2020年3月20日 20:30
AV女優、作家の紗倉まな “70歳男性を主人公”に新作小説!
孝行息子を演じ、周囲にも役割のイメージを押し付けている印象。ただ、たとえば善良な喜美代が生前、賢治の妻の里香に子作りについて心ない言葉を発し場を凍りつかせたことも。
「喜美代に悪気はなく、感覚の世代間ギャップだと思うんです。ただ、懸け橋になるべき賢治が橋を壊すデストロイヤーになっている(苦笑)。この家は一見幸せそうだけど、実は賢治の自己満足が詰まった、寂しい家ですよね」
終盤には富雄と里香が思いをぶつける場面があり、そこに一筋の光が。
「お互いに役割から解放されて、歩み寄る部分があればいいなと思って書いていきました」
併録の「ははばなれ」は、還暦を迎える一人暮らしの母に、恋人がいると知った娘が主人公。
「10代からずっと考えてきた女性性について書こうと思いました。母と娘は姉妹のように仲のいい部分もあれば近すぎて反発し合う部分もある。
その場合、娘のほうが思うことが多い気がするので、娘視点で書くことに。タイトルは娘が母から自立することと、母親が母親の役割から離れることの二重の意味があります」
誠実で切実な描写を堪能したい。
紗倉まな『春、死なん』妻を亡くして一人暮らす70歳の富雄は、2世帯住宅に住む息子とも疎遠。