支援時間が大幅に拡大。個別支援でスキルを学び、集団の場で実践できる新しい支援の形【公認心理師に聞く】
授業の「人数」と「時間」が変更に。リニューアルのメリットは?
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緒方広海(おがた ひろうみ)
臨床心理士、公認心理師。行政機関にて心理専門職として15年間勤務。精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、子ども家庭総合センターで、乳幼児から成人期までの精神保健福祉・障害福祉の分野で幅広く心理臨床業務に従事。現在はLITALICOの中で支援に関わる指導員への研修やスーパーバイザー育成の統括などに従事する。
ーー障害福祉サービスの制度・基準変更に伴い、LITALICOジュニアのサービス内容がリニューアルされました。まずは、改めてサービスの変更点についてお聞かせください。
LITALICOジュニアでは、これまで1対1から1対3の個別指導や少人数グループを対象に、45分から1時間程度の比較的短い時間の支援を提供していましたが、2024年4月からは、10人前後のお子さまが同じ空間内で過ごす「集団の場」を中心とした支援を開始しました。それと同時に、1回あたりの支援時間が45分から3時間へと大幅に拡大されました。
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この変更後も、集団の場と並行するかたちでお子さま一人ひとりの状況に合わせた個別指導は引き続き実施しています。集団と個別、両方の支援を組み合わせることで、お子さまの発達段階やニーズに柔軟に対応できる体制を整えたのが今回のリニューアルのポイントだといえます。
※児童発達支援ではお子さまの状況やニーズに応じて1.5時間での支援を提供する場合もあります。また、放課後等デイサービスでは1.5時間支援を中心にしています。詳しくはお問合せ時におたずねください。
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ーー今回の支援形態の変更のメリットは、具体的にどのようなところにあるのでしょうか?
発達支援に限らず、支援は個別最適であることが何よりも大切です。そう考えると、支援のバリエーションは多ければ多いほどよく、理想としては一人ひとりのお子さまや保護者さまの状況に合わせた支援を選択できる状態です。
これまで特別プログラムとしての提供にとどまっていた集団支援を支援形態の1つとして正式に位置づけることで、個別支援と組み合わせたサービスを提供できるようになりました。
この変更により、お子さま一人ひとりにとって最適な支援を届けやすくなったことが大きなメリットだと考えています。
集団の場は、学んだスキルを自分のものとして身につけるための練習の場
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ーー個別と集団、それぞれに違ったよさがあると思いますが、集団授業ならではのメリットは、どのようなところにあるのでしょうか?
お子さまが快適な生活を送るために必要なスキルの獲得を目指すのが個別支援の大きなテーマです。しかし、スキルを獲得することは最終的なゴールではありません。大切なのは、学んだスキルをご家庭や保育園・幼稚園、学校で使えるようになることなんですよね。
LITALICOジュニアの集団の場にご参加いただく最大のメリットは、学んだスキルを応用し、自分のものとして身につけるための練習の場ができる点にあります。お子さま一人ひとりの特性を理解した指導員が見守る中、お友達と関わる機会を持っていただくことには、大きな意味があると考えています。保育園や幼稚園、学校などの集団に参加することに不安があるお子さまでも、安心して参加できる集団の場をつくりたいという思いで、集団授業のプログラムをつくりました。
ーーこれまでの個別授業では難しかった支援ができるようになったのですね。
その通りです。指導員との1対1の空間では、そもそもご家庭や園での困りごとが表に出ないこともありました。どのような場面で困りごとが出てくるのかを確認しなければ、最適な改善策を提案するのが難しいケースもあり、それも個別支援の中で1つの課題になっていたんです。
今回、LITALICOジュニア内に集団の場を設けることで、日常生活でのお子さまの困りごとの発見と、その解決策の提案がスムーズになる効果も期待できると考えています。
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支援時間の拡大により多様な経験の提供が可能に
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ーー1回あたりの支援時間が3時間となりましたが、この支援時間の拡大によるメリットについても教えてください。集団授業では、自由あそびやおやつの時間、みんなで一緒に活動する時間など、さまざまな場面を設定しています。授業時間を延長することで、このようにお子さまの成長を支える多様な経験を提供できるようになったことが一番のメリットですね。
ーーおやつの時間のように、今までの授業にはなかった日常的な場面も取り入れることで、お子さまの新たな一面を発見することにもつながりそうですね。
そうなんです。つい最近、「3歳のお子さまが自分のおやつを分けてくれたんです」と嬉しそうに報告してくれた指導員がいました。お子さまの新たな一面を発見したり、できることが増えていく姿を見られたりすることは、指導員のやりがいにもつながります。
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ーー集団生活の中でお子さま同士のトラブルが起きた場合はどのように対応されていますか?
