算数苦手で理系進学断念…。ASDの私「脅威」だった世界を変えてくれた「科学」への執着
あなたたちがもし、何トンもある重たい物体だったらどうかしら。クレーターができるかもしれない。衝撃波が出て周りのものが吹っ飛ぶかもしれない。落ちたときの強い摩擦で煙や火が出るかもしれない。
これが位置エネルギー。あなたたちがそこに静止していられるのは、床があなたたちの体重を支え続けているからにすぎないのよ。
私は、周りからぽっかり浮いた存在だと思っていた自分が、宇宙を貫く大きな大きな物理法則に「縛られて」ここに存在しているのであり、まったくもって「世界と無関係」などではなかったのだ、と思い、たいへんに感激しました。
そして、「あなたたちはそこに存在して座っているだけで大きなエネルギーを抱えている」という表現は、単に物理的な話としてだけではなく、比喩的な、詩的な話としても響きました。
「私は存在しているだけで大きなエネルギーを抱えているんだ、良くも悪くも世の中に影響しているんだ」と思うと、自己否定感の強かった私は、何か強烈に鼓舞されるような感覚を覚えるのでした。
マッドサイエンティストになりたかった
学校では理科の実験用にお揃いで白衣を買うことになっていたのですが、私はこの白衣が大好きでした。高校の頃、用もないのにそれを羽織ってノシノシと校内を練り歩き、何をするともなく理科室に入り浸っていました。クラスメートが「異常に似合う!」とか言ってくれて、それで気をよくしていた思い出があります。
言い伝えられている強烈なキャラクターも合わせて、相対性理論のアインシュタインが憧れの人。理系雑誌を愛読し、実験器具をインテリアとして集め……そんな自分にある種のアイデンティティを感じていて、いつかマッドサイエンティストになりたいと思っていました。
あるとき、愛読していた科学雑誌で「誰でも分かる!特殊相対性理論特集」みたいな記事があり、それを血眼になって読んで特殊相対性理論の概要を理解しました。面白すぎていてもたってもいられなくなって、特に仲がいいわけでもないクラスメートをつかまえて30分間かけて一方的に講義したことがあります。
もうこの特殊相対性理論の一方的な講義については、何度思い返しても本当に、ASD(自閉スペクトラム症)の私らしい言動だったなと思います(笑)。当時は「クラスメートは面白いと言ってくれた!よいことをした!」とご満悦でしたが、よく思い返せば彼女は断りきれずに我慢して聞いてくれたんだと思います……。