東京・六本木にある森アーツセンターギャラリーで、テレビ朝日開局65周年記念「MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~」がはじまりました。本展の東京会場公式アンバサダーを務めるのは、俳優の水上恒司さん。ご自身でもアート制作をされている水上さんに、展覧会の見どころやアートについて、お聞きしてきました!水上恒司さんが公式アンバサダー!水上恒司さん後ろの作品は、リチャード・ハンブルトン《突撃》(1985)【女子的アートナビ】vol. 327本展では、ドイツ・ミュンヘンにあるアーバン・アートと現代アートに特化した美術館、Museum of Urban and Contemporary Art(MUCA)が所蔵する作品60点以上を展示。世界で大人気のストリートアーティスト、バンクシーの日本初公開となる大型彫刻作品や、ファッションデザイナーとしても活躍するKAWS(カウズ)の代表作をはじめ、アーバン・アートの世界を切り拓いてきたアーティストたち10名の作品を楽しめる展覧会です。今回紹介されているアーバン・アートとは、現代都市社会から生まれたグラフィティ・アートやストリート・アート、ポスター・アートなどのこと。都市空間にある公共の壁や建物、橋などに描かれる作品も多く、政治的・社会的メッセージを伝えるときもあります。そんな刺激的な作品が並ぶ展覧会の東京会場公式アンバサダーを務めるのは、俳優の水上恒司さん。独学で勉強して創作活動もされている水上さんにインタビューを行い、展覧会やアートのことなどお聞きしてきました!展覧会全体が好き!――まず、本展をご覧になって、どんな感想をもたれましたか?水上さん今回展示されている作品のアーティストたちは、世の中に対する批判やメッセージを恐れることなく、臆することなく提示していると感じました。僕自身は、まだキャリアとか知識とかいろいろ拙いので、そんな自分からすると、彼らのような活動はビビッてしまってなかなかできないのですけど、この作家たちはアートでちゃんと表現していて、そんな姿勢に心を打たれました。――特に印象に残った作品、好きな作品はありますか?水上さんリチャード・ハンブルトンの《突撃》は、パッと見たときの印象が好きですね。僕は陰が好きなので、その描き方とか見てしまいます。でも、ほぼすべての作品が、そのつくった時代の世の中に対するメッセージみたいなものがちゃんとあるから、どの作品が好きかと問われると、ひとつひとつ挙げていくときりがないです。例えば、女性のストリートアーティストとして活動しているスウーンの作品もすごくいいと思いますし、もちろんバンクシーもいいし、展覧会全体が好きという感じです。――出品作家のなかで、以前から好きだったアーティストはいらっしゃいますか?水上さん好きとか嫌いとかはあまりなくて、ただ前から身近に感じていた作家はカウズかなと思います。彼の作品を見ていると、一番欲しくなりますね。フィギュアとかもありますし。――本展で初めて知った作家さんも多いですか?水上さんもちろんです。僕は創作活動をしていますけど、本当に素人なので、今回ほとんどのアーティストさんのことをはじめて知りました。多くの同世代の人たちと同じように、そんなにアートに詳しくない僕だからこそ、今回アンバサダーとして、こういう場で話すコメントのうちの何かがみなさんに伝わればいいなと思っています。人生をより豊かにしてくれる…――本展は、アーバン・アートの展覧会ですが、現代アートは少し難しいと思っているかたもいるようです。ゴッホやモネなどは親しみがあるけど、知らない作家だと難しく感じるのかもしれません。水上さんゴッホやモネは超有名だし、教科書に載っているのを見ているから知っていますけど、正直それで本当にゴッホのことを知っているのかはわからないですよね。ゴッホは知っていると言う人々も、じゃあゴッホはどういう技法で何が有名なのか、本当に知っている人は少ないと思う。それぐらい、アートの世界に対して、ちゃんと知ろうとしている人は少ないのではないかと思います。僕もそうです。でも、知らないことがいけないわけではないですよね。そんな人間だからこその楽しみ方もあります。ふらっと展覧会を見に来て、作品の背景とか気になる人はその先を調べればいいと思います。僕の場合は、調べるというより、いろいろな作品を見ながら、家にある画材を使って自分の作品をこんなふうに描けば近い雰囲気になるかな、と消化しています。人それぞれ、展覧会の感じ方、消化の仕方はあると思います。――まずは展覧会を見に来ていただかないと、その世界に触れられないですよね。水上さんそうですね。見ないと、その先はないので。アートは、生きていくうえでは絶対的に必要なものではないかもしれません。僕が携わっている映画やドラマの世界も、なくても生きていける。衣食住があれば、人間は生きていけますから。でも、無駄とかいわれる娯楽や余興みたいなものを取り入れたほうが、より豊かに生きていける。そのなかのひとつがアートだと思います。だから、別に見なくてもいいんです。でも、興味が少しでも芽生えたら、絶対に見に来た方がいいです。アートは、人生をより豊かにしてくれるもののひとつですから。アートは大きな刺激物――俳優業のかたわら創作活動もされていて、数年前には個展も開催されました。いつ、どんなきっかけで、創作をはじめられたのですか?水上さん未就学児というか、僕の記憶がない本当に小さいころから絵を描いていました。絵を描くと、ほめられることが多かったので、それが気持ちよくて今日まで描き続けているのかなと思います。――アート制作と演じることの相乗効果はありますか?水上さんあると思います。そもそも演じるという行為は、時間をかけて必要なスキルや技術を身につければ、誰しも到達できるものだと思っています。僕はまだ道半ばですけど、いずれ演じ方はしっかりと身につくはずです。でも、実はその先、演じる人間がどんなふうに生きていきたいのか、あるいは今までどんなふうに生きてきたのか、という部分が芝居のときに透けて見えてくるので、僕はむしろその部分が大事だと思っています。その大事な部分のなかに、アートが大きな刺激物として存在しているので、その相乗効果は間違いなくあります。――アートを見て、感じて、蓄積したものが、演じるときに内面からにじみ出てくるという感じでしょうか。水上さんそうですね。努力だけではどうしようもない部分だと思います。同じMUCA展を見たとしても、人によって感じ方や見方は全然違いますよね。また、単に芸術に触れればいい、という話でもないと思います。すごくいい時間を過ごせる――創作活動と俳優業の両立で、大変なことはありますか?水上さん絵を描くのは職業にしていないので、負担ではないし、大変とは思わないです。僕の中での軸は芝居ですから。時間があるとき、描きたいときに描くという感じです。――創作は、ゼロから生み出すので壁にぶつかるときとかありますか?水上さん芝居のほうでは、こうしたいけれどわからない、という感じで壁にぶつかることはあります。仕事の場合はそうなりますが、創作活動は趣味なので、壁にぶつかることもなくて、楽しんで描いています。――今後、創作で挑戦してみたいことはありますか?個展などの予定は?水上さん3Dの彫刻作品はやってみたいですね。彫刻刀を使って、手で彫り出していく創作物をつくってみたいと思っています。個展は、今のところは考えていません。――いつかまた個展を開いてくださるとうれしいです。最後に、読者のかたにメッセージをいただけますか?水上さんアートがわからない人でも、とりあえず水上がいろいろ言っていたから行ってみよう、という感じでもいいので、ぜひMUCA展に来ていただければ、すごくいい時間を過ごせるのではないかと思います。――ありがとうございました!取材を終えて…まっすぐな眼差しで、質問に答えてくださった水上さん。24歳という若さながら、ご自身の考えをしっかりと確立され、ぶれない強さが伝わってきました。そんな水上さんを魅了したMUCA展には、刺激的な作品が勢ぞろい。ぜひ、足を運んでみてくださいね!カウズのバラエティー豊かなブロンズ作品《カウズ・ブロンズ・エディション#1-12》(2023年)や、オークションで落札後すぐにシュレッダーで一部が細断されたバンクシーの有名な作品《Girl Without Balloon》(2018年)も展示されています。Information会期:2024年3月15日(金)~6月2日(日)開館時間:10:00~19:00金曜日・土曜日・祝日・祝前日・GW(4月27日~5月6日)は20:00まで※入場は閉館の30分前まで休館日:会期中無休会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)観覧料:【平日】一般 ¥2,400、大学・高校生 ¥1,700、小学・中学生 ¥1,000【土・日・祝】※5/6含む一般 ¥2,600、大学・高校生 ¥1,900、小学・中学生 ¥1,200
2024年03月24日スマホが離せません…♡モテ女子が使っている効果的なLINEテクニックLINEは、賢く利用すれば、あなたを気にかける、心を引き寄せるきっかけとなるのです。愛される女性が日常的に使っているLINEのテクニックを試してみると、あなたの恋の成就につながる可能性が高いでしょう。今回は、愛される女性が実践しているLINEのテクニックを紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。絵文字抜きで素早く返信するお風呂上がりなど、ゆっくりとリラックスできる時間帯には、すぐに返信するのがおすすめです。男性は返信が早いことを、絵文字があるよりも愛情の証と受け止めることがあります。デートの誘いに繋がる話題など、絵文字などをで簡単に返事するのではなく、丁寧な印象の文章ですぐに返事するようにしましょう。誘ってもらう自分から情報を多めに開示するのも、また一つのテクニックです。相手の予定を尋ねたいときでも、まずは、自分の予定を伝えます。自分から予定を伝えて、その後、相手がどのように反応するかを観察すれば、効率的に相手の意向や適性を見極めることができますね。ハートマークで相手の気持ちを確認喜びの気持ちや感謝の気持ちを伝えるときに、ハートマークを使ってみてください。これを実践すれば、相手の気持ちを確かめることが可能になるかもしれません。ハートマークを使用することで、相手の気持ちが理解できるかもしれませんね。恋愛は戦略的に取り組もう!愛される女性の一部は、戦略を駆使してLINEを利用しています。日常的な会話で関係を深めるのもいいのですが、これらのテクニックを取り入れることで、二人の関係に動きが出るかもしれません。今すぐ試してみてくださいね。(愛カツ編集部)
2024年02月26日春の雛祭りシーズンにぴったりの展覧会「岩﨑家のお雛さま」が東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で開かれています。本展では、三菱を創業した岩﨑家の雛人形をはじめ、御所人形や豪華な打掛、工芸品などが勢ぞろい。静嘉堂@丸の内オリジナルのかわいい“お雛様グッズ”もあわせてご紹介します!春の雰囲気を感じられる!静嘉堂@丸の内ホワイエ※本記事の写真は、主催者の許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 326本展では、三菱第四代社長の岩﨑小彌太(こやた、1879-1945)が妻の孝子(1888-1975)のために注文した「岩﨑家雛人形」を中心に、岩﨑家ゆかりの名品を展示。また、春の雰囲気を感じられる工芸品の優品も紹介され、計45点の作品を楽しめます。プレス内覧会に登壇された静嘉堂文庫美術館館長の安村敏信さんは、お雛様の由来などについて次のように語っています。安村さんNHK大河ドラマでも注目されている『源氏物語』の「若紫」にも「雛(ひいな)遊び」が出てきます。お雛様は平安貴族の子どもたちの遊びでした。江戸時代には町人にも伝わり、今のようなお雛様がつくられます。おもしろいのは、お雛様の姿です。衣裳は平安期の十二単(じゅうにひとえ)ですが、道具類は武家のもので、「公武合体」しているのです。幕末よりも前に、文化の面ではすでに公家と武家が一緒になっているのが興味深いです。小さくてかわいい!五世大木平藏「貝桶・合貝」昭和時代初期20世紀丸平文庫蔵では、見どころをいくつかご紹介。第1章「雛の世界―小さきものは、みなうつくし」では、岩﨑家が京都の丸平大木人形店に注文した雛道具を展示。一つひとつ精巧につくられた美しくかわいい道具一式を見ることができます。今の雛道具は、江戸時代の上級武士の婚礼調度を参考につくられているそうです。室町時代に婚礼調度が整い、江戸時代に広がって雛道具セットがつくられるようになりました。この章で特にかわいい作品は、「貝桶(かいおけ)・合貝(あわせがい)」。ハマグリの貝殻を用いた「貝合わせ」という遊びに使われるもので、爪先ほどの小さなハマグリの稚貝の内側に華やかな吉祥図が描かれています。ハマグリは「貞節の象徴」ということで、貝桶が婚礼調度に使われるようになったそうです。ちなみに、岩﨑家が雛人形を注文した丸平大木人形店は、約250年も続く京都の人形司で、当主は「大木平藏」を襲名。優美な人形で知られ、宮家や華族などに愛されてきた老舗です。お顔がかわいい!五世大木平藏「岩﨑家雛人形内裏雛」昭和時代初期20世紀静嘉堂文庫美術館蔵第2章「岩﨑家のお雛さま」では、本展の目玉である岩﨑家のゴージャスな内裏雛が登場!