「書き出し上手」は「作文上手」! 作文を魅力的にする“書き出しのパターン”12選
子どもに「書き出しを工夫したい!」と思わせよう
この世に「書き出し」が重要でない作文はひとつもありません。書き出しで読む人の興味を引くことができれば、読む人は「これはおもしろそうだ!」と、前のめりになって、その続きをしっかり読んでくれるかもしれません。
一方で、書き出しで興味をひくことができなければ、「これはつまらなそうだ」「どれも似たような作文だ」と、読む人は続きを読み流してしまうかもしれません。書き出しの差は“微差”ではなく“大差”なのです。
【平凡な書き出しの例】
お題:遠足
平凡な書き出し:きのうは○○にえんそくに行きました。
お題:お母さん
平凡な書き出し:わたしのお母さんは、とてもやさしいです。
お題:好きな食べ物
平凡な書き出し:わたしの好きなたべものは、カレーライスです。
お題:学校
平凡な書き出し:ぼくの学校は○○小学校といいます。
お題:読書感想文
平凡な書き出し:わたしは『〇〇』という本を読みました。
おそらく、子どもに向かって「書き出しは平凡にならないようにね」と“書き出しの重要性”を説いたところで、ピンとこない子がほとんどでしょう。それどころか、「難しい」「よくわからない」「面倒くさい」と、書き出しを工夫することを、嫌がる子もいるかもしれません。
では、どうすれば、子どもに「書き出しの重要性」を実感してもらうことができるでしょうか?いちばんいいのは、個性的な書き出しにたくさん触れさせることです。童話、小説、エッセイ、他の子どもの作文……どんな種類の文章でも構いません。親が「個性的だな」「おもしろいな」「続きを読みたくなった」という書き出しを見つけたら、「この文章の書き出し、おもしろいよ!」と子どもに見せてあげてください。
子ども自身が「おもしろい」「いいね」「楽しそう」と思えば、その子は、似たような「書き出し」を書いてみたいと思うでしょう。大事なことは、子どもに強いるのではなく、子ども自身が自然と「書き出しに工夫をしてみたい」と思えるよう、親がさり気なくナビゲートしてあげることです。
もちろん、これから紹介する12個の「書き出しパターン」を子どもに見せてあげるのも効果的。子どもが、「書き出しにもいろいろあるんだね」「楽しい書き出しだね」「こんなふうに書いてもいいんだ!」と思ってくれたら最高です。子どもの意識が「書き出しを工夫しないといけない」から「書き出しを工夫したい」へと変わるはずです。
作文の「書き出し」に使えるパターン12選
では、さっそく「書き出し」のパターンを紹介していきます。
【1】「自分の声」から入る
「やばい!」
先生がガラっとドアをあけたしゅんかん、ぼくたちはさけんでいた。
「うっ、これは、うまい!」
こんなにおいしいラーメンをたべたのは、うまれて初めてです。
【2】「他人の声」から入る
「こら、ユウタ!はやくおきなさい!」
いつものようにママが大声をあげている。
「よくがんばったね」
コーチのその言葉で、ぼくはうれしくなりました。
【3】音から入る
ピュー、ピュー。あまりの風のつよさに、ぼくは泣きそうになりました。
ガッチャーン!花びんがわれたしゅんかん、ぼくのからだからヘンな汗がふきだした。
【4】「自分の意見」から入る
友だちの悪口だけは、ぜったいに言わない。わたしはそう決めています。
ぼくは勉強がきらいだ。でも、それでいいと思っています。
【5】「疑問」から入る
「たすうけつ」で決めたことって、本当に正しいのだろうか?前から思っていたぎもんです。
子どもはどうしてお酒をのんではいけないのかな?ぼくはふしぎに思った。
【6】「たとえ」から入る
赤オニが来た!と思ったら、おこって顔をまっ赤にしたママでした。
まるで、雪をかぶった富士山のようでした。ぼくのお茶わんにつがれた大もりごはんのことです。
【7】「くり返し」から入る
食べた、食べた、食べまくった。きのうは、ひさしぶりにやき肉を食べました。
いたい、いたい、いたい。キズ口にしょうどくやくをぬられるときが、イヤでイヤでたまりません。
【8】「気づき&発見」から入る
ついに、朝ねぼうしない方法をはっけんしました!
逆あがりのコツがわかったぞ!
【9】「物語」っぽく入る
それは、ねつがさがった日の夜のことでした。
としょかんで、むちゅうになって本をよんでいたときのことでした。
【10】「告白」から入る
じつは、いままでママとパパにかくしていたことがあります。
きょうは、ぼくの本当の気もちを書きたいと思います。
【11】「悩み」から入る
ぼくはあまり足がはやくありません。
わたしは、かん字をおぼえるのが、ものすごく苦手です。
【12】「会話」から入る
「バナナっておいしいよね?」
「えー、ぼくはきらいだ」
「じゃあ、なんのくだものが好き?」
「うーん、トマト!」
そこで、みんなが大わらいした。
文章の「書き出し」には、さまざまなパターンがあります。
親子でそれぞれ気に入ったパターンを発表したり、平凡な「書き出し」と何が違うのか、一緒に話し合ったりしてもいいでしょう。あるいは、紹介したパターン以外に、どういう「書き出し」がおもしろそうか、出し合ってみるのもいいですね。
もちろん、はじめはマネから入ってOKです。好きなパターンを利用して、子どもに「書き出し」を書かせてみましょう。くれぐれも「マネしないで、自分で考えなさい!」などと野暮なことは言わないように。作文に限りませんが、マネから入ることは技術習得のセオリーです。大いにマネさせましょう。
「書き出し」を制する者は「作文」を制す?
「書き出し」は読む人の興味を引くだけでなく、書き手自身にも大きな影響を及ぼすものです。
「きのう、えんそくに行きました」よりも「ジャッポーン! 気がついたときには、わたしは池におちていました」でスタートする文章のほうが、作文を書く子ども自身も楽しいはずです。頭に映像が浮かぶため、続きのエピソードが書きやすくなります。
説明的な文章からスタートすると、そのあとも説明的な文章になりがちです。一方で、イメージが浮かぶ場面からスタートすると、そのあとの文章もドラマチックになりやすくなります。気がつけば、オンリー・ワンな作文に仕上がっていることも珍しくありません。
先ほどご紹介した12個のパターンも、読んだ瞬間にイメージが浮かびやすいものを優先して選びました。10歳未満の子どもにとって大切なのは、「説明力」よりも「体験の描写力」です。自身の体験を引き合いに、自分の感性や考えを自由に表現することができるようになると、その子の作文能力は、どんどん伸びていくでしょう。
「書き出し」は単に「作文の冒頭」ではありません。作文全体のトーンやその後の展開を左右する重要なパーツです。古今東西、名のある作家たちも、そのほとんどが「書き出し」の名手です。「『書き出し上手』は『作文上手』」といっても過言ではないのです。
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