LITALICOジュニアでは、お子さま一人ひとりの状況に合わせた環境調整を行うことを大切にしています。たとえば、お友達とあそぶ時のルールを決めたり、おもちゃの取り合いを防ぐために同じおもちゃをいくつか用意したり、それぞれの子に合った過ごし方を提供したりと、工夫できることはたくさんあるんです。
もちろん、個別授業の中でお子さまに対して「次はこんな伝え方をしようね」のように伝えることも必要です。ただ、LITALICOジュニアとしては、そもそもトラブルが起こらないようにするには何ができるのかを考えたうえでの環境面へのアプローチを今後も重視していきたいですね。
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丁寧なアセスメントによって実現する、個別最適な支援
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ーー集団の場でも一人ひとりのお子さまに合わせた支援を提供できる理由はどんなところにあるのでしょうか?
LITALICOジュニアでは、お子さまとご家族に寄り添った丁寧なアセスメントを行うことが大切だと考えています。
お子さまの発達状況や特性について、アセスメントを通して深く理解するからこそ、一人ひとりに合わせた支援の提供ができるんです。
ーーLITALICOジュニアで行っているアセスメントとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
アセスメントでは、保護者さまへのヒアリングをはじめ、お子さまの行動観察、質問用紙を用いた発達状況・特性の調査など、いくつかの客観的な評価を組み合わせながら、一人ひとりの特性を多角的に理解していきます。
その情報をもとに、お子さまが次に目指すべき目標を決め、それを達成するためのサポート内容を具体的に考えていきます。同時に、お子さまが過ごしやすくなるような環境づくりについても検討します。こうして、お子さま一人ひとりに合った個別支援計画をつくりあげていくんです。
最後に、個別支援計画の内容について保護者さまにも詳しくご説明し、同意を得たうえでサポートに移るというのがアセスメントから支援開始までの一連の流れになります。支援を開始したあとも定期的にモニタリングを行い、必要に応じて個別支援計画の見直しをしています。
アセスメントから支援、モニタリングまでのサイクルを丁寧に回していくことが、お子さま一人ひとりに合った支援を実現するための鍵となっています。
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ーー個別支援計画を作成する際の目標設定について、何か気をつけていることはありますか?
目標設定では、抽象的な目標ではなく、具体的な行動に落とし込んだ細かい目標を設定するようにしています。たとえば、「楽しくあそぶ」という目標では、何をもって達成とするのかが曖昧で、指導員によって評価にバラつきが出てしまいますよね。そのため、「おもちゃを貸してと言われた時に、5回中4回は貸すことができる」というように、明確な行動基準を設定するんです。
具体的な目標を設定することで、指導員同士が同じ基準でお子さまの行動を評価できますし、今後の支援内容を検討する際の意見交換もしやすくなります。「ブロックで30分集中してあそぶ」という目標を設定し、お子さまがそれをクリアできたら、自然と「40分集中してあそべるようにするためにできることは?」と、建設的な議論につながります。
このように、具体的な行動目標を設定することで、支援の方向性が明確になり、スタッフ間の連携もスムーズになります。これが、お子さま一人ひとりに対する支援の質を高めることにつながっていると考えています。※クリックするとLITALICOジュニアのお問い合わせページに遷移します
今後も「お子さまが自分らしく生きる力を育める場所」でありたい
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ーーサービスのリニューアル後、保護者さまからはどのようなお声がありましたか?
リニューアル後は多くの方から「楽しく通えている」「支援時間が伸びたことで、自分の時間を確保できるようになった」などのポジティブな感想をいただいています。
また、集団の中で過ごす様子から、お子さまの成長を実感できることも、保護者さまにとってうれしい変化のようです。授業をモニタリングいただいた保護者さまからは「こんなふうにお友達と関わることができるんだ」という驚きの声が上がることもあるんですよ。
ーーお子さまの発達が気になる保護者さまは多くいらっしゃると思いますが、LITALICOジュニアの児童発達支援や放課後等デイサービスはどのような方におすすめできるでしょうか?
LITALICOジュニアには「自分らしく生きる力を育む」というコンセプトがあるんです。苦手なことを克服するだけでなく、周囲の理解や配慮を促すことも重視しながら、お子さまが自分らしく生きていくための発達支援を提供し続けたい。そのために、お子さまの特性を深く理解し、周囲との関わり方を共に考えていくパートナーでありたい。そう考えながら、私たちは日々お子さま一人ひとりと向き合っています。
なので、お子さまが自分らしく生きていくためのサポートを求めている方には、ぜひLITALICOジュニアをご利用いただきたいです。お子さまの発達が気になる方であれば、どなたでもご利用いただけるサービスですので、心配ごとがある方はぜひ一度教室にお越しいただければと思います。
ーーありがとうございました。
※この記事は、LITALICOジュニアに掲載のコラムの一部を変更し、構成しています
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。