この点にこそ、“こども保険”という概念が私たち一般の庶民にとって「分かりにくい」最大の理由があるのではないかと思います。
●そもそも一般庶民は「幼児教育無償化」より「乳幼児と児童の保育の充実」を欲している
次に、“こども保険”という概念を分かりにくくしている原因の一つとして、そもそも政府与党が少子化対策・子育て支援対策の柱として位置づけている政策案が一般の庶民の感覚とズレてしまっているという問題があろうかと思います。
政府与党はこれらの政策における最重要課題は『幼児教育の無償化』であると折にふれて言いますが、果たしてそうでしょうか?
私たち普通の庶民は子どもに年端もいかないうちから無料で外国語の英才教育を受けさせたいとか天才棋士が受けてきたような海外発の思考法を学ばせたいとか。そういったことはあまり考えておりません。
私たちは、夫婦ともに外に働きに出なければとてもじゃないが子どもを育てるなんて無理な現実があるわが国で、安心して子どもを預けられる先を得るために半永久的に待機しなければならないという先進国というにはあまりに遅れた現状 を”当たり前”の状態に改善して欲しいだけなのです。
●その他にもこれだけある“こども保険”の分かりにくさ
もっとも、少子化対策や子育て支援に社会全体でもっともっと予算を充てなければならないという根底的な部分では、小泉議員らの主張はまったく正しいと思います。
そのための財源も財政規律を乱す国債の増発に頼らずにという点でも賛同できます。ただ、それはそうなのだけれど的な分かりにくさが“こども保険”には多く、列挙するなら下記の通りです。
1.保険と呼ぶ以上は何らかのリスクに備えてのセーフティーネットでなければならないが、給付の対象として想定している「幼児教育の費用負担」はリスクではない。広く一般国民が求めているものでもない。
2.幼児教育にかかる費用よりもはるかに負担の大きい「高等教育(大学)」の無償化の問題に手をつけずに就学前教育の無償化を優先するのは順番が間違っている。3.負担者と受益者が一致していない。社会全体で少子化や子育ての問題に向き合わなければならないというのであれば、「保険」ではなく「税」で賄うべきである。
4.所得制限なしで給付が受けられるため、そもそも幼児教育にかかるお金になど困っていない富裕層までが受給することになる。