子育て情報『公立中高一貫校、「受検」します! 支配的な母親から離れて自分を取り戻していく物語『君だけのシネマ』』

公立中高一貫校、「受検」します! 支配的な母親から離れて自分を取り戻していく物語『君だけのシネマ』

映画館の立ち上げ、運営、お客さんの呼び込み。映画館を軌道に乗せるにはやるべきことがいっぱいです。そんなさっこちゃんの片腕となって活躍するのが、史織と、佐渡の中学に通う映画好きな史織の親戚・桐谷瑛太、モノを創るのがすばらしく上手な、しかしクラスでは「変わり者」として敬遠されている藤原一花でした。

自分の世界をしっかり持っている瑛太や一花に比べて、史織はいつでも、何を決めるにも自分の感性を否定してくる母の心の声に縛られ苦しめられます。史織ほどではないにしても、自分の直感を信じきれない感覚はだれにでも思い当たる節があるのではないでしょうか。だからこそ、それを受け止めるさっこちゃんの言葉に少なからず勇気づけられるのかもしれません。

「史織のセンスは、史織だけのものだよ。もし九十九人が、そのいすを選ばなくても、史織がステキって思ったら、たった一人でもそれでいいと思うな」
「私は逃げることって……選ぶことだと思うんだ。
……自分が心地好くいられる場所を選ぶことが逃げることなら、逃げるって悪くない。そう思わん?」

自分の選択は、自分の心に聞いて判断する。だれかと本音で関わることで、相手にも自分の個性を発見してもらう。「自分が(・)やりたいこと」や「自分が(・)好きなもの」を「自分が(・)選ぶ」という経験は少しずつ史織に生きる希望をもたらし、彼女を明るい方へと押し出していきます。やがて迎える母親との対峙――。

愛されたいから苦しんでしまう

中学生の頃の自分がこの物語を読んだなら、間違いなく史織に肩入れし、「あなたのため」と言いながら子どもに依存する母親に憤慨していたと思います。けれども今のわたしは物語を読みながら、「自分も母親として子どもを縛っていないだろうか」「子どもにとって母親とは、かくも絶対的な存在なんだ」ということを痛感しました。

史織は母親に認められたい。
認められたいだけでなく、心から喜んでほしい。だからこそ限界までがんばってしまうのだし、母の良しとするものが自分にとっても良いのだと思い込もうとするのでしょう。そのうちに自分の本心がわからなくなり、自分がうまくいかないのは母親の言う通りにしなかったからだ、つらくても母親の言う通りにするべきなのだ、というように母親に支配されていく、その過程が本当に恐ろしいと思いました。

親子関係に問題がなくても、何のために生きているのだろう、自分は将来どんなふうに生きていけばよいのだろうと考える中学生は多いでしょう。

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