華やかで愛らしいお雛様です。お顔が丸く、かわいらしい子どものように見えますが、これは「稚児(ちご)雛」と呼ばれるもの。装束の文様も美しく、岩﨑家の替紋「花菱紋」もあしらわれています。五世大木平藏「岩﨑家雛人形三人官女」昭和時代初期20世紀静嘉堂文庫美術館蔵三人官女もステキです。彼女たちは、盃にお酒を注ぐ道具の長柄銚子(ながえちょうし)、婚礼などのときの飾り物である嶋台(しまだい)、長柄銚子のお酒が減ったときに継ぎ足す加銚子(くわえちょうし)を持っています。ウサギがかわいい!五世大木平藏「木彫彩色御所人形」昭和14年(1939)静嘉堂文庫美術館蔵第3章「御所人形と春を愛でる」では、かわいい御所人形を展示。御所人形とは、京都で生まれた美術的な人形のこと。今回展示されているのは、小彌太の還暦を祝し、孝子夫人が丸平大木人形店に特注した人形セットです。小彌太が卯年生まれだったことから、ウサギが重要なモチーフとして使われています。この展示室では、ほかにも浮世絵の草創期を代表する絵師・菱川師宣(ひしかわもろのぶ、?-1694)が江戸時代の風俗を描いた絵巻や、野々村仁清(生没年不詳)の代表作のひとつである京焼の茶壺など、多彩な作品も楽しめます。また、最後の第4章「初公開岩﨑家ゆかりの打掛」では、明治時代末期につくられた豪華な打掛が見られるほか、大人気の国宝「曜変天目」(稲葉天目)も展示。心ゆくまで岩﨑家ゆかりの美の世界を堪能できます。お雛様グッズもかわいい!静嘉堂@丸の内ミュージアムショップでは、岩﨑家のお雛様をモチーフにした多彩なグッズが勢ぞろい。特に心を奪われたのは、三人官女さまのマグネット(¥1,200・税込)。優美さが際立っています!御所人形の手ぬぐい(¥1,500・税込)も、癒されるかわいさ。ウサギモチーフの御所人形セットは、マスクケースになっています。ほかにも、クリアファイルやミニポーチなど、ここでしか買えない静嘉堂オリジナルのレアなお雛様グッズがそろっています。雛祭り気分をたっぷり味わえる本展は、3月31日(日)まで開催。Information会期:2024年2月17日(土)~3月31日(日)開館時間:10:00 – 17:00 (毎週土曜日は午後6時まで、第4水曜日は午後8時まで)※入館は閉館の30前まで休館日:月曜日(ただし、3月4日(月)はトークフリーデーとして開館)会場:静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)観覧料:一般 ¥1,500、大学・高校生 ¥1,000、中学生以下無料
2024年02月25日東京・六本木のサントリー美術館で、「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」が開催されています。天下人・織田信長の13歳下の弟として生まれた織田有楽斎(うらくさい、1547-1621)。本展では、茶人としても活躍した有楽斎の人物像を名品などにより紹介。展示風景や学芸員さんのお話などレポートします!戦国を生き抜いた男!展覧会入り口※本記事の写真は、主催者の許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 325本展では、織田有楽斎とゆかりの深い寺である京都・建仁寺塔頭 正伝永源院(しょうでんえいげんいん)の寺宝を中心に、有楽斎にまつわる茶道具や手紙などの資料を展示。多彩な作品をとおして、彼の生き方に触れられる展覧会です。有楽斎は、もともと織田長益(ながます)として活躍していた武将でした。長益(有楽斎)は、信長の長男・信忠に仕えていましたが、1582年に起きた「本能寺の変」で信長は自害。さらに、信忠が二条御所で抗戦した末に自害したのにもかかわらず、長益(有楽斎)は脱出して生き延びました。これにより、人々から「逃げた男」と揶揄され、今でもそのイメージで戦国ドラマに登場することもしばしばあります。プレス内覧会に登壇された建仁寺塔頭正伝永源院第24世住職真神啓仁さんは、本展開催のきっかけについて、次のように語っています。真神さん当院は、鎌倉時代の文永年間に創建された寺でしたが、戦禍により荒廃していました。その寺の再興にあたったのが、織田有楽斎です。彼は「逃げの有楽」という不名誉なイメージがつけられていましたが、それを改めて問い直せないかと思い、本展の発案となりました。有楽斎は正伝院を再興し、晩年には現在国宝に指定されている茶室「如庵」を創設しました。茶の湯をとおして、大名や僧侶たちと交流をはかった人物でもあります。彼の想いや美意識を本展で感じていただきたいです。有楽斎がお出迎え…!《織田有楽斎座像》江戸時代17世紀正伝永源院蔵【通期展示】では、展示の見どころをピックアップしてご紹介。最初の展示室に入ると、まず目に入るのが有楽斎の生前のお姿を表した座像です。本作品について、サントリー美術館・主任学芸員の安河内幸絵さんは次のように解説。安河内さんこの像では、有楽斎が僧の姿をしていますが、実際には僧籍があったわけではありません。千利休のように、茶人の姿としてこのような格好をしていたという説もあります。この有楽斎の像は、遠くをまっすぐ見つめる視線で、人の心の中を見透かしてしまうような、本質を見極めるような目をされています。本能寺の変で焼けた…!《本能寺跡出土瓦》桃山時代16世紀京都市蔵【通期展示】第一章では、有楽斎が織田家の一員であることや、武将としての一面をうかがい知ることができる歴史資料などを見ることができます。例えば、織田信長の一代記として知られる「信長公記」では、主要な武将のひとりとして長益(有楽斎)がいたことが記されています。また、本能寺跡から出土した瓦の一部も展示されています。この出土品について、安河内さんは次のように解説。安河内さん明智光秀の謀反により、信長は49歳で亡くなります。本能寺の跡から出土した瓦は、鬼瓦や軒瓦のほか、表面が変色した瓦も含まれています。展示されている橙色の瓦は熱を受けて変色したもので、激烈な火災であったことがうかがえます。伊達政宗とも交流!展示風景より、写真手前:織田信長像江戸時代18世紀正伝永源院蔵【通期展示】第二章では、有楽斎宛ての手紙や彼自身の手紙などの資料をとおして、茶人として活躍した有楽斎の姿が紹介されています。例えば、伊達政宗から有楽斎に宛てた手紙なども展示。政宗と有楽斎は茶を通じて親交があり、如庵での茶会に招かれたという話も残されています。手紙には現代語が掲示されているものも多いので、内容を理解しながら鑑賞を楽しむことができます。有楽斎の交友について、安河内さんは次のように解説。安河内さん有楽斎は武将たちのみならず、堺や博多の有力茶人や高僧、公家などとも幅広く交友し、茶の湯をとおして親交を深めていました。茶の湯が政治のツールとして使われ、茶会が政治の中で必要不可欠なコミュニケーションとなっていた当時、茶の湯に巧みで広い交友関係をもつ有楽斎は、豊臣や徳川家をはじめ、多くの人々から頼りにされたことが想像されます。圧巻の襖絵は必見!《蓮鷺図襖》狩野山楽江戸時代17世紀正伝永源院蔵【通期展示】三階のギャラリー空間では、有楽斎が再興した正伝院の客殿を飾った《蓮鷺図襖》16面すべてを展示。圧巻の見ごたえです!つぼみのハスや咲き始めたハスの姿、咲き誇る姿、そして枯れかけた姿もあり、ハスの生命や季節のうつろいが大変美しく描かれています。第四章と第五章では、織田有楽斎が晩年に再興し終の棲家とした建仁寺正伝院ゆかりの寺宝を紹介。茶道具や織田家ゆかりの蒔絵作品などを見ることができます。有楽町の由来という説も…!ちなみに、東京の千代田区にある「有楽町」という地名は、織田有楽斎が由来という説もあります。千代田区の公式サイトによると、有楽斎は関ケ原の戦いのあと徳川方に属し、数寄屋橋御門の近くに屋敷を拝領。その屋敷跡が「有楽原」と呼ばれていたことから、明治時代に「有楽町」と名づけられたそうです。(※諸説あります)武将や茶人として戦国時代を生き抜いた織田有楽斎の展覧会は、3月24日(日)まで開催。会期中、展示替えもあります。※参考サイトInformation会期:2024年1月31日(水)~3月24日(日)※作品保護のため、会期中展示替を行います。開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※2月22日(木)、3月19日(火)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで休館日:火曜日※3月19日は20時まで開館観覧料:一般 ¥1,600、大学・高校生 ¥1,000、中学生以下無料
2024年02月18日東京・上野の東京国立博物館 平成館で、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が開催されています。桃山・江戸時代初期に活躍したマルチ芸術家、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ・1558~1637)。彼の「美」の世界を楽しめる展覧会を現地取材。担当研究員さんのお話や展示風景、注目オリジナルグッズの数々をご紹介します!マルチ芸術家の展覧会!展覧会入り口※本記事の写真は、主催者の許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 324本阿弥光悦は、京都生まれ。刀剣鑑定の名門家系出身で、美を見極める優れた力量をもち、自らも書や漆芸、陶芸などのジャンルで作品を残した人です。本展では、光悦が手がけた多彩な作品や、京都の町衆や職人たちとのつながりが伝わる品々をとおして、マルチ芸術家の「美」の世界を堪能できます。展覧会を担当した東京国立博物館学芸企画部長の松嶋雅人さんは、見どころについて次のように教えてくれました。松嶋さん本展では、光悦があつく信仰した日蓮法華宗について、最新研究を踏まえながら展示を構成しました。また、光悦や彼の父は加賀前田家の刀剣御用で、光悦とつながりのあった前田利常の生母・寿福院もあつい法華信徒でした。光悦の書や漆工品などにくわえて、ぜひ信仰に関わる品々にも注目してみてください。国宝がお出迎え…!国宝舟橋蒔絵硯箱本阿弥光悦作江戸時代・17世紀東京国立博物館蔵では、展示の見どころをピックアップしてご紹介。まず入り口を入ると、光悦のもっとも有名な国宝・舟橋蒔絵硯箱(ふなばしまきえすずりばこ)がお出迎え。この展示室は暗い宇宙のような雰囲気で、本展のタイトル「本阿弥光悦の大宇宙」にぴったり。光悦の無限の「美」の世界に引き込まれていく感じがします。本作品について、松嶋さんは次のように解説。松嶋さん光悦が手がけた蒔絵は「光悦蒔絵」とも呼ばれ、奇抜なフォルムと独特な造形が特徴的です。大きな鉛板を使い、華麗な螺鈿(らでん)を自在に用いるなど大胆な造形で、このスタイルは近世初頭に突如現れたものです。独特な表現やモチーフが生まれた背景には、光悦が深くたしなんだ謡曲の文化があったと考えています。蒔絵の展示室では、謡本も紹介しています。光悦筆による額も登場!特別展「本阿弥光悦の大宇宙」展示風景左から、扁額「学室」 原品:本阿弥光悦筆明治2年(1869)再刻京都・常照寺蔵、扁額「本門寺」 本阿弥光悦筆江戸時代寛永4年(1627) 東京・池上本門寺蔵、扁額「妙法花経寺」 本阿弥光悦筆江戸時代寛永4年(1627) 千葉・中山法華経寺蔵、扁額「正中山」 本阿弥光悦筆江戸時代17世紀千葉・中山法華経寺蔵第1章「本阿弥家の家職と法華信仰――光悦芸術の源泉」では、本阿弥家の家業である刀剣や信仰に関わる品々を紹介。光悦が所持していたと伝わる短刀や、本阿弥家の家系図、能書として知られる光悦筆による書状を見ることができます。光悦が書いたさまざまな寺の扁額も展示。例えば、東京・池上本門寺の扁額は1627年につくられたものですが、ふだん本門寺の入り口にかけられている扁額は複製のため、なかなか寺外で見ることはできません。ほかにも、千葉や京都のお寺から出品された扁額も並び、圧巻の見ごたえです。展示室のデザインも美しい…!特別展「本阿弥光悦の大宇宙」展示風景第3章「光悦の筆線と字姿――二次元空間の妙技」では、光悦書蹟の代表作、重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》が登場。展示室の天井部分にも本作品のイメージが飾られていて、とても美しいです!この作品について、松嶋さんは次のように解説されています。松嶋さん俵屋宗達が金銀を用いて鶴の群れを描いた料紙に、光悦が三十六歌仙の和歌を散らし書きした美しい作品です。鶴の上昇と下降、群れの密度にあわせて字形と字姿をたくみに変化させています。光悦がもっとも充実した作風を示した時期の代表作と評されています。オリジナルグッズも充実!展示を見終わったあとは、ぜひ展覧会特設ショップへ。魅力的なオリジナルグッズがたくさん並んでいます。一番の注目は、国宝・舟橋蒔絵硯箱のマスコットキーホルダー(税込¥1,540)。おにぎりのようなサイズ感で、ころんとした形がとってもキュート。硯箱の盛り上がった形も再現され、光悦作品へのリスペクトが感じられる逸品です。同じく、国宝・舟橋蒔絵硯箱のトートバッグも気になるグッズのひとつ。ゆるめのイラストがめちゃくちゃかわいいです。この絵は、近代建築画家・建築イラストレーターのコジマユイさん作。シンプルなモノトーン仕上がりで、使いやすそうです。今回は、アクセサリー類も充実。光悦作品をモチーフにしたペンダントやピアス、イヤリングなど、どれもかなりおしゃれ。これらは、アクセサリーブランド LISA&TAIGAさん作のもの。アート好きにはたまらない、いくつも買いたくなるグッズです。本展は、3月10日(日)まで開催。事前予約は不要です。Information会期:2024年1月16日(火)~3月10日(日)※会期中、一部作品の展示替えあり会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)開館時間:9時30分~17時00分※最終入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日、2月13日(火) (注)ただし、2月12日(月・休)は開館観覧料:一般 ¥2,100、大学生 ¥1,300、高校生 ¥900※本展は事前予約不要です。
