2019年4月22日 20:10
奇跡のコラボも!? 浄瑠璃の作者を主人公にした大島真寿美の新作とは
同世代で道頓堀にいて、知り合いじゃないわけがないと思ったんです」
少しずつ成長していく半二の姿に人間味をおぼえる一方、人々の娯楽だった歌舞伎と文楽のライバル関係や道頓堀の様子も興味深く読める。やがて物語は創作をめぐる話として深みを増す。創作者が突き当たる「真っ黒な深淵」や、「渦」といった表現がとても印象深い。
「虚構を作る人はみんな、ちょっとした怖さを味わいながら作っていると感じながら書きました。“渦”というのも自然と出てきたんですが、編集者に重要な言葉だと指摘され、これがタイトルになりました」
終盤には意外な語り手が登場するなど物語はスケールを増していく。書き終えても、なかなか気持ちが切り替えられなかったという大島さん。
「あまりにも切り替わらないから、仕事とは関係なく『妹背山~』の現代語訳を始めました(笑)」
そんななか、嬉しいサプライズが。
「偶然なんですが、5月に国立劇場で『妹背山~』が久々に通し狂言として上演されるんですよ。
奇跡のコラボだと思って興奮してます(笑)」
本作を読んで観劇すれば、より深い体験ができるはず!
おおしま・ますみ1962年生まれ。’92年「春の手品師」