正社員だけズルい? 非正規で働く人が少子化対策に求めているものとは
●正規雇用の人たちの意見も聞いてみましょう
同誌同号に掲載された数多くのママ・パパの“本音”のうち、終わりに正規雇用の人たちの意見もご紹介しておきましょう。
**********
『まずは待機児童をなんとかしてもらいたいです。私は都内在住で、子どもが1歳で仕事に復帰する際は、近所の保育園は公立・民間とも全滅で、5駅先の保育園まで半年かけて通っていました』(女性/既婚、子どもあり/41~45歳/正規雇用)
『子どもは社会全体で育てると言う観念がない国である。「なぜ自分たちが払った税金から助成するのか納得できない」とよく言われる。社会全体がそういう空気であり、支援うんぬんではなくて、そこがいちばんネックであると感じている。義務教育の時点でそういうことを教育する必要性を感じる』(女性/既婚、子どもあり/31~35歳/正規雇用)
**********
いかがでしょう。何かお気づきになりませんでしょうか。
少子化対策として待機児童問題の解消を切望しているのはむしろ正規雇用層の人たち であり、非正規雇用の人たちにとってはそれ以前に「絶対的に収入が少なすぎること」「子どもを持ちたくてもまっとうに育てていけるだけの賃金が得られていないこと」「今後もその希望がないこと」こそが何よりも問題なのだということが、正規雇用の人たちのお話を聞くことによって逆に浮き彫りになったのではないでしょうか。
その意味では、二番目の女性のご意見も貴重です。
「努力が足りないから非正規雇用から脱することができないのだ。自業自得である」的な見解がネット上などで一定の支持を得るわが国は、少なからず病んでいると筆者も思います。
筆者の年齢になってくると、どんなに元気だった人にも等しく“老い”が訪れることが実感として感じられるようになってきます。
そのときに世の中が極端な少子化傾向にあったのでは、自分たちが暮らす社会の将来に希望が見えません。
しかるべき立場にある人が率先して「子どもは社会全体で育てるもの」という考え方を示すべきです。二番目の正規雇用の女性がおっしゃるように、それこそが根本的な少子化対策であるような気がします。
【参考文献】
・『助産雑誌(2014年3月号・4月号)』
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/KUMI(陸人くん、花音ちゃん)