2024年02月11日石川県金沢市の国立工芸館で、特別展「印刷/版画/グラフィックデザインの断層1957-1979」が開催されています。版画とグラフィックデザインの巨匠たちによる作品が一堂に集まる注目の展覧会について、担当学芸員さんに見どころなどをお聞きしました。巨匠たちの版画とグラフィックデザインが集結!展示風景より【女子的アートナビ】vol. 323この展覧会では、国立美術館のコレクションから、版画やグラフィックデザイン界などで活躍した作家たちの作品70点が集結。浜口陽三や池田満寿夫、横尾忠則など巨匠が手がけた貴重な作品などが展示されています。今回、本展を企画された国立工芸館 主任研究員の中尾優衣さんにインタビューを実施。見どころやおすすめ作品などを教えていただきました。開催のきっかけは…展示風景より――まず、この展覧会を企画されたきっかけについて、教えていただけますか。中尾さんもともと、1970年代前後のグラフィックデザインと版画の関係に興味をもっていたのがきっかけです。日本の戦後美術では、1960年代にウォーホルなどポップアートが流行してから、版画表現の可能性が注目されていました。また、印刷技術が進歩していくなかで、版画と印刷の関係性が変わっていくようになり、そこがおもしろいと思ったのです。――版画と印刷の関係性とは、具体的にどういうことですか。中尾さん版画は、版にインクをのせ紙に押し当ててつくります。江戸時代は、大量に出版物を刷るための最先端の印刷技術として木版が使われていましたが、時代が進むにつれ、代わりにもっと効率の良いオフセット印刷などの機械印刷が使われるようになります。そのため、従来の木版は⼤量印刷のための主要な技法ではなくなった代わりに、その味わいを生かして版画家が作品をつくるための手段のひとつとなったのです。このように、版画と印刷の関係性が、年代に応じて変わっていく現象に興味を持ちました。展示風景より――技術の進化により、版画の役割が変わったのですね。中尾さん戦後の版画の可能性を考えていくなかで、東京国立近代美術館などで開催していた「東京国際版画ビエンナーレ展」が大きな役割を果たしたのですが、 当館を含む国立美術館では、その受賞作などをたくさん所蔵しているので、当時話題になった作品を展示することで、印刷と版画の関係性が明らかになるのではないかと思い、この展覧会を企画しました。日本の版画が世界で高評価!杉浦康平《第8回東京国際版画ビエンナーレ展ポスター》――では、展覧会の見どころについて教えていだたけますか。中尾さん本展では、「東京国際版画ビエンナーレ展」の受賞作や出品作と、当時の展覧会ポスターを一堂に展示しています。当時の作品をここまでの規模で紹介するのは、今回がはじめての機会です。ポスターは一過性のもので、ふつうは展覧会が終われば捨てられてしまうものですが、当館では資料として保管していました。東京国際版画ビエンナーレ展の作品と、当時の著名なグラフィックデザイナーが担当した歴代のポスターをあわせて見ていただけるという点が大きな見どころです。展示風景より――「東京国際版画ビエンナーレ展」とは、どんな展覧会だったのですか?中尾さんこれは1957年から79年まで、全11回開かれた展覧会です。日本は、戦後復興のなかで欧米に並ぶような経済的発展を目指し、文化的にも優れている点を見せていこうとしていました。そこで、日本人の版画が当時海外で高く評価されていたことから、版画の国際展覧会を開催することにしたのです。展覧会というより国家的な文化事業で、外務省も後援になっていました。――海外で評価された日本の版画とは、浮世絵版画のことですか?中尾さん浮世絵版画のすごさは、明治時代に海外で知られるようになりました。浮世絵のような分業制の職人技が光る版画も今なお評価されていますが、戦後に新しく出てきたのは棟方志功です。彼の版画は、浮世絵とはまったく異なる方法で制作し、大胆でプリミティブな表現にアーティストとしての強烈な個性と東洋の文化が融合した作品です。浮世絵と違う版画の魅力を世界の人たちが知り、棟方の版画は戦後まもない時期からヴェネツィア・ビエンナーレなど世界的展覧会で高く評価されました。巨匠の“スゴ技”がさく裂!野田哲也《日記 1968年8月22日》1968年 東京国立近代美術館蔵――展示作品のなかから、特におすすめ作品をいくつかご紹介いただけますか。中尾さん野田哲也さんの《日記 1968年8月22日》は、非常におもしろい作品です。これは、第6回東京国際版画ビエンナーレ展で大賞をとったもので、作家自身の家族写真をもとにコラージュした作品です。野田さんはカメラが趣味で、故郷の熊本に帰ると両親とともに記念撮影をしていました。比較的古風な習慣のご家庭でしたので、紋付き袴の正装姿で撮られています。自分で撮影した写真をコラージュし、海外風の椅子に座らせて非現実な空間をつくりだし、とても不思議な図柄になっています。きわめてプライベートなことをテーマにしていますが、そこから日本の伝統的な文化風習や、家族とそれを構成する個人との関係性、社会の中で記号化される人間の存在など、作品を見る人が自由に想像をめぐらせることができます。――写真をベースに版画をつくられるのですか?中尾さん野田さんは、もともとは油彩からはじめて、木版画を専門に勉強されたかたです。この作品がつくられた当時の版画技法は、木版や銅版、リトグラフがメインでした。写真製版は出始めたばかりでしたので、それを版画に部分的に取り入れるというやり方が珍しい時代でした。この作品では、椅子の部分は墨や蛍光インクに木版画の技法を使い、ほかにも写真製版、もっと詳しく言えば昔はガリ版刷りとも言いましたが、版画にはほとんど使われなかった謄写版ファックスも使うという新しい試みをされたのです。――技法がすごすぎて、驚きました。版画では、いろいろなことができるのですね。中尾さんまさに当時の作家さんたちも同じ気持ちで、版画は自分たちが知っている技法だけでなく、まだまだ新しいやり方を取り入れることができると思ったのです。版画表現は、作家自身で開拓していける可能性のあるジャンルと認識されていた時代でした。これは版画?印刷?高松次郎《英語の単語》1970年 東京国立近代美術館蔵――ほかにも、おすすめ作品はありますか?中尾さん版画かどうか、議論を呼んだ作品をご紹介します。高松次郎の《英語の単語》です。英単語が3つ並び、読むと「この/3つの/単語」という意味になっています。本来、文字というのはある概念を人に伝えるための記号として機能しますが、この作品では紙に書かれた文字がその内容と一致してしまっています。それ以上でもそれ以下でもない、記号と意味の問題を端的に示している作品です。――ちょっと難しい作品のように思えます。どのように鑑賞するのですか?中尾さん描かれているものを味わうという鑑賞⽅法とは違い、鑑賞する余地を与えない代わりに、⾒る⼈に頭を使わせ、その⼈の固定概念に揺さぶりをかけます。この時代の高松の作品は、概念を見せています。本作品は、何か別のものを表すために存在するはずの文字が自己完結することで、私たちは居心地の悪いような奇妙な感覚をおぼえます。そして、記号ではなく物質として見てみると、大量印刷できる印刷機で文字を刷っただけのものです。これが版画なのか?と問われるとグレーです。そんな作品が、版画を銘打っている展覧会に出されて注目されました。本作品の存在自体が、「これを版画に含めていいのか、そもそも版画とは何か」という問いも投げかけています。――版画作品、奥が深いですね。中尾さん1972年には高松が出品した別の作品が国際大賞を受賞し、印刷機でつくったものが、なぜ東京国際版画ビエンナーレ展で賞をとるのか、当時議論になりました。東京国際版画ビエンナーレ展の存在が、ある意味では版画の概念を崩壊させたという妙な状況が生まれたのです。当時は、印刷技術自体が日進月歩の時代。紙に文字を写すものは版画なのか、印刷なのか。その時代性をも見せてくれる、おもしろい作品です。展覧会タイトルの意味は…木村秀樹《鉛筆》1974年 京都国立近代美術館蔵――版画というと、昔の浮世絵版画や銅版画のイメージしかなかったのですが、さまざまな作品があり、印象がガラリと変わりました。最後に、なぜ展覧会のタイトルに「断層」とつけられたのか、教えていただけますか。中尾さん版画とグラフィックデザインはどちらも紙にインクを刷ってつくるので、広い意味では印刷に含まれるとても近い関係にあります。1960年代から1970年代にかけて、版画と印刷とグラフィックデザインの概念そのものを更新したりジャンルの境目を越えていくような試みが繰り返されましたが、本質的な部分まで混ざり合うことはありませんでした。今回の展覧会を考えるとき、これらのジャンルの関係性が私の頭の中で「断層」という言葉と結びつきました。断層の切り口は層としてはすぐ隣で重なっていますが、そこにはズレがあり交わることがありません。それで展覧会のタイトルにしました。当時の時代性も含めて、鑑賞を楽しんでいただけたらと思います。――詳しく教えていただき、ありがとうございました。Information展示風景より写真提供国立工芸館特別展「印刷/版画/グラフィックデザインの断層1957-1979」会期:2023年12月19日(火)~ 2024年3月3日(日)会場:国立工芸館(石川県金沢市出羽町3-2)開館時間:午前9時30分~午後5時30分※入館時間は閉館30分前まで休館日:月曜日(ただし2月12日は開館)、2月13日観覧料:一般¥300大学生¥150高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料
2024年02月04日東京・南町田にあるスヌーピーミュージアムが2月1日にリニューアルオープン!展示室の新設にくわえて、大人気のミュージアムショップ「ブラウンズストア」の新作グッズも大幅に増えます。新しい展示の見どころやおすすめグッズなど、ミュージアムの担当者さんにお聞きしました!大人気ミュージアムがリニューアル!ブラウンズストア販売グッズ(一部)【女子的アートナビ】vol. 322みんな大好きなスヌーピーの世界にどっぷりと浸れる「スヌーピーミュージアム」が、2月1日からリニューアルオープン。スヌーピーファンの聖地がさらにパワーアップします。リニューアル後のミュージアムでは、エントランスも大幅に変わり、口を開けた巨大なスヌーピーが登場。また、ぬいぐるみやアパレルなど数えきれないスヌーピーのグッズで埋め尽くされた「スヌーピー・ワンダールーム」も新設されます。さらに、人気のミュージアムショップ「ブラウンズストア」では、新作グッズ160点以上が大量投入!世界でここでしか買えないオリジナルグッズが大幅に増えます。そんな注目のリニューアルについて、スヌーピーミュージアム広報ご担当の矢川千絵さんと、グッズご担当の吉留明子さんに詳しくお話をうかがいました。「はしゃげる」ミュージアムに変身!PEANUTS Cafe SNOOPY MUSEUM TOKYO 新メニュー――まずは、ミュージアムのリニューアルについて、教えていただけますか。矢川さんこれまでのミュージアムは原画を見ていただくことを中心としていましたが、南町田に移転オープンしてからは館内で楽しみながら写真を撮っているお客様が多く、もう少し楽しめるポイントがあるとうれしいという要望をいただいていましたので、今回のリニューアルでは「はしゃげて楽しめる」ミュージアムに生まれ変わります。例えば、SNSの人気映えスポットとして使われている全長約8メートルのスヌーピーがいる展示室は、今まで静かなお部屋でしたが、リニューアルでは音楽や動く影の演出を取り入れ、より楽しめるようになります。――スヌーピーミュージアムに隣接する『PEANUTS Cafe』もリニューアルされるのですか?矢川さんはい。今回のリニューアルでグランドメニューが総入れ替えとなり、より楽しめる内容になると思います。スヌーピーなど人気キャラクターを前面に出したメニューも増えて、ミュージアムの余韻にも浸ることができます。また、企画展と連動したメニューも出る予定です。一番人気は“ゆるくた”ぬいぐるみ!ゆるくたオラフぬいぐるみ ¥3,850(税込)――ミュージアムショップ「ブラウンズストア」のリニューアルについて、教えていただけますか。吉留さんショップの商品は、現時点で約300点ありますが、そのなかで約160点、半数近くが新しくなります。かなりボリューミーで、新鮮味があります。書籍以外は、すべてこのミュージアムだけのオリジナルグッズです。――どんな商品がおすすめですか?吉留さん一番人気は、ぬいぐるみやマスコット系です。