2019年8月12日 19:30
水墨画家が小説家デビュー 芸術×青春ストーリーから目が離せない
ただ、水墨画はもともと禅の修行で、心を治めるために自分の内面を描くものだったんです。発達するにつれ技巧を重視する画風が生まれ、対立構造が生まれた。その対立を物語の中で書こうと思いました」
霜介や千瑛以外の登場人物たちも魅力的。特に篠田門下の野性的な西濱と完璧な技術を持つ斉藤という青年は、女性に人気が高いのだそう。
「実は彼らの外見については妹が考えたものなんです(笑)。特に斉藤は妙に人気があってびっくりです」
そして魅せられるのが、描く過程や完成した絵の描写。
「点をひとつ加えるだけで全体のバランスが変わってばっと景色が広がることがある。それは魔法のように見えることがあると思います」
読めばきっと、水墨画に興味が湧くはず。
それにしても、霜介に勝算はあるのか。巨匠に目をつけられた彼は、他の人と何が違うのだろう?
「素直さですね。言われたことを素直に聞き入れて反応できることが大きな才能だというのは、あらゆる技芸に言えると思います」
霜介と千瑛のライバル関係とその勝負の行方も気になるところ。最後まで読者を楽しませてくれる。「明るく温かい作品を書いていきたい」と語る砥上さん、今後も要注目です。