なくならないパワハラ指導。順番を間違えるとブラック指導になるスポーツ現場の「人間教育」
サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。
聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。
高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。
日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。
根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。
「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)
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(写真は少年サッカーのイメージです)
■抑圧、支配された環境下でクリエイティブなプレーができるのか
先ごろ、鹿児島県出水市の私立高校サッカー部で、監督が部員に殴る蹴るの暴行を加えている動画がインターネット上で公開され問題になりました。動画は練習風景を映したもので、監督が生徒を呼びつけるといきなり足を蹴り、さらに顔を殴ると生徒がその場に崩れ落ちていました。
監督は学校側に対し「素直に話を聞かないので、いけないのはわかっていたが手を出してしまった」と暴力に至った経緯を説明しました。ただし、暴行後も生徒への謝罪の言葉はなく「厳しい練習も今後に生きる」という趣旨の発言をしたと報道されています。
読者のみなさんも感じていると思いますが、サッカーに限らず日本のスポーツ界では小中高の育成期の選手に対する暴力や暴言を用いたパワハラ指導は一向になくなりません。
少年サッカーにおいても、現場のコーチたちに尋ねると「どのチームも怒鳴りがすごい」「指導を変えようというような態度は見受けられない」と言います。
なぜこのような指導をしてしまうのか。
それは、コーチ自身が「勝ちたい」「勝たせたい」ということを何よりも優先させているからです。