特に、ふわふわでくたっとした手触りの“ゆるくた”シリーズのぬいぐるみは人気があります。今、すでに売っているスヌーピーやチャーリー・ブラウンに加えて、今回はスヌーピーのきょうだいオラフが新たに発売されます。――オラフは、ちょっとふっくらしていて、コミックの中では「みにくい犬コンテスト」で優勝したという経歴もあるキャラクターですね。吉留さん実は、かなり人気のキャラクターなんですよ。今回のゆるくたぬいぐるみでは、オラフのふっくらした雰囲気を表現するため、ずっしり感が出るよう中に入れるおもりの重さにもこだわりました。また、座らせたときにちょっとヘタッとなるように質感も工夫しています。ゆるくた巾着が超かわいい!ゆるくたスヌーピー ロングポーチ ¥2,970(税込)――ゆるくたシリーズは、ポーチや巾着袋もありますね。吉留さんぬいぐるみをそのままポーチにしました。くたっとしたふわふわの手触りで、すごくかわいらしく仕上げています。カラーリングにもこだわり、耳や鼻などふつう黒い部分を少しグレーっぽくして、大人でも持てるようなデザインになるよう心掛けました。ゆるくたスヌーピーフェイス巾着 ¥2,200(税込)――巾着袋もすごくかわいいです。スヌーピーの顔だけがついていて、愛らしくて心を奪われました。吉留さんありがとうございます。この巾着袋にも、ゆるくたのスヌーピーがそのままついています。サイズや質感にもこだわってつくったおすすめ商品です。バッグ類も充実!トートバッグ ¥2,970(税込)――アラサー世代のanan読者におすすめのグッズはありますか?吉留さんトートバッグは種類やカラーも豊富で、使いやすさにもこだわってつくりましたので、ぜひ手に取って見ていただきたいですね。開発チームにはアラサー女性も多いので、みんなに意見を聞きながら生地や色、紐など決めていきました。膨大なコミックのなかから特にかわいいシーンを選び、バッグにデザインしています。ミュージアムを楽しんでいただいた方が、その余韻にも浸れるバッグです。ハニーローストピーナッツ ¥2,970(税込)吉留さんまた、約25センチサイズのスヌーピー立体ケースに入ったお菓子もおすすめです。帽子のフタを取ると、なかにハニーローストピーナッツの小袋が入っています。使い終わったあとは貯金箱になり、おまけのシールもついていてお得感があります。昭和っぽい懐かしい感じもあるおもしろい商品で、見た目にもかわいらしくお部屋に飾るのもおすすめです。限定のグッズも!ラグ ドッグハウス ¥19,800(税込)、スヌーピー 50’s ¥16,500(税込)――ほかにも、注目のグッズはありますか?吉留さんMIYOSHI RUGさんに生産を依頼した手づくりラグは、今回の注目グッズです。約70センチの大き目のラグで、徳島の工場で職人さんが手作業でつくっているので、一点一点味わいが違います。実際に見ていただけるとわかりますが、本当にしっかりしたラグです。数量限定品ですが、ちょっと珍しい商品なのでおすすめです。カチューシャ&チョーカー ¥2,530(税込)吉留さん最後にもうひとつ、ふわふわの生地でつくったスヌーピーの耳つきカチューシャとチョーカーのセットをご紹介します。リニューアル後はこれまで以上に撮影できるスポットも増えますので、入口でこの商品を販売します。来館者の方々もスヌーピーになりきって、館内を見ていただくことができます。――ちょっとしたコスプレのようで、楽しそうですね。いろいろご紹介いただき、ありがとうございました!企画展もスタート!ミュージアムでは、リニューアル後の2月1日から新しい企画展「旅するピーナッツ。」がはじまります。シュルツ美術館が所蔵する貴重な原画約45点を中心に構成され、スヌーピーやピーナッツ・ギャングが旅を楽しむ様子が描かれた原画を楽しめます。ぜひ、新しくなったミュージアムやショップ、カフェでスヌーピーの世界にどっぷり浸ってみてくださいね!※掲載タイミングによって完売している商品がある可能性があります。© 2024 Peanuts Worldwide LLCInformation企画展「旅するピーナッツ。」会期:2024年2月1日(木)~9月1日(日)開館時間:平日10:00~18:00、土日祝10:00~19:00、※2月1日(木)~4日(日) 10:00~20:00(最終入場は各閉館時間の30分前)休館日:2024年1月9日(火)~1月31日(水)、2月20日(火)、他年2回観覧料:前売券 一般・大学生 ¥1,800、中学・高校生 ¥800、4歳〜小学生 ¥400当日券 一般・大学生 ¥2,000、中学・高校生 ¥1,000、4歳〜小学生 ¥600
2024年01月28日東京・六本木にある森アーツセンターギャラリーで、「キース・ヘリング展アートをストリートへ」がはじまりました。東京展のスペシャルサポーターと音声ガイドナビゲーターを務めるのは、俳優の磯村勇斗さん。昔からへリングが大好きだったという磯村さんに、展覧会のご感想やアートについて、お聞きしてきました!磯村勇斗さんがスペシャルサポーター!磯村勇斗さん。キース・ヘリング作《ブループリント・ドローイング》の展示室にて【女子的アートナビ】vol. 320本展は、世界的アーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)のアートを体感できる大規模な回顧展です。キース・へリングは、アメリカ・ペンシルベニア州生まれ。1978年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツに入学し、1980年代初頭にニューヨークの地下鉄駅構内にある広告板にグラフィティ・アートを描きはじめ、注目を集めます。やがて次々と展覧会が開かれて国際的にも評価が高まり、日本でも展覧会やワークショップを開催。精力的に制作を続けますが、1988年にエイズと診断されます。その後はエイズ予防のメッセージをアートで訴えるなど、31歳で亡くなるまで、アートをとおして社会的な活動も行いました。本展では、初期のサブウェイ・ドローイングや、誰もが見たことのある人気のモチーフが登場する《イコンズ》、6メートルもある大型作品など約150点を展示。絵画だけでなくオブジェクトもあり、展示空間もドラマチックに演出されています。そんな楽しい展覧会の東京展スペシャルサポーターと音声ガイドナビゲーターを務めるのは、磯村勇斗さん。内覧会に登壇した磯村さんにインタビューも行い、展覧会やアートのことなど、いろいろお聞きしてきました!ビビッときました!――昔から、キース・へリングが大好きだったとのことですが、どんなきっかけで好きになられたのですか?磯村さん大学で美術を専攻していまして、アメリカのポップカルチャーを勉強していました。アンディ・ウォーホルや草間彌生さんなどのアーティストのなかにキース・へリングもいて、教科書に載っていたキースの絵を見て、ビビッときたんです。この絵好きだ!と思いました。そこから、彼の絵をどんどん見るようになりました。――どんなところにビビッときたのですか?磯村さん学生時代のことで、作品名をしっかり覚えてはいないのですが、人の集合体のような作品で、人がシンプルに描かれているだけで、絵は止まっているはずなのに、なんで人が動いて見えるのだろう?と思いました。線の効果や、人のちょっとした動き具合だと思うのですが、止まっている絵をこんなにも楽しく見せることができるのだな、と衝撃を受けました。――そんな大好きなアーティストの展覧会でスペシャルサポーターに選ばれて、いかがですか。磯村さん率直にうれしかったです。今まで取材などでキース・へリングが好きですという話をしていたのですが、それが今回このような形でオファーをいただけて、すごくうれしく思いました。はじめての展覧会スペシャルサポーターがキース・へリングなんて、光栄でありがたいです。好きな気持ちを乗せて…――今回、音声ガイドナビゲーターも担当されています。収録はいかがでしたか。磯村さん緊張しました。キース・へリング自身、自分の作品についてあまり説明していなくて、彼が当時どのような思いで生きていたのか明かされていないまま今に至ります。音声ガイドでは、そんな彼の言葉や思いをセリフのように自分が語る部分があります。自分の気持ちをどのくらい入れたらいいのだろうと悩みながら収録しました。特に、セリフの部分をキースに寄せるのか、自分自身の言葉でやるかを悩みましたが、そこはキースを好きな気持ちを乗せながら、自分らしくやりました。――音声ガイドで、印象に残っているストーリーなどはありますか?磯村さんキースの言葉で、「鑑賞者もアーティスト」というのがあり、それが僕たちの仕事も同じだと思いました。映画は映像として完成した時点では90パーセントで、劇場で公開して、お客さまに見ていただき、ようやく100パーセントになると思っています。それと一緒だなと思いましたし、キースの感覚と近いものを感じられました。すべて自分たちで解決して満足するのではなく、余白を残して、しっかり鑑賞者であるお客さまにゆだねるという心が大事だなと思いました。――今回の展示で、特にお気に入りの作品はありますか?磯村さん本当に絞るのが難しいのですが、特によかったのは《ブループリント・ドローイング》の作品群です。暗い展示室の中にモノクロ版画の作品が並んでいるのですが、展示空間づくりも含めてお気に入りです。キースが死の宣告を受けたあと、彼が今までやってきたアート人生を振り返りながら制作したもので、悲しい部分を感じつつも、パワフルで、皮肉な部分もあります。それらを暗く描くのではなく、明るく描いているのがすごく僕の中でしびれました。ぜひ注目していただきたいポイントです。友だちになれそう(笑)――本展では、キース・ヘリングの生涯についても詳しく触れられています。この点について、どう思われましたか。磯村さんキースはパートナーを亡くし、自分がエイズであることも知り、死を感じながら創作活動をしていました。死を知りながら、何かものづくりをするというのは、どんな気持ちだったのだろうか、とすごく考えます。当時描いていた絵を見ると、ものすごくエネルギーがありながらも、どこか寂しさもある。でも、それを悲しく描くのではなく、最後まで色を使って明るく描いて、明るく生きていこうとしていたのではないかと僕は感じました。鑑賞者の立場になり、アートはみんなのため、という想いを最後まで心の中に秘めながら描いたのではないかと思いました。――キースのアーティストとしての活動期間は約10年間でした。磯村さんもデビューして約10年ですが、今回彼の作品を観られて、改めてどう感じられましたか。磯村さん10年という短いなかで絵を描き、それが今の世界でみんなに知られている。彼がもし今生きていたら、どんなふうに作品を作って世の中にメッセージを届けていたのか気になります。キースの作品にはセクシャルな部分など社会的なメッセージもあり、現代でも通用するものです。彼の生きてきた時代と今は全然変わっていないし、彼の絵が僕らにも刺さるということは、今もその問題に向き合わなければならないことだと僕たちに教えてくれます。彼は20代で、すでにいろいろな問題が見えていた。それは、考えられないくらいすごいことだと思います。――磯村さんにとって、キースはどんな存在ですか?あこがれの人でしょうか。あるいは、友だちになりたい人ですか?磯村さん友だちになれそうな感じがします(笑)親しみやすい方なのではないかな、と思います。キースは、小さいころから絵を描くことが大好きで、親にやめなさいと言われても描き続け、どんどん手が止まらず描いてきた人だった。自分も、役者をやりたいといって、反対されながらもずっと口にしてやり続けてきたので、その辺のマインドみたいなものはすごく共感できます。もし今の時代にキースが生きていたら、こういう話をして「わかる、わかる!」と言い合いたいですね(笑)。いい友だちになれそうな気がします。――キースなどのアートを見ることは、役作りに何か影響していますか?磯村さん俳優業にどうつながっているかはわかりませんが、やはり絵は自分の世界を広げてくれるものでもあり、想像力を掻き立てられて豊かにしてくれるものです。役者も想像力が豊かでないとできないので、それを養う力がアートにはあると思います。グッズも持っています!――ちなみに、キースのグッズもお持ちですか?磯村さんグッズはいろいろ持っていて、ステッカーやファイル、ポーチ、Tシャツ、ジャケット、「光りを放つ赤ちゃん」と「吠える犬」のオブジェクトもあり、全部で十数点は持っています。――お部屋に飾って楽しんでいるのですか?磯村さん赤ちゃんと犬のオブジェクトは自分のなかのお気に入りで、それは部屋の観葉植物の下に置いています。配置を工夫して、気分によって犬に追われている赤ちゃんにしたり、赤ちゃんが追う犬にしたりしてシーンをつくり、寂しい遊びをしています(笑)。観葉植物はヤシ科の大きな葉があるもので、その下に置いているのですが、意外にかわいくて合います。――アートがお好きなんですね。磯村さん小さいころからアートは好きで、家族で旅行に行ったりするときは、必ず美術館に寄るくらいでしたので、その影響で自分も絵が好きになっていました。美術館で絵を見るのも好きですけど、その空間も好きなんです。部屋にアートを飾ると、その好きな空間を家の中で味わえて、自分のプライベートの時間が充実するし、落ち着きます。――最後に、展覧会を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。磯村さんキース・へリングの作品は、今の若い人たちも見たことがある人がほとんどだと思います。でも、キースがどんな人なのかを知っている人は少ないと思います。今回の展覧会では、彼がどういう人でどんな人生を歩んできたのか、みなさんが見たことがある絵の背景にはどういった思いがあるのか、といったことを知ることができるチャンスだと思います。ここまでキース・へリングの裏側を解説していく展覧会はなかったと思うので、ぜひ、みなさんに来ていただけるとうれしいです。――ありがとうございました!取材を終えて…キース・ヘリングのTシャツがお似合いだった磯村さん。ご自身でも絵を描いているそうで、アートにも大変詳しく、楽しいお話を聴かせてくださいました。取材後、会場で音声ガイドを聴きながら作品を観たのですが、キースの人生や彼の言葉が紹介され、まるでドキュメンタリー映画を見ているような感覚で作品を鑑賞できました。特に、エイズと診断されたあとのキースの想いや、死について語る部分では涙腺が崩壊。彼の作品と磯村さんの声が重なり、すばらしい鑑賞体験ができました。ぜひ音声ガイドを聴きながら、キースの作品をご覧になってみてください。All Keith Haring Artwork ©Keith Haring FoundationInformation会期:~ 2024年2月25日(日)会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)時間:10:00~19:00※金曜日・土曜日は20:00まで※年末年始(12月31日~1月3日)は11:00~18:00※入場は閉館の30分前まで休館日:会期中無休観覧料:一般・大学生・専門学校生¥2,200中高生¥1,700小学生¥700※事前予約制(日時指定券)音声ガイド貸出価格:¥650(税込)※お一人様一台につき撮影:山本倫子
