2022年1月12日 20:30
上田慎一郎監督に皆川暢二が共感「借金苦のホームレス時代、幸せを感じたのは…」
―なるほど。本作は構想10年ということですが、どういった経緯で生まれたのか教えてください。
監督アイディアが生まれたのは、僕が20代後半の頃で、フリーターをしながら自主映画を作っていたときのこと。ふと思いついただけだったので、最初は単なる奇抜なアイディアでしたが、すぐに脚本を書き始め、いなくなってしまったアレを捕まえる過程が自分を探す旅になるという物語に自然となりました。
ただ、そのときは1本の長編映画にできる感触を僕自身がつかみきれていなかったので制作には至りませんでしたが、今回はCinema Lab(シネマラボ)という映画実験レーベルで「好きなものを作ってください」と言っていただいたので、ぜひ作りたいなと。僕もまだ若造ではありますが、この10年の間に成功も失敗も味わい、結婚して子どもを持つといういろいろな経験をしてきました。であれば、それらの思いを重ねて映画にできるのではないか、という実感を持てたのも大きかったです。
成功のあとにくる“壁”も描きたいと思った
―ということは、いまだから描けた部分もあったと。
監督そうですね。もし10年前に作っていたらもっと軽い物語になっていたと思います。