2016年1月19日 21:00
幸せのハードルを下げる? 俳優・戌井昭人の新刊「のろい」男
顛末の滑稽さもさることながら、映画俳優という設定ゆえにごまんと登場する架空の作品タイトルの無意味さに、思わず笑いがこみ上げる。
ちなみに、亀岡のイメージは、「色っぽくない殿山泰司ですかね。あと、マンガ家で鉄割にも出演してもらっている東陽片岡さん。僕は、東陽さんの傑作エッセイ集『シアワセのレモンサワー』にひどく感化されているところがあって、幸せのハードルを下げるというその精神を亀岡に託している部分があるんです。亀岡って、自分の好きなことに全身全霊を賭けていてブレない。それでいて、意固地になって自分のスタイルを守っているのとも違う。飄々とした感じが逆にカッコイイなと」
カタルシスは、「なんでもサウダーデ」の章。亀岡はポルトガルに赴き、サウダーデを感じている飲んだくれ作家を演じるのだが、そこでアドリブでしゃべるセリフが、なんと哲学的で哀愁があることか!実際、亀岡という決してイケメンではない男を知れば知るほど、ねじれた愛しさが湧き上がってくるから不思議。
すでにファンの方はもとより、未読の方もぜひ、亀岡ワールドに酔いしれて。
◇いぬい・あきと作家、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」