2023年12月23日東京・丸の内にある静嘉堂@丸の内で、2024年1月2日から2月3日まで「ハッピー龍イヤー! ~絵画・工芸の龍を楽しむ~」が開かれます。古代から吉祥をもたらすものとして扱われていた「龍」。辰年の2024年、おめでたい龍の絵画や工芸品が静嘉堂に集まります。おめでた気分MAXの展覧会!【女子的アートナビ】vol. 321「龍」が誕生したのは、古代中国。体はヘビ、頭には角が2本あり、口に長いひげを生やした姿で描かれる想像上の動物です。ふだんは水中にひそんでいますが、天に昇って雨を降らせる力などをもつとされ、古くから雨ごいの神としても信仰されていました。そんな龍をモチーフにした作品が本展に集結。企画を担当された静嘉堂文庫美術館学芸員の長谷川祥子さんは、本展の見どころについて、次のように教えてくれました。長谷川さん2024年に幕開けとなる本展は、来年の干支・辰(龍)を祝うテーマで開催するものです。想像上の動物である龍は、東アジアでは吉祥の霊獣として、また皇帝のシンボルとして数多く名品に表されています。このたび、静嘉堂の所蔵品から龍モチーフの作品を、幅広いジャンルから揃えました。これまで公開の機会のなかった“龍たち”も、ここぞとばかりに初登場です。さまざまな表情、迫力あるポーズも楽しい、そして重要文化財2件を含む、意外に()名品揃いの展覧会です。どうぞお楽しみください!anan読者におすすめの作品は…青花黄彩雲龍文盤「大清乾隆年製」銘清時代・乾隆年間 (1736〜95)景徳鎮官窯今回、長谷川さんにanan読者へのおすすめ作品を3点ピックアップして解説していただきました。ひとつめは、景徳鎮のお皿です。長谷川さんこの大皿は真ん中に正面を向いた五爪龍が描かれ、中央には「宝珠」を持つがごとく、「寿」の字を入れた丸文が描かれています。上質なコバルト顔料で、龍とそれを取り囲む炎や雲を濃いブルーで描いて本焼成したのち、今度は清朝で開発されたばかりの、酸化アンチモンによる美しい「レモンイエロー」の顔料を余白すべてに塗りつめてからもう一度焼いています。なんとも濃密なカラー!清朝官窯ならではの逸品なのです。幕末最大の浮世絵派閥、夢の競演!三代歌川豊国(国貞)・二代歌川広重 画《長崎 円やま》江戸時代・文久元年(1861)ふたつめのおすすめ作品は、江戸時代の浮世絵です。長谷川さん異国情緒ただよう、長崎・円山(まるやま)の妓楼(ぎろう)で、男女二人が窓辺に広がる海を眺めています。長いキセルをステッキのようにたてた遊女の打掛は、大海原から立ち上る昇竜(のぼりりゅう)のデザインです。ちなみにこの浮世絵は、国貞が三代歌川豊国と名乗り、歌川派の重鎮として活躍した時期の作品ですが、画面に繰り広げられる見事な景色は、風景画を専門とした二代歌川広重が描いています。一点で、幕末最大の浮世絵派閥・歌川派の競演、“人物の豊国”と“風景の広重”を楽しめる、お得な作品です。皇族の服をリフォーム!?《紺地龍“寿山福海”模様刺繍帳》(部分)清時代 (19世紀)最後のおすすめ作品は、刺繍で装飾された美しい布です。長谷川さん「帳(とばり)」とは、中国文人風の「煎茶会」を邸宅の広間で催す際、茶室の入り口に掛けられた暖簾(のれん)のような布のことです。この羅地(らじ)の絹は、中国皇帝のシンボル・五爪をもつ龍と、さまざまな吉祥文様を各色に染めた色糸による刺繍によって、ことに龍の鱗は金箔の「撚(よ)り糸」による刺繍で装飾されています。限りなく吉祥文様が詰まった“寿山福海”(じゅざんふくかい)という意匠です。この帳は何と、清朝皇族の袍(服)であったものを、煎茶人がリフォームしたものと推定されます。姓名に「龍・竜・辰・タツ・リュウ」でうれしい割引も!長谷川さんの解説、いかがでしたか。ほかにも、迫力満点の橋本雅邦「龍虎図屏風」(重要文化財)と、鈴木松年「群仙図屏風」の屏風対決が見られたり、大人気の国宝「曜変天目(稲葉天目)」も出品されたりと、静嘉堂のスター作品も登場。おめでたい気分を味わえること、間違いなしです!なお、本展では「辰年生まれ」の方、姓名に「龍・竜・辰・タツ・リュウ」がついている方は、同伴者も含めて入館料が200円も割引になります。ぜひ、お友だちやご家族のなかで辰年生まれや姓名にご縁のある方を探し、みなさんでハッピーな展覧会にお出かけください。Information会期:2024年1月2日(火)~2月3日(土)会場:静嘉堂@丸の内開館時間:10:00~17:00※金曜は18:00閉館。※入館は閉館時間の30分前まで休館日:月曜日(ただし1月8日(月・祝)、1月29日(月)は開館)1月9日(火)※1月29日(月)はトークフリーデーとして特別開館いたします。観覧料:一般¥1,500大学・高校生¥1,000中学生以下無料※「辰年生まれ」の方、姓名に「龍・竜・辰・タツ・リュウ」がついている方は、同伴者も含め、本展の入館料を ¥200割引。※他の割引との併用不可。※ご入館の際、証明になるものをご提示ください。
2023年12月22日男「それでさ…」恋愛がうまくいく♡モテる女子がやっている積極的なアプローチ!男性が好きな女性に対する気持ちは、実はその行動に現れます。それは、必ずしも言葉にならないこともあるため、男性の行動をよく観察すれば、あなたへの愛情があるか分かるかもしれません。今回は、男性が心から想っている女性に示す、普通には見られない行動をピックアップして紹介します。プライベートな話を積極的にするもし、あなたの相手が自身の話をいっぱいしてくれるのでしたら、それは愛情表現のひとつと考えていいかもしれません。男性は「自分のことを知って欲しい」と思うと、自身のプライベートな話題を出しがちです。さらに、あなたを楽しませたいために一生懸命話すことも。ですが、その場しのぎの時間つぶしのようなものでは、男性は雑な話題を選ぶこともあるよう。男性がどんだけ自身の話をしてくれるか、その頻度と数であなたへの感情を見極めてください。男性からの愛情表現かも?本気の気持ちを持った女性には、男性も自身から積極的に、コミュニケーションをとります。もし頻繁に話しかけてきたりすることがあるならば、その男性からの愛情表現かもしれませんね。(愛カツ編集部)
2023年12月01日東京・上野にある東京都美術館で、2024年1月27日から「印象派モネからアメリカへウスター美術館所蔵」がはじまります。本展のオフィシャルサポーターは、俳優の鈴鹿央士さん。音声ガイドにも初挑戦された鈴鹿さんに、展覧会への熱い思いを語っていただきました!鈴鹿央士さんがオフィシャルサポーターに!鈴鹿央士さん【女子的アートナビ】vol. 319本展では、アメリカ・ボストン近郊にあるウスター美術館のコレクションを中心に、モネやルノワール、ピサロ、カサットなど印象派を代表する画家たちの油彩画約70点が集結。そのほとんどが初来日作品です。さらに、日本ではなかなか見ることができない「アメリカ印象派」の作品も多数展示されます。この展覧会が開催される2024年は、第1回印象派展から150周年を迎える記念の年。フランスで生まれた印象派が、アメリカ各地でどのように広がっていったのか、その影響を本展でたどることができます。本展のオフィシャルサポーターを務めるのは、鈴鹿央士さん。記者発表会に登壇した鈴鹿さんにインタビューも行い、展覧会への思いについて、お聞きしてきました!ワクワクしています!クロード・モネ《睡蓮》1908年油彩、カンヴァスウスター美術館Museum Purchase, 1910.26/Image courtesy of the Worcester Art Museum――まず、オフィシャルサポーターに選ばれて、いかがでしたか?鈴鹿さんはじめて展覧会のオフィシャルサポーターを務めさせていただくので、非常にワクワクしています。みなさんに気軽に楽しんでいただけるよう、また僕自身も楽しみながらやってみたいと思っています。――印象派については、どんなイメージをお持ちでしたか?鈴鹿さんあまり美術の知識はなかったので、今回のお話をいただいてから、学ばせてもらいました。それまでのイメージは、はっきりした絵というより、淡い色合いの風景を描いた作品が多いのかな、という感じで、モネの睡蓮ぐらいしか知りませんでした。――今回、印象派を勉強されたとのことで、何かイメージが変わりましたか?鈴鹿さん変わりました。印象派の歴史的背景を学んで、おもしろいと思いました。印象派が出てくる前は、風景画であっても戸外では下絵を描き、アトリエに持って帰って油彩画を仕上げる手法でしたが、印象派の画家たちは、その場で見た色やありのままの風景を描くのです。その一瞬を切り取るのがすごくステキだと思いました。すごく印象に残った言葉は…――今回、音声ガイドにも初挑戦されました。スペシャルトラックとして収録されたそうですが、いかがでしたか?鈴鹿さん収録のとき、たくさん噛みました(笑)。自分はこんなにしゃべれなかったかな、と思いながら収録しました。でも、ウスター美術館は地域と距離感が近い美術館だそうで、絵画以外にもいろいろな作品が展示されていて、地域の人たちが気軽に立ち寄る美術館とお聞きしました。その気軽な雰囲気を僕の声で出せたらな、と意識しながら収録していたので、楽しく録ることができました。――収録を終えて、印象に残っているセリフはありますか?鈴鹿さん画家の黒田清輝さんの言葉が印象に残っています。彼は、印象派を日本に持ち込むうえで大きなお仕事をされた方ですが、僕の言葉で要約すると、印象派というものがほかの土地に行ったときに、その土地のものになる、というようなことを仰っていたのです。フランスで生まれた印象派がアメリカに行ったら、それはアメリカの印象派になる、ということですよね。それは今にも通じることだと思いました。僕は、いろいろ無駄なことを考えるのが好きで、例えばお寿司は、日本では生のお魚ですけど、アメリカに行ったらカリフォルニアロールになって、それが寿司になっています。僕らもそれを受け入れる心が大事なんだな、と思いました。黒田さんの言葉がすごく大切な言葉だと感じながら収録しました。この部分のセリフは、ぜひ音声ガイドで聴いてみてください。気になる作品は…デウィット・パーシャル《ハーミット・クリーク・キャニオン》1910-16年油彩、カンヴァスウスター美術館Museum Purchase, 1916.57/Image courtesy of the Worcester Art Museum――今回、アメリカ印象派の作品も多く展示されます。作品を資料でご覧になって、気になる作品はありましたか?鈴鹿さんアメリカならではの広大な自然が描かれている作品が印象に残っています。特に気になる作品は、デウィット・パーシャルさんの《ハーミット・クリーク・キャニオン》です。グランド・キャニオンを描いたもので、太陽の光に淡いピンクやオレンジを使い、全体的に明るい印象を受けました。この絵が好きな理由は、エピソードがおもしろいのです。パーシャルさんが、この絵を描いてくださいといわれたとき、グランド・キャニオンまで目隠しをされて連れて行かれ、目隠しをとって見た景色がこの絵になっているそうです。なんでそんなことしたんだろう?と思ったのですが(笑)、そんな話を知ると、おもしろい絵だなと感じました。また、今回は北欧の人が描いた印象派作品も展示されるそうで、土地ごとの違いを見比べるのも楽しそうです。――フランスからはじまった印象派は、アメリカや北欧、日本など世界に影響を与えたのですね。鈴鹿さんでも、当時の絵画はきれいに描くというのが重要視され、印象派の粗いタッチは評価されなかったらしいのです。印象派の画家たちは、一瞬の自然や草の色は緑だと決めつけず、いろいろな色で表現していましたが、そのような絵を当時の社会で発表するのは勇気がいるものだと思いました。