2020年6月23日 19:00
あなたならどうする? 究極の倫理ゲームを描くコミック『エチカの時間』
七太郎というやや奔放な次世代AIに倫理を教えるべく、ふたりの男女が究極の選択を迫られる。思考実験の過程は、心の内に潜む“悪”と向き合ったり、忘れたい過去を思い出したりなど、なかなかハードなのだが「で、自分ならどうする?」と常に問われる緊張感がある。ふたりが導き出す答えはもちろん伏せておくが、「トロッコ問題の解決策を頭のいい人や倫理の先生に聞いて取材をしたところ、出た答えに納得がいかず、あらゆるシミュレーションをした」上でのラストであることを付け加えておこう。
「法律にあるから、上の立場の者が言ってるから、という“思考停止”こそ一番の悪だと思います。この本を読んでも“こういう結論だからこうする”ではなく、“自分ならあのときの経験と感情でこうなったからこうする”と考えることが大事。ですから読み終えたら一度は誰かと話してほしい。人と話すことによって、さらに考えることにつながるので」
『エチカの時間』1、2Fラン大卒のフリーター日野と、AIのエチカを“育倫”する「エチカ・アカデミー」の劣等生・百上が渋谷で起こるトロッコ問題に挑む、究極の倫理ゲーム。小学館各591円©玉井雪雄/小学館
たまい・ゆきお主な作品に『OMEGA TRIBE』など。