算数苦手で理系進学断念…。ASDの私「脅威」だった世界を変えてくれた「科学」への執着
泣く泣く文系へ
そんな私でしたが、高2の時の文理選択ではなんと文系に進み、大学も文系を選びました。
だって、絶望的に数学ができなかったんです。物理、化学、生物……誰よりも前のめりで、目をギラギラさせて、鼻血が出そうなほど興奮して授業を聴いているのに、あまりに数学ができないため、テストでは点がとれない。
数学、泣きながら必死で勉強して13点をとったことがあります。こんなことでは、仮になんとか受験では受かっても、その後ついてまわる数学に苦労したり、挫折したりするに違いない。
悩んだ末、国語や英語は成績がよかったため、文系に進むことに決めました。
進んだのは文学作家になるコースでしたが、授業が始まった瞬間、自分には文学に全く興味がない、ということに気づいてしまって愕然としました。
同時に二次障害が悪化したのと、家庭環境の悪化も顕著になったのとで、結局勉強にはほとんど集中できないまま4年間の大学生活を終えてしまいました。
私は「どの有名4年制大学に行くか」みたいな話しか出てこないような進学校にいたので、高等専門学校というものを知らなかったのですが、30代になって自分の発達障害を自覚したあと、初めて知ることになりました。
文系の大学に進まず、理系の高等専門学校に進むなどしていたら、もしかするともっと社会適応できていたかもしれない、と思うことがあります。
それでも、今はこれでいい
けれど、人生は効率ばかりではありません。私は理系に進まずに人生を「遠回り」したことで、人生をより深めることができたのではないかと思っています。
たまたまですが、結果的に今、文章を書くにしろ日本語を教えるにしろ、「言葉を扱う」という人文的なことを仕事にしていることもあり、私の人生はこれでよかったのかもしれないな、と思っています。
理系の世界への憧れは、化学の構造式をモチーフにしたアクセサリーを身に着けてニヤニヤするとか、変わった温度計をしげしげと眺めてしきりに感心する、生成AIの活用に没頭する、化学の知識を家事に活かす、などといったことに残っています。文/宇樹義子
(監修鈴木先生より)
一般的にASD(自閉スペクトラム症)の方は理系に進む方が多いのが現状です。
小学校の時は国語が苦手で算数が得意だというのがASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにはよく見られる傾向です。