それでも、彼らの絵は世界中に広がる力と勢いがあった。やはり、印象派の技法とか、すごい衝撃だったのだろうと思います。僕も、よくカメラで風景を撮るので、一瞬を切り取るというのは通じるような気がします。――写真を撮るのがお好きなんですね。印象派の作品とつながる部分がありそうですね。鈴鹿さん僕はフィルムで風景の一瞬を撮るのですが、現像して振り返ってみると、撮ったその場所の空気感とか匂い、温度を思い出します。きれいにその場所を切り取るのではなく、そのときの自分の感覚を含めてその一枚を大切にするという思いがあります。例えば、モネの睡蓮は連作になっていますが、同じ場所の睡蓮でもいろいろな色や水面があり、写真とも似ているのかなと思いました。その風景の「一瞬」を追っているのだと思います。どんどん印象派にのめりこんだ!――ところで、本展のオリジナルグッズにウスターソースが出るそうですね。鈴鹿さん美術館の名前がウスターだからウスターソースを作ったそうで…ちょっと「そうなんですか」としか僕も返せなかったのですけど(笑)、そういうおもしろさもある展覧会ですね。僕の岡山の実家には、ウスターソースは常備していなかったので、これを機にウスターソースを使って料理してみたいです。――最後に、メッセージをお願いします。鈴鹿さん展覧会には初来日の作品も多く展示されるので、美術が好きな方も来ていただいて価値のあるものだと思います。僕自身、あまり美術の知識がなかった人ですけど、どんどん印象派の絵にのめりこんでいきました。その魅力を、まだあまり美術を知らない人にも、ぜひ楽しんでいただきたいです。たくさんの方に気軽に足を運んでいただきたいと思います。――ありがとうございました!取材を終えて…優しい笑顔がとてもステキだった鈴鹿さん。オフィシャルサポーターに選ばれてから印象派について学んだと仰っていましたが、本当にのめりこんでしまったそうで、その魅力について熱く語ってくれました。鈴鹿さんは、お声もソフトで優しいので、スペシャルトラックとして収録された音声ガイドを聴くのが楽しみです。音声ガイドではクイズの企画もあるそうなので、ぜひガイドを聴きながら展覧会を楽しんでみてください。Information会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日)会場:東京都美術館(東京・上野公園)開室時間:9:30〜17:30金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)休室日:月曜日、2/13(火)※ただし2/12(月・休)、3/11(月)、3/25(月)は開室観覧料:一般¥2,200 (¥2,000)、大学生・専門学校生¥1,300(¥1,100) 、65歳以上¥1,500(¥1,300)・()内は前売料金。・高校生以下無料。※土日・祝日及び、4月2日(火)以降は日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)※本展は、東京都美術館で開催したあと、郡山市立美術館、東京富士美術館、あべのハルカス美術館に巡回します。This exhibition was organized by the Worcester Art Museum
2023年11月22日東京・新宿のSOMPO美術館で、「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」が開かれています。本展では、日本でも人気の高い画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)が描いた静物画に焦点をあて、国内外から油彩画が集結。彼が影響を受けた画家たちの作品も見ながら、ゴッホの変遷をたどることができる展覧会です。静物画を見なければ、ゴッホは語れない!「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」展示室入り口※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 318本展では、ゴッホの画業のなかでも静物画にフォーカスして、彼の初期作から晩年の大作まで25点の油彩画を紹介。さらに、ヨーロッパにおける静物画の歴史のなかで、ゴッホが影響を受けたドラクロワやマネ、モネなど、著名な画家たちの作品もあわせて展示。出展作品全69点を通して、彼が何をどのように学んでいったのか、画業の変遷をたどることができます。展覧会を担当されたSOMPO美術館上席学芸員の小林晶子さんは、次のように述べています。小林さんゴッホは、当初、人物を描く画家になりたかったので、静物画に対してそれほど興味をもっていませんでした。絵を学ぶ鍛錬のためのものが静物画でした。鍛錬しているうちに自分の芸術を確立し、静物画のなかでも「ひまわり」が自分の代表作であると思うようになりました。本展のキャッチコピーは「静物画を見なければ、ゴッホは語れない」です。ゴッホがどんなふうに鍛錬して、代表作を描くまでに至ったのか、静物画の歴史もあわせてご覧いただけます。ハーグ時代の初期作からスタート!フィンセント・ファン・ゴッホ《麦わら帽のある静物》1881年クレラー=ミュラー美術館蔵、オッテルロー © 2023 Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands最初の章では、まずゴッホが油彩画に取り組み始めたハーグ時代の初期作からスタート。《麦わら帽のある静物》は1881年に描かれたものです。その前年、27歳のときに、ゴッホは画家になることを決意。ブリュッセルの王立美術アカデミーに通い、その後、オランダ南西部のハーグで、画家マウフェから指導を受けました。「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」展示風景1章の前半では、17世紀のオランダ絵画もあわせて展示。ヨーロッパ絵画史のなかで、静物画というジャンルが確立したのは17世紀ごろといわれています。当時、市民階級が豊かになったネーデルランド(現在のオランダ)では、身の回りの事物や工芸品などをリアルに描いた小さな静物画が流行。市民たちは、それらを自宅に飾り楽しんでいました。静物画について、はじめは油彩を描くための修業としてとらえていたゴッホは、瓶や壺、鳥の巣など伝統的なモチーフを描いていました。ゴッホ、ドラクロワに学ぶ!「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」展示風景1章の後半では、19世紀の静物画を展示。ドラクロワやピサロ、ルノワールなどの華やかな作品が並んでいます。ゴッホは、特にドラクロワ作品の色彩に感銘を受け、弟のテオに手紙で作品や制作姿勢について語っています。ドラクロワは、ゴッホの作品に大きな影響を与えた画家のひとり、といわれています。1886年、パリに移住したゴッホは、印象派の明るい作品からも影響を受け、初期のころと比べると、色彩も描き方も大きく変化しました。会場に展示されているパリ初期時代の花作品は、驚くほど色彩が鮮やか。ゴッホの画風の変化がよくわかります。ゴッホ、モンティセリに学ぶ!アドルフ=ジョゼフ・モンティセリ《花瓶の花》1875年頃 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー © 2023 Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands2章では、花の静物画に焦点を当てて紹介。ここで注目したいのが、ゴッホと同時代の画家、アドルフ=ジョゼフ・モンティセリ(1824-1886)の作品《花瓶の花》です。彼は、肖像画や静物画などを手がけ、筆跡が残るタッチや絵具を厚塗りする描き方など、当時としては珍しい表現をしていた画家です。ゴッホは、モンティセリの作品を収集し、表現方法や技法も参考にしたといわれています。モンティセリ作品に似たようなゴッホの絵も、近くに展示されています。ゴッホがモンティセリからどう学んだのか、描き方など比べてみるとおもしろいです。ゴッホの代表作が登場!フィンセント・ファン・ゴッホ、左:《アイリス》 1890年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)、右:《ひまわり》 1888年 SOMPO美術館本展のハイライト、ゴッホの代表作《ひまわり》と《アイリス》は2章で登場!さまざまな画家の作品から影響を受け、静物画を通して修業していたゴッホが、いよいよ自身のスタイルを確立。《ひまわり》は1888年、《アイリス》は1890年に描かれています。強烈な色彩、荒々しいタッチ、厚塗りの絵具などは、ゴッホの代名詞ともいえる表現法ですが、本展を見ていくと、彼が独自に生み出したのではなく、さまざまな作品から学んでいたことがわかります。画風を確立したゴッホですが、《ひまわり》を制作した1888年に、画家仲間のゴーギャンと口論して、自分の耳を切り、アルルの病院に入院。その後、サン・レミ・ド・プロヴァンスにある病院で精神科の治療を受けました。《アイリス》を制作した後、1890年の7月に37歳で死去。銃で自らを撃ったと伝わっています。ゴッホに影響を受けた画家たちの作品も!「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」展示風景最後の章では、ゴッホ、ポール・ゴーギャン、ポール・セザンヌなど「ポスト印象派」と呼ばれた画家たちの作品や、ゴッホから影響を受けたモーリス・ド・ヴラマンクの作品などを紹介。新しい静物画のスタイルを切り拓いていった画家たちの、自由で革新的な作品を楽しめます。静物画を通してゴッホの変遷をたどることができる展覧会は、2024年の1月21日まで開催。人気の展覧会なので、ぜひ日時指定予約をしてお出かけください。Information会期:~24年1月21日(日)会場:SOMPO美術館時間:10時~18時(ただし11月17日(金)と12月8日(金)は20時まで)※最終入場は閉館30分前まで休館日:月曜日(ただし1月8日は開館)、年末年始(12月28日~1月3日)観覧料:一般¥2,000(¥1800)、大学生¥1,300(¥1100)※()内は日時指定料金問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2023年11月19日東京・上野にある東京都美術館で、「永遠の都ローマ展」が開かれています。本展では、ローマの観光地としても人気のカピトリーノ美術館から多くの作品が来日。古代彫刻の傑作をはじめ、油彩画や版画、貨幣など多彩な作品を楽しめる展覧会です。歴史あるカピトリーノ美術館から来日!カンピドリオ広場のカピトリーノ美術館©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali【女子的アートナビ】vol. 317イタリアの首都、ローマにあるカピトリーノ美術館は、世界でもっとも古い公共美術館のひとつ。1471年に、時の教皇シクストゥス4世が《カピトリーノの牝狼》などの古代彫刻4点をローマ市民に寄贈したことからはじまり、その後、1734年にローマの古代遺物や彫刻、名家が所蔵していた美術品などが一般に公開されるようになりました。カピトリーノ美術館が建つカンピドリオ広場は、あの有名なミケランジェロが構想。美しい敷石のデザインなどが目を引く観光客にも人気のスポットです。そんな由緒ある美術館から、貴重な彫刻や絵画、版画など古代から近代までの作品が数多く来日。ほかにもローマ美術館など国内外の作品をあわせた約70点の展示作品を通して、ローマの芸術を堪能できます。ローマの建国者はオオカミに育てられた…?!《カピトリーノの牝狼(複製)》 20世紀(原作は前5世紀) ローマ市庁舎蔵本展は、5章構成。第1章、「ローマ建国神話の創造」では、ブロンズや大理石像、貨幣などの作品を通して、古代ローマ建国を伝える有名なエピソードを知ることができます。まず展示室に入ると、ローマのシンボルともいえる作品《カピトリーノの牝狼(複製)》が出迎えてくれます。古代ローマ神話によると、ローマの建国者ロムルスと弟レムスは、軍神マルスと巫女レア・シルウィアの間に生まれた双子。しかし、王位をめぐる争いに巻き込まれてローマのテヴェレ川に捨てられ、その後オオカミに乳を与えられて育ったと語られています。この伝説から、ローマ建国のシンボルとして、双子に乳を与える牝狼の姿が描かれた作品が多くつくられるようになりました。会場には、オオカミと双子がデザインされた紀元前の貨幣や鏡なども展示されています。高さ約1.8メートルの巨大な顔!「永遠の都ローマ展」展示風景第2章「古代ローマ帝国の栄光」では、頭部だけで高さが約1.8メートルもある巨大彫刻《コンスタンティヌス帝の巨像》の一部を原寸大で複製した作品が登場!この像は、先述したカピトリーノ美術館が誕生するきっかけとなった古代彫刻のひとつ。ローマ帝国の繁栄がダイレクトに伝わる迫力ある作品です。同じ展示室にある《コンスタンティヌス帝の巨像の左手(複製)》も、大きくて見ごたえ抜群。この左手がもっている球体は、ボールではないようです。本展公式サイト内の「ローマクイズ」によると、「地球・真珠・たまご」のうちのどれかが正解。ヒントは、支配者の象徴です。詳しくは、下記Information欄に載せた公式サイトでご確認ください。