「あなたはもう読んだ?」現代の子どもたちに必要な一冊とは
こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。
1937年、吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか 』が刊行され、現在羽賀翔一さんによって漫画化されたこの作品は、現代の子どもたちの心をもとらえてベストセラーになっています。
この作品の中には現代にも通用する普遍性 が描かれています。一体どういうもの なのか、現代の子どもたちと一緒にわたしたちパパ・ママも一緒に考えてみましょう。
時代や地域に左右されない2つの“普遍”とは
本が売れないこの時代に2017年8月の出版からあっという間に発行部数200万部を突破した『漫画君たちはどう生きるか』 。
軍国主義の暗い空気が漂う1930年代の東京を舞台に主人公である“コペル君”こと本田純一少年が日常生活の中で突き当たる「世の中」や「生きる意味」に関する様々な悩みに、父親を早くになくした彼に“おじさん”が示唆を与える という物語です。
アニメ映画監督の宮崎駿さんが次回長編作品のタイトルをこの作品から貰うことに決めたといわれる『君たちはどう生きるか』。
筆者はこの作品には時代や世代や国や地域に左右されない「2つの“普遍” 」が描かれていると思います。
・一つ目は、この世の中を根っこで支えているのは、額に汗して働く人たちの労働 だということ。
・二つ目は、人は自分が情けないものだと認めたときにようやく立派な存在になれる のだということ。
どういうことか。『君たちはどう生きるか』の中のエピソードから、考えてみることにしましょう。
額に汗して働くことの尊さ
本作品第四章『貧しい友』には、主人公コペル君の同級生である浦川君の家の“貧しさ ”にかんするエピソードが出てきます。
家族経営のとうふ屋さんを営む浦川君の家では、浦川君のお父さんが店の運転資金を調達するためにお父さんの実家がある山形へと出かけ何日も帰ってこなくなったため、浦川君が学校を休んで店を手伝っています。
学校に来ない浦川君のことを心配してとうふ屋さんを訪ねるコペル君が目の当たりにしたものは浦川君の家の貧しさはもとより、風邪をひいて寝込んでいるとうふ屋さんの従業員タメさんのより一層の貧しさで した。
このことにかんして“おじさん”はコペル君にこう話します 。**********
・世間には、浦川君のうちだけの暮らしもできない人が、おどろくほどたくさんある(第四章おじさんのノート第二節より)