今すぐ知りたい! 親子のための、学ぶアプリ探検隊 いわさきちひろ 生誕一〇〇年 ~ちひろの目を通して考える「戦争」と「平和」
美術館は文化を提供する場です。戦時中に美しいものが華美だと禁じられたように、豊かな文化は平和な社会でなければ花開かないものだと思います。平和のために取り立てて何かを主張する、という方法ではなくて、豊かな文化をより多くの人に共感してもらう努力をして、「平和」に向き合っていきたいです。
――では、もしちひろさんが生きていたら、社会や子どもたちに対して、どのようなメッセージを投げかけると思いますか。
高津:ちひろは生涯、一貫して「絵描き」であり続けた人だと思うので、今の時代にあっても絵描きとしてできることを探したと思います。なので、生きていたときと変わらず、「子どもや弱い立場の人が傷つく戦争をしないでほしい」という平和への想いを自身の言葉や絵を通して伝えようとしたのではないでしょうか。子どもたちに対しては、のびのびと健やかに育ってほしいというでしょうね。
美術館だからこそできるやり方で、平和な社会を実現していきたいと話す高津さん
高津:わたしの大好きな「ささやかな絵本の絵描きなのである」というちひろの文章があるんです。
これが、子どもたちへのメッセージになるのではないでしょうか。
ささやかな絵本の絵描きなのである
私が力がなくて無力なとき(いつもそうなのだろうけれど)、人の心のあたたかさに本当に涙ぐみたくなる。
この全く勇ましくも雄々しくもない私のもって生まれた仕事は絵を描くことなのだ。たくましい、人をふるいたたせるような油絵ではなくて、ささやかな絵本の絵描きなのである。
そのやさしい絵本を見たこどもが、大きくなってもわすれずに心のどこかにとどめておいてくれて、何か人生のかなしいときや、絶望的になったときに、その絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして心をなごませてくれたらと思う。それが私のいろんな方々へのお礼であり、生きがいだと思っている。
ちひろ最晩年の手帳より(1973年)
いわさきちひろ『ラブレター』(講談社、2004年)より抜粋
いわさきちひろチューリップとあかちゃん1971年
――今日はありがとうございました。
いわさきちひろ生誕一〇〇年を機に開かれている「Life展」。いわさきちひろが大切にし、描いてきた「Life」――いのち、生命、人生、生活など――をテーマに、さまざまな分野で活躍する作家たちがコラボレートした展覧会で、「ちひろ美術館・東京」