美しすぎる…!門外不出のヴィーナス初来日!《カピトリーノのヴィーナス》 2世紀カピトリーノ美術館蔵次の展示室に進むと、本展のハイライト作品《カピトリーノのヴィーナス》が登場!本作品は、ミロのヴィーナス(ルーヴル美術館)、メディチのヴィーナス(ウフィッツィ美術館)と並ぶ古代ヴィーナス像の傑作のひとつ。前かがみの姿勢で、手で胸元などを隠す“恥じらい”のしぐさが特徴的で、ドキドキするほどの美しさです。その美しさから、1797年、ナポレオンがローマに遠征した際、フランス軍により接収され、ルーヴル美術館に収蔵されてしまいました。ナポレオン敗北後はローマに返還され、1834年からカピトリーノ美術館に展示されています。その後は同館から出たことがほとんどなく、今回がなんと2回目とのこと。まさに門外不出の作品です。ちなみに、筆者は数年前にローマを訪れた際、カピトリーノ美術館で本作品を見てきました。八角形の「ヴィーナスの間」に展示されていたのは、本作品だけ。でも、その展示室には特に多くの観光客が集まり、みなさん熱心に鑑賞されていました。そんな美術館の顔ともいえる人気作品を、イタリアから遠く離れた日本に貸してくれるなんて、本当に奇跡。おそらく二度とないチャンスだと思います。見ごたえある絵画も!「永遠の都ローマ展」展示風景続く第3章「美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想」では、カピトリーノ美術館の起源やミケランジェロの広場設計などについて紹介。カンピドリオ広場の設計を担当したミケランジェロのアイデアが伝わる版画作品などを見ることができます。絵画好きな人が特に楽しめるのは、第4章「絵画館コレクション」の展示室。16世紀から18世紀に活躍した画家たちによる見ごたえある油彩画が並んでいます。なかでも、イタリア・バロックの巨匠、ピエトロ・ダ・コルトーナが描いた《教皇ウルバヌス8世の肖像》は必見作のひとつ。教皇が着ている服やレースの質感などが驚くほど緻密に表現されています。「永遠の都ローマ展」展示風景第5章「芸術の都ローマへの憧れ─空想と現実のあわい」では、ナポレオンなどの為政者や多くの芸術家たちを魅了したローマ美術について、版画や模型などで紹介。イタリアの古代建築や風景などを数多く描いた画家、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージによる3メートル近い細密版画《トラヤヌス帝記念柱の正面全景》などが展示されています。最後の「特集展示カピトリーノ美術館と日本」では、カピトリーノ美術館と日本とのつながりを紹介。1873年、明治政府が派遣した岩倉使節団がカピトリーノ美術館を視察し、彼らの経験は日本の博物館政策や美術教育に影響を与えました。意外なつながりを知ることで、よりカピトリーノ美術館が身近に感じられます。レストランとのコラボも!本展の開催を記念して、レストランとのコラボも実施されています。アトレ上野EAST1階にある「ブラッスリー・レカン」では、「永遠の都ローマ展」特別コラボレーションメニューを展開。古代ローマ時代から食されていた食材を使用したり、出品作品からインスピレーションを受けたシェフ特製のオリジナルコースがあったりして、展覧会の余韻にたっぷりひたれそう。「ブラッスリー・レカン」は、上野駅の旧貴賓室を利用した優雅な雰囲気の店内が大人気。おしゃれな空間でおいしい料理を味わいながら、古代ローマの芸術に思いをはせてみるのもよさそうです。「永遠の都ローマ展」の会期は12月10日(日)まで。Information会期:2023年9月16日(土)~12月10日(日)会場:東京都美術館休室日:月曜日開室時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)観覧料:一般¥2,200 、大学生・専門学校生¥1,300 、65歳以上¥1,500※土日・祝日のみ日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2023年11月05日東京・六本木のサントリー美術館で、「激動の時代幕末明治の絵師たち」が開かれています。本展では、近年人気を集めている歌川国芳や河鍋暁斎、「血みどろ絵」で注目されている月岡芳年が手がけた個性的な作品などが集結。学芸員さんのお話や見どころなど、詳しくご紹介!迫力アートが集結!「激動の時代幕末明治の絵師たち」会場入り口※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 316本展では、江戸後期から明治に移り変わる激動の時代に活躍した絵師たちに着目。江戸時代の伝統を受け継ぎながら、洋風の新たな表現なども取り入れた多彩な作品約170件が紹介されています。展覧会を担当されたサントリー美術館学芸員の内田洸さんは、次のように述べています。内田さん江戸後期は、天保の改革や流行り病、地震や災害、黒船来航、討幕運動など混沌とした時代でした。そのなかで、美術の世界では、劇的で迫真的な描写や怪奇的な画風が生まれ、西洋画の画法を本格的に取り入れた作品も出てきました。この時代に活躍した絵師は全国各地にいますが、本展では特に江戸・東京で活躍した絵師たちを特集しています。極彩色のアートからスタート!「激動の時代幕末明治の絵師たち」より、手前:狩野一信「五百羅漢図」百幅のうち六幅嘉永7~文久3年(1854-63)大本山増上寺所蔵【全期間展示】では、おもな見どころをご紹介。「第1章幕末の江戸画壇」では、19世紀の江戸で活躍した絵師たちの作品を展示。会場に入ると、鮮やかな極彩色で描かれた「五百羅漢図」が出迎えてくれます。これは狩野一信が描いたもので、増上寺が所蔵する全百幅のうち、選び抜かれた六幅が展示されています。伝統的な仏画ですが、洋風の陰影表現が取り入れられ、とてもインパクトのある作品です。江戸画壇で中心的な存在だった狩野派は、江戸後期になると、伝統を守るだけでなく、やまと絵や琳派、西洋画法なども幅広く取り入れるようになりました。その門下からは、狩野一信のように、従来の狩野派とは違う独創的な作品を描く絵師も出てきます。また、1章では、幕末の江戸で活躍していた谷文晁(たにぶんちょう1763~1840)一門の作品も展示。弟子のなかのひとり、「蛮社の獄」で捕らえられ、二年後に切腹した渡辺崋山の作品も出品されています。独特な洋風画も!「激動の時代幕末明治の絵師たち」展示風景「第2章幕末の洋風画」では、西洋画法を取り入れた絵師たちの作品を展示。葛飾北斎に学び、独自の洋風表現を確立した安田雷洲(やすだらいしゅう)の肉筆画などを見ることができます。当時の絵師たちについて、内田さんは次のように解説されています。内田さん江戸時代は、鎖国状態で海外の情報は限られていましたが、19世紀になると銅版画や洋書が流入し、陰影法や遠近法を取り入れた多彩な絵が描かれるようになります。当時の絵師たちは、それらを見ながら独特な洋風表現を生み出していきました。人気の国芳作品が登場!「激動の時代幕末明治の絵師たち」フォトスポット「第3章幕末浮世絵の世界」では、人気浮世絵師たちの作品が登場!19世紀になると、浮世絵の世界にも新たなジャンルが出てきます。それまでは役者絵や美人画が中心でしたが、葛飾北斎や歌川広重による名所絵や花鳥画が人気となり、さらに歌川国芳の武者絵も流行。彼らの弟子たちも含めて、多くの絵師たちが活躍しました。会場では、国芳が手がけた三枚続きのワイドな画面で構成された大判錦絵も楽しめます。さらに、国芳の人気作品《相馬の古内裏》がデザインされたフォトスポットもあります!遺体を観察して…「激動の時代幕末明治の絵師たち」より、左から、月岡芳年「風俗三十二相しなやかさう天保年間傾城之風俗」大判錦絵明治21年(1888)サントリー美術館蔵【展示期間:10/11~11/6】、月岡芳年「魁題百撰相菅谷九右ヱ門」大判錦絵慶応4年(1868)町田市立国際版画美術館【展示期間:10/11~11/6】最後の「第4章激動期の絵師」では、幕末明治期の作品を紹介。残酷な流血場面などを描いた「血みどろ絵」で人気を博した月岡芳年や、狩野派で学んだあと幅広い作品を描いた河鍋暁斎、幕臣として鳥羽伏見の戦いに参戦したあと浮世絵師となり、新しいスタイルの浮世絵「光線画」を生み出した小林清親など、近年注目を集める絵師たちの作品が集まっています。月岡芳年の作品について、内田さんは次のように解説。内田さん芳年は、歌川国芳の系譜を受け継ぎながら、幕末から明治に活躍した人です。今回展示している作品「魁題百撰相(かいだいひゃくせんそう)」は、彰義隊と新政府軍との間におこった上野戦争をモチーフにしたシリーズです。現実の戦争を描くことはできないので、歴史上の人物に重ねて表現しています。芳年は、実際に戦争のあと上野を訪れて、遺体が並ぶ様子を観察していたといわれています。12月3日まで開催本展では、作品保護のため、会期中に展示替えが行われます。「出品作品リスト」(PDF)は公式サイトでダウンロード可能。リストで展示期間なども確認できますので、気になる作品があればぜひご活用ください。会期は12月3日(日)まで。Information会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)会期中展示替を行います。休館日:火曜日※11月28日は18時まで開館開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※11月2日(木)、22日(水)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで会場:サントリー美術館観覧料:一般¥1,500 / 大学・高校生¥1,000
2023年10月27日東京・上野にある東京国立博物館 平成館で、特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」が開かれています。本展では、245件もの日本美術の名品が集結。そのうち、7割以上が国宝・重要文化財という大変ゴージャスな展覧会です。見どころや展示風景、グッズ売り場の様子など、詳しくご紹介します!夢のような展覧会!特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 315特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」では、平安時代から室町時代までに制作されたやまと絵の名品、優品を展示。特に、日本絵巻の最高傑作といわれる「四大絵巻」が10月22日まで30年ぶりに東京国立博物館に集結したことが話題となっています。平安時代前期に成立したやまと絵は、平安時代から鎌倉時代頃は日本の人物や風景を描いた作品を指していました。中国由来の唐絵(からえ)や漢画(かんが)との交渉を繰り返しながら、やがてそれぞれの時代の最先端のモードを取り入れ、変化し発展していきました。本展について、東京国立博物館 学芸研究部調査研究課 絵画・彫刻室長の土屋貴裕さんは、次のように述べています。土屋さんやまと絵は、日本の美術史のなかでメインストリームとも呼ぶべき主題。やまと絵の歴史を見ることは、日本美術の歴史そのものを追うことになります。今回は、平安から室町時代までに限ってご紹介しているので、密度の濃い内容になっています。日本美術全集や教科書で見るようなものがほぼそろう、夢のような展覧会です。やまと絵の歴史をざっくり特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、手前は国宝《山水屛風》鎌倉時代・13世紀京都・神護寺所蔵展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)では、見どころをピックアップしてご紹介。最初の「序章伝統と革新―やまと絵の変遷―」では、やまと絵の歴史をざっくりと捉え、屛風作品を中心に展示されています。ここでの必見作は、現存最古のやまと絵屛風といわれる国宝《山水屛風》(京都・神護寺蔵)。美しい山の景色のなかに、日本の貴族や庶民の営みなどが描かれている作品です。この章では、室町時代に描かれた重要文化財《浜松図屛風》(東京国立博物館蔵)も展示。金銀の色彩を使って浜辺と松の絵を描いたダイナミックな作品で、先述の国宝《山水屛風》と比べてみると、やまと絵が時代とともに変化したことがわかります。日本絵巻の最高傑作が登場!特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、国宝《鳥獣戯画》甲巻平安~鎌倉時代・12~13世紀京都・高山寺所蔵展示期間:10月11日(水)~22日(日)続く「第1章やまと絵の成立―平安時代―」では、平安時代末に制作された「四大絵巻」が登場!四大絵巻とは、《源氏物語絵巻》、《信貴山(しぎさん)縁起絵巻》、《伴大納言(ばんだいなごん)絵巻》、《鳥獣戯画》のことで、すべて国宝に指定されています。国宝《源氏物語絵巻》は、愛知・徳川美術館と東京・五島美術館が所蔵。紫式部の「源氏物語」を絵にしたもので、12世紀前半に制作されました。王朝貴族の雅な暮らしが伝わる美しい絵巻物です。国宝《信貴山縁起絵巻》は、平安時代末期作。奈良の信貴山朝護孫子寺が所蔵するもので、信貴山に毘沙門天をまつった僧、命蓮(みょうれん)の奇跡のストーリーを描いた絵巻です。