くらし情報『本好きの心をくすぐる仕掛けも? 森見登美彦『熱帯』が怪作すぎる!』

2018年12月13日 19:40

本好きの心をくすぐる仕掛けも? 森見登美彦『熱帯』が怪作すぎる!

「彼は、この世界のどこかに穴があって、その向こう側に心惹かれるような人物ではあるので、そのメンタリティは僕自身と重なる部分かもしれません。実は、佐山尚一は平凡なようでいて、ネットなどで調べても、同姓同名の人が全然引っかからなかった名前なんです。自分が作り出したことで、初めてこの世に出てきた存在だと思うと興味深いですね」

登場人物たちが、読書とは何かと考察する丁々発止も楽しい。突き詰めていく場面も出てくる。たとえば、同じ小説を読んでも人によって解釈はいろいろなのに、みな同じ一冊を読んでいるといえるのだろうか。

「そもそも『熱帯』という魔術的な小説のことを書かなくてはいけない。それに重ねて、読書についてや、断片的な妄想が小説という形になっていく自分の小説が生まれてくる過程を、小説にしようとも考えていました。複雑に考えすぎて、納得できる形になるまで試行錯誤の連続。
担当編集さんは、書き終わらなかった別バージョンの『熱帯』を山のようにお持ちです(笑)」
本好きの心をくすぐる仕掛けも? 森見登美彦『熱帯』が怪作すぎる!
もりみ・とみひこ1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞、’07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。

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