2022年6月15日 16:15
発達特性がある大学生への支援の現状と課題。大学・学部選びのポイントも――中央大学教授・山科先生インタビュー
問題が先送りされ、会社員になってから不適応に陥っても、企業の中では大学のように手厚い支援はありません。それは、私がクリニックや企業内の健康管理センターで精神科医として働いていて実感することです。
――さまざまな課題を感じられているのですね。発達の特性がある学生には、どのように過ごしてほしいとお考えですか。
山科先生:できることなら、発達の特性がある人は、学生時代に自身の特性と向き合い、この複雑で曖昧な世の中を生き抜く戦略・戦術について考え始めてほしいと願っています。「障害は社会の側にある」のですが、その社会と自分との相性を客観的に分析する視点をもつこと、その前提となる柔軟な自我が育つような支援を一人ひとりに提供することが、私たちの最終目標です。
ただし、本人にその自覚が無いまま支援者が人の人生や心の中に踏み込むことなどできません。どうやって気づいていただくか、気づいたときに強い不安や孤独感を抱くことなく支援を開始するにはどうすれば良いのか、学生の成長に寄り添い「伴走」する支援者のあり方とは、など課題はつきません。
大学・学部選びでは「本人の興味・関心」を優先させてほしい
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=33000005628
――ここまでお話を伺い、発達の特性による困り感がある大学生の多さを再認識しました。発達に特性がある場合、どのようなことを大学・学部選びで大切にしたほうが良いとお考えでしょうか。
山科先生:大学・学部選びに関しては、何よりもまず「本人の興味・関心」を優先させてほしいと思います。大学の勉強は、高校時代よりはるかに複雑でレベルも高くなります。「好き」という原動力がないと、ただただ苦しいだけの日々を送ることになりかねません。
就職に有利だからという理由で学部を選んだり、大学のネームバリューに惹かれて「その中で入りやすい学部」といった選択をしたりすると、入学後に壁に当たった際に乗り越えることは難しくなります。――「好き」という原動力が、困難を乗り越える力にもなるということですね。
山科先生:大学時代に学んだ「知識」など、卒業後数年したら古びてしまいます。大学で身につけるべきなのは、「調べる力」「長い、構造化された文章をつくり上げる力」「ディスカッションの力」