2020年10月14日 19:40
突拍子もなく絶妙! 高山羽根子・芥川賞受賞後の第一作は壮大な“偽史”小説
調べると海外では黎明期の映画業界で活躍した女性もいるんですが、歴史で取り上げられるのは男性の作品が多い。それで、ある程度女性にスポットを当てることにしました」
19世紀末、横浜随一の歓楽街の娼館の娘・照は機械学を学び、フランスに旅立って映像技術の研究所で働くことに。やがて、亡くなった友人の幼い娘を呼び寄せるが、その娘も成長し、また違う場所で映像に携わるように―。
「こういう人生、ああいう人生が奇妙な縁で繋がっていく奇譚のようなものが書けたらと思っていました」
一方、別のパートで語られるのは、監視カメラに囲まれた町でスマホで映像を撮る〈わたし〉の物語や、先述の通り兵器として利用された映像の話など、ちょっと不思議なエピソード。これがまた、どれもリアリティがありつつ、突拍子もなくて絶妙の面白さ!
「古いものと新しいものを混ぜて、ありうる気がしなくはないものを書いていきました。私は分かりやすく笑わせるのは不得意なんですけれど、ヘンなことを大真面目に言っている面白さが出るといいなと思いながら書きました(笑)」
ドキュメンタリーなど記録としての映像のあり方も考えさせられる。
「映像は説得力があるから、それで世論が動く場合もある。