子育て情報『「普通」を望む親心は条件付きの愛だったー自閉症児の親子を取材して、小児科医が願うこと』

2018年11月9日 07:00

「普通」を望む親心は条件付きの愛だったー自閉症児の親子を取材して、小児科医が願うこと


発達障害がある子どもと家族がつむぐ物語を聴き、記したい

知的障害のある自閉症児の成長記録を書くことは長年の私の願いでした。私はこれまでに、先天性染色体異常によって短命という運命にある障害児の記録や、自宅で人工呼吸器を付けている子の記録を書いてきました。

もちろん、障害の重さに「軽重」などありません。それぞれのご家庭が大変な思いを抱えています。ただ、知的障害児には体が元気であるという特徴があります。私のクリニックにも何人もの知的障害児が来ます。その子たちは、クリニック中を走りまくったり、大きな声を上げたりで、母親の神経は休まらないように見えます。

社会との接点が多く、そのたびに衝突をくり返す知的障害のある子の親には、寝たきりの重症児を持つ親とはまた違った種類の苦労があるのだろうと私は以前から思っていました。
さらに自閉症という障害は、社会的な障害と言えます。他者とのコミュニケーションが難しかったり、強いこだわりのために社会の中で大きなトラブルを抱えたりするからです。

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Upload By 松永 正訓

私は、知的障害のある自閉症児がどういう生活をしているのか、具体的に知りたいと思っていました。そんな時に出会ったのが、立石美津子さんです。立石さんは幼児教育に関する著者・講演家です。そして知的障害のある自閉症の息子さんをシングルマザーとして18年育てています(取材・執筆時は17歳)。

以下、立石さんのことを母と、お子さんの名前を勇太君(仮名)と書きます。私は、聞き書きという形で母から見た勇太君との17年を、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)という本にまとめました。
本稿ではこの本を書いたことで、私自身が学んだことを書いてみたいと思います。


我が子を、ありのまま受け止めるまで

予測をしていたこととは言え、母は我が子の障害を簡単には受け入れませんでした。こどものこころ診療部の専門医に、2歳の勇太君のことを「知的障害を伴う自閉症」と診断された時、母は医師に対して強い怒りの気持ちを向けます。そして同時に我が子に対して「こんな子は要らない」と拒否感すら持ちます。

母は自分の親から英才教育を受けて育ったため、勇太君にも英才教育を施していました。勉強ができて、いい学校に行って、いい会社に入って、いい家庭を築くことは、母にとっての夢だったのです。

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