2020年6月24日 21:00
現代の貧困、虐待、社会問題が絡み合うミステリー 天祢涼の最新作『あの子の殺人計画』
その案配が難しかったですね。なので、小芝くんのような目立つ貧困児童を置いたことも腐心した点のひとつ。それによって、そこそこ普通に見えてしまうきさらのような子の虐待は見逃されやすくなると思ったんです」
本作では、謎解きの要素もたっぷり。真壁、宝生、仲田が追うのは、遠山殺しの犯人であり、動機であり、トリックだ。そこに、現代の貧困や貧困からくる虐待など社会問題が絡み合う。重層的な展開が魅力。
「『希望~』ではじわじわ追い詰められていく少女たちの境遇や感情に読者は揺さぶられたと思うのですが、その分、大人のつらさにはあまり触れることができなかった。その反省もあったので、今回は大人の事情や問題も盛り込みたいと思いました」
ある時期まで、貧困や虐待などの社会問題はノンフィクションのほうが向いていると考えていたそう。
だが、本シリーズの反響の大きさから、いまは思いを新たにしている。
「フィクションにしかできない伝え方があるとわかりました。これからも書いていきたいテーマです」
あまね・りょう1978年生まれ。2010年にメフィスト賞受賞作『キョウカンカク』でデビュー。’19年『希望が死んだ夜に』で本屋大賞発掘部門で最多票を獲得。