感が深まり、次はもっと頑張ろうと感情をコントロールする意欲が高まります。

[例]「この間より短い時間で泣きやめたね!」「幼稚園のお支度、昨日よりテキパキできたね」など、小さな成長もどんどん褒めてあげましょう。

case.3
自分の思い通りにならない・こだわりが受け入れられなくて不機嫌に

生まれたばかりの子どもはとにかくかわいいもの。
だから、好きなようにさせてあげないと傷つけてしまうのでは?と必要以上に丁寧に扱ってしまうことがあります。
そうすると基礎的なしつけができず、感情を切り替える機会を得ないまま、園生活に突入してしまいます。
結果、自分の思い通りにいかないことに子ども自身も折り合いがつかず、気持ちの切り替えがスムーズにできないことも。
我慢を体験せずに育ってしまうと、ママ自身を追い詰めてしまうことになりかねません。
子どもが負の感情を持つことをあまり怖がらないようにしましょう。

[例]「遊びたい気持ち、分かるよ。楽しいもんね。でも今はこれをする時間だよ」と、まずは受容する言葉を掛け、でも譲れない部分では毅然とした態度は崩さない。
→「じゃあ、今ママの言うことを聞いて褒められるのと、聞かないでずっとママがプンプンしているのと、どっちがいいかな?」「今日頑張って遊びをやめておうちに帰れたら、明日もこの時間に遊びに来られるよ」など、選択肢を与えて子どもに選ばせましょう。自分で決めた!と言う感覚に落とし込めると、子どもは行動に移しやすいです。

case.4
生理的欲求(食欲・睡眠欲など)が満たされないと、怒りだす

大人であっても、睡眠を削られればイライラしますよね。
生理的欲求が原因で悪くなった機嫌は、その欲求を満たしてあげないことには変えることは難しいもの。
だから、そのような状況に陥らないよう工夫するしかありません。
お腹が空くのが予想できる時間に子どもをおでかけさせるのならば、その前にごはんを食べる、などです。
また、規則正しい毎日を過ごしている子の方が、機嫌が良いという研究結果もあり、就寝時間が遅いとぐずりがちになる傾向も。
テレビやゲーム、スマートフォンなどに長時間触れて就寝時間が遅くなると、就学後に歯止めが効かなくなることがあります。
園時代にスクリーンとの付き合い方をきちんと導いてあげることは、正しい生活習慣にもつながりますよ。

パパ・ママ注意!やってはいけないNG声掛け
ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


【1】突き放し言葉
子どもが感情的になってグダグダしてしまうと、つい突き放すような言葉を使っていませんか?
その子の存在を全否定する言葉はやめましょう。
[NGワード]
●「どこかに行っちゃいなさい」
●「あなたはもう、うちの子じゃない」

【2】過保護・過管理・過干渉
子どもにご機嫌でいて欲しいがために、先回りして手を出し、失敗を拭ってしまったりするのはNG。
失敗を経験しないで育つことで、自立心が育たず、感情をコントロールする機会を失ってしまいます。
「寂しい」以外の負の感情を持つことは、いけないことではありません。
その状態から学び、自分で気持ちを切り替えるチャンスだと捉えましょう。

【3】選択肢を与えるときは「没収系」ではなく 「収穫系・報酬系」
気持ちを切り替えるための声掛けとして、子ども自身が決められるよう、選択肢を与えるのは良いことです。
しかし、その内容が「片付けないと、捨てちゃうよ」という没収系はやめましょう。
注意する割に結局捨てられないことが多く、「ママは本気じゃない」と話半分で聞くように。
「片付けたら、ママと遊びに行けるよ」などの収穫系・報酬系にすると、子どもも受け入れやすいようです。

【4】物質的欲求を満たすのは、ほどほどに
おもちゃを買って~と言われるとつい買ってしまう…。
このように、物欲が満たされすぎると「言ったら願いがかなう」と考えるようになり、感情のコントロールが苦手になることも。
物を欲しがったら、例えば「お誕生日のプレゼント候補リスト」を子どもと一緒に作り、そこに書いてみましょう。
リストを作るだけで気持ちが一時的に満たされます。
そして誕生日前にそのリストの中から一つを子どもに選ばせるようにしましょう。

頑張るママ・パパに佐藤さんからエール!
園という集団生活の中で、わが子だけが気持ちを切り替えられていない場面に遭遇すると、周囲の目が気になってしまうことがありますよね。
どうしてうちの子だけ…と自分を責めてしまう親御さんも多いようです。
でも、切り替えの得意・不得意は、生まれ持った気質が理由の場合もあるので、自らを責め過ぎないでください。
そして子どもは、辛い・しんどい・嫌だ・やりたくないなどの負の感情と向き合うことで、たくさんのことを学びます。
親がなんとかしなくては!と思わず、今まさに学習しているのだと考え、立ち直れた時にたくさん褒めてあげることで、良い循環・環境を作っていきましょう。
外出自粛などの行動制限で、他の子と会う機会が減っているかもしれません。
でも、裏を返せばわが子に集中・知ることができるまたとない機会とも言えます。
子どもの昨日と今日を比べて、ここがちょっとだけマシになった!
そんな小さな成長を見付けて、どんどん褒めてあげてください。

ちょっとの工夫でこんなに違う 子どもの気持ちを切り変える言葉かけ


2020年度のあんふぁんは、「幼児期の子どもが“今持っている力“を見つけて育てることが将来を生き抜く力になる」と捉え、「みつけようコドモノチカラ」をテーマにさまざまな情報を発信していきます。

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「あんふぁん」と姉妹誌「ぎゅって」、そして小学館の子育てメディア「HagKum」では、新しい時代の“つながり”を応援しています。今回は家族(=いえ)の応援がテーマです。

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