努力してもムダ? 日本の子どもたちが“夢を持てない”ワケと改善策
こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。
今世紀に入ってから行われたいくつかの信頼のおける意識調査で、中学生・高校生の「自己肯定感」や「将来に夢や希望があるか否か」を聞いた内容の国際比較研究の結果をみますと、わが国の中学生・高校生の子どもたちは概して「自分は駄目な人間だ」と思っており、なおかつ「将来に夢や希望など無い」と感じていることが明らかになっています。
例えば2010年に『財団法人日本青少年研究所』が実施した調査では、「自分が価値のある人間だと思うか」という質問を米国・中国・韓国・日本の高校生にしたところ「全くそうだ」と答えた子は米国57.2%、中国42.2%、韓国20.2%なのに対して、日本はわずか7.5%という結果でした。
また、2001年に『つくば大学留学生センター』で当時の遠藤誉教授が中心となって行った調査では「あなたは自分の将来に希望を持っていますか」という質問を中国・韓国・日本の中学3年生にした結果「大きな夢を持っている」と答えた子の割合は中国91%、韓国46%、日本29%だったのです。
●中学生になった途端「現実を見ろ」と言われる社会
そういえばわが国では、子どもが小学校を卒業するまでの間だけは“期間限定”で夢を語ることを許してもらえるのにもかかわらず、中学生になった途端に「現実を見なさい 」とか「本気でプロのミュージシャンになれるとか思ってるわけじゃないだろうな」などのように、大人から言われてしまう傾向があります。
しかも、より注意深く見てみると幼児期から特定分野の“英才教育”を受けつづけて相応の年齢になってもまだ親の期待に応えつづけている子どもに関してだけは「オリンピックで金メダルを取りたい」とか「プロゴルファーになって賞金王を獲得したい」みたいな夢を語ることが許される。
一方で“普通の庶民”の子どもが中学生になっても「俺、ユーチューバーになって動物の面白動画を制作して生活したいんだよね」などと言おうものなら「いつまでもバカなことばかり考えているんじゃない。
いくつだと思っているんだ」と一蹴されてしまう。そんな傾向があるように見えるのです。
●生命科学の進歩が行き過ぎた“DNA偏重”の思考傾向を生んでいるとすれば問題も
うがった見方かもしれませんが、中学生・高校生の子どもが夢を持つことに対する大人たちの不寛容な態度は、わが国における今世紀に入ってからの生命科学分野の飛躍的な進歩と無関係でもなさそうな気がしてきます。