2022年2月27日 18:00
悪夢のような体験がアートに… 「シベリアの画家」香月泰男の軌跡をたどる展覧会
は、60キログラムもある麻袋を運んでいる抑留者の姿を描いたものです。近くで見ると、黒い部分に亡霊のような顔が浮かんでいます。
「シベリアの画家」に
香月が描いた戦争・抑留体験の絵は注目されはじめ、1967年には画集『シベリヤ』を刊行。それらの作品は「シベリア・シリーズ」と呼ばれるようになり、香月は「シベリアの画家」として評価を確立していきます。
晩年になると、黒や茶色のモノトーン系の作品に少しずつ色が戻りはじめます。
特に、鮮やかな青を使った作品は印象的。《青の太陽》(1969年)は、戦争中、匍匐(ほふく)前進の演習をしていたときに見た地面のアリの巣から着想した作品で、地中から空を見上げる構図になっています。
新たな画風が表れはじめた1974年、心筋梗塞により急逝。
62歳でした。
心が震え続ける…
この展覧会では、香月の作品が制作順に展示されています。情感豊かな戦前の作品から、どのように画風やテーマが変わっていったのか、その流れを画家の人生と重ね合わせながら見ることができます。
テーマも画面も重々しいものが多いのですが、目をそむけたくなるような残酷さは感じられません。