米俵が空を飛んだり、村人たちの動きや表情がユーモラスに描かれていたりして、細部まで楽しめます。東京・出光美術館が所蔵する国宝《伴大納言絵巻》も、平安時代末期作。866年に起きた応天門の放火事件をめぐる物語を描いたもので、応天門が炎上する場面や、火事場に集まってくる人々の姿などが生き生きと描かれています。みんな大好きな国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)は、ウサギやカエルが出てくる甲巻が一番有名。擬人化された動物たちが水遊びをしたり、相撲をとったりする場面などが描かれています。なお、二週間ごとに展示替えがあり、何度も通えば次々と違う場面を楽しむことができます。第1章では、ほかに貴族たちの美意識が込められた美しい調度経本や能書たちによる貴重な書の作品、工芸品なども展示されています。紫式部や妖怪の絵巻も!特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、重要文化財《紫式部日記絵巻断簡》鎌倉時代・13世紀東京国立博物館所蔵「第2章やまと絵の新様―鎌倉時代―」では、鎌倉時代の新しいやまと絵を紹介。武家社会になり、写実的なものも好まれるようになった時代といわれますが、平安時代を懐かしむ作品も見ることができます。ここでの必見作は、来年のNHK大河ドラマで注目を集める紫式部に関する作品です。そのうちのひとつ、重要文化財《紫式部日記絵巻断簡》(東京国立博物館蔵)では、藤原道長と、その娘の彰子などが色彩豊かに描かれ、見ごたえがあります。特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、重要文化財《百鬼夜行絵巻》伝土佐光信筆室町時代・16世紀京都・真珠庵所蔵会期中、展示替えあり「第3章やまと絵の成熟―南北朝・室町時代―」では、成熟期のやまと絵を展示。金銀を使ったキラキラと輝く華やかな作品や、妖怪が出てくるユニークな絵巻《百鬼夜行絵巻》(重要文化財、京都・真珠庵蔵)も楽しめます。「第4章宮廷絵所の系譜」では、天皇の近くで絵を描いていた宮廷絵師の仕事を紹介。さらに「終章やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―」では、桜や柳、田園風景などを描いた美しい作品《日月山水図屛風》(重要文化財、東京国立博物館蔵)をはじめ、室町時代の屛風などが展覧会の最後を華やかに飾ります。長場雄さんとのコラボグッズが超クール!本展は、オリジナルグッズもゴージャスです。特に注目したいのは、人気アーティスト・長場雄さんと展示作品のコラボグッズ。国宝《鳥獣戯画 甲巻》(京都・高山寺蔵)と、重要文化財《土蜘蛛草紙》(東京国立博物館蔵)をモチーフに長場さんが描き下ろしたアートワークがTシャツやトートバッグなどのグッズになって登場しています!長場さんのシンプルな線で描かれた鳥獣戯画のウサギやカエルたちのイラストは、めちゃくちゃクール。ここでしか買えない貴重なグッズです。本展は、12月3日まで開催。一部作品の展示替えや絵巻の場面替えも多いので、ぜひ何度も足を運んでみてください。Information会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)会期中、一部作品の展示替えおよび巻替えあり休館日:月曜日(ただし本展のみ11月27日(月)は開館)開館時間:9時30分~17時00分※金曜・土曜は20時00分まで開館(総合文化展は17時00分閉館、ただし11月3日(金・祝)より、金曜・土曜は19時00分閉館)※最終入場は閉館の60分前まで会場:東京国立博物館 平成館観覧料:一般¥2,100 / 大学生¥1,300 / 高校生¥900 /中学生以下無料※土・日・祝日のみ事前予約制(日時指定)
2023年10月22日東京・江東区にある東京都現代美術館で、「デイヴィッド・ホックニー展」が開かれています。日本で27年ぶりとなる大型個展は、開幕当初から大人気。世界のファンが欲しがる画家公認グッズも注目されています。本展の見どころや会場の様子など、詳しくご紹介!86歳の現役アーティスト!「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年© David Hockney※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 314デイヴィッド・ホックニーは、1937年イングランド北部のブラッドフォード生まれ。86歳の現役アーティストです。ロンドンの王立美術学校を首席で卒業したあとアメリカに拠点を移し、西海岸の陽光あふれる情景を描いて人気を博します。その後、ロンドンやパリ、ロサンゼルスなどで制作を続け、現在はフランスのノルマンディーに拠点をおいて新作を発表しています。世界で高い評価を受けているホックニーは、これまで欧米を中心に大規模な個展を開催。ロンドンのロイヤルアカデミーやパリのポンピドゥー・センターで開かれた展覧会では、来場者がそれぞれ60万人を突破。まさに、現代を代表するスター画家のひとりです。ホックニー作品の特徴について、本展の担当学芸員、楠本愛さんは次のように解説しています。楠本さんホックニーは、具象絵画を中心に制作を続けてきた画家です。目の前の世界をどのように見て、それをどのように描くのか。「見る」と「描く」というのは、絵画において根源的な探求です。また、近年の特徴のひとつは、iPadでの制作です。ホックニーは、2010年のiPad発売後すぐに入手して、制作に使っています。もうひとつの特徴は、デジタル写真を使った作品制作です。本展でも、これらの作品を見ることができます。感動的な花の作品からスタート!「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館、2023年左:《花瓶と花》1969年東京都現代美術館所蔵、右:《NO.118、2020年3月16日「春の到来ノルマンディー2020年」より》2020年作家蔵© David Hockney展覧会は8章構成で、最初の1章は、二つの花の作品からはじまります。ひとつは、東京都現代美術館のコレクション。1969年のエッチング作品で、花瓶に入ったラッパ水仙とその影が描かれています。もうひとつは、2020年にiPadで描かれたラッパ水仙です。この小さな作品を最初に展示した理由について、楠本さんは次のように述べています。楠本さんこれらは、二つの意味において象徴的な作品です。ひとつは、本展のコンセプトとして、ホックニーの60年以上にわたる制作の根底にある一貫性をご紹介したいという思いがありました。彼の作品は、一見するとさまざまな表現、画材、技法を使っていますが、実は描いているモチーフは、目の前にある身近なモノです。ラッパ水仙や親しい友だち、家族や風景など、同じモチーフを異なる表現で描いているのです。そのことをお示しするために、50年前と現在のラッパ水仙の絵を並べて展示しています。もうひとつの意味は、2020年に制作されているという点です。2020年3月、コロナが始まった時期にノルマンディーでこの絵を描き、そのあとすぐオンライン上に作品が公開されました。そのときのヘッドラインが、本展最初の章タイトル「春が来ることを忘れないで」になっています。これは、ホックニーからのメッセージです。当時、毎日不安なニュースが流れるなかで、これからどうなるのか、世界がどうなるのか、とみなが思っていた時期に、非常に鮮やかな色彩で、すっくと伸びる花の絵を描きました。これを見た方々は、非常に励まされたと思います。小さな作品ですが、強い感動を見る人に与えてくれると思います。西海岸の作品は必見!「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館、2023年左:《スプリンクラー》1967年東京都現代美術館所蔵、右:《ビバリーヒルズのシャワーを浴びる男》1964年テート所蔵© David Hockney続く前半の章は、おもに時系列で作品が並び、最近の作品も数点展示されています。ここでの必見作は、《スプリンクラー》。アメリカ西海岸にいる中産階級の日常を描いた作品のひとつです。鮮やかな緑の芝生の上でスプリンクラーが水しぶきを上げている場面を描写した作品ですが、人物は描かれておらず、少しミステリアスな雰囲気も漂っています。ロンドンからアメリカに移住したホックニーは、開放的な西海岸で明るい色彩の作品を次々と生み出し、脚光を浴びます。本作品《スプリンクラー》は、東京都現代美術館が所蔵する作品です。実は、同美術館は1995年の開館に合わせてホックニーの作品をまとめて所蔵し、現在150点ものコレクションがあります。これは国内だけでなく、世界の美術館のなかでも特別なことで、コレクションを通じて作家とも良い関係を構築。1996年にホックニーの版画展を開催し、今回の展覧会は2回目の大型個展となっています。(なお、本展のチケットで見られる「MOTコレクション」展の会場にも、現在ホックニーの作品が展示されています)幅90メートルの絵画も登場!「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館、2023年<春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年>より© David Hockney後半の章では、2000年代以降に制作された作品が紹介されています。近年の作品は、すべて日本初公開。見ごたえある作品がそろっています。後半の必見作、ひとつは<春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年>。2011年冬の終わりから夏のはじめにかけて、移り行く季節を描いたシリーズです。このなかには、iPad作品のほか、油彩で描かれた絵も含まれています。油彩画は、32枚のカンヴァスを組み合わせた大きな絵画で、鮮やかな自然の中に没入できるような迫力ある作品です。「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館、2023年《ノルマンディーの12か月》(部分)2020-2021年作家蔵© David Hockneyもうひとつの見どころは、横幅が90メートルもある風景画《ノルマンディーの12か月》です。長年、東洋の絵巻物に関心を持っていたホックニーは、コロナによるロックダウンが続くなかで身近な自然を見つめ、横長の壮大な絵巻風の作品を完成させました。展覧会のクライマックスを飾るこの大作は、写真撮影もOK。画家が見つめ続けた自然の世界を、ぜひ会場で体感してみてください。公式グッズも大人気!「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館、2023年ホックニー展ショップ© David Hockney本展では、公式グッズも注目されています。ホックニー公認のグッズは、世界でも手に入れるのが難しいといわれているそうです。また、展覧会の公式カタログも、表紙がかわいいと大評判!サイズも手ごろな大きさで、展示作品のほか、ホックニーの対談なども収録されていて、読みごたえがあります。© David Hockney世界のホックニーファンが憧れる各種グッズを、ぜひ特設会場でご覧になってみてください。なお、グッズは品切れになっている場合もありますので、あらかじめご了承ください。Information会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)休館日:月曜日(10/9は開館)、10/10開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)会場:東京都現代美術館企画展示室 1F/3F観覧料:一般¥2,300 / 大学生・専門学校生・65歳以上¥1,600 / 中高生¥1,000 / 小学生以下無料
2023年10月13日東京・上野の東京国立博物館の本館 特別5室で、特別展「京都・南山城の仏像」が開かれています。本展で仏像大使を務めているのは、イラストレーターのみうらじゅんさんと作家・クリエイターのいとうせいこうさん。大人気の展覧会オリジナルグッズを開発したお二人に、グッズ誕生話などを語っていただきました!仏像大使は、みうらじゅんさんといとうせいこうさん!左:いとうせいこうさん、右:みうらじゅんさん【女子的アートナビ】vol. 313特別展「京都・南山城の仏像」では、京都最南部に位置する南山城(みなみやましろ)地域にある浄瑠璃寺(じょうるりじ)や海住山寺(かいじゅうせんじ)、禅定寺(ぜんじょうじ)などに伝わるさまざまな仏像を紹介。平安時代につくられた国宝の《阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち)》や重要文化財の《十一面観音菩薩立像》など、平安から鎌倉時代までの貴重な名作仏像ばかりが集められています。本展で仏像大使を務めるのは、みうらじゅんさんといとうせいこうさん。展覧会のオリジナルグッズも開発されたお二人に、グッズ制作の秘話などを語っていただきました!Tシャツに込められた気持ちは…――今回、5つのグッズを開発されたとのことで、まずは神々しい阿弥陀如来坐像の絵がプリントされたTシャツについて教えてください。みうらさんこれは、僕が最初のグッズ企画会議のとき持ち込んだ絵。頼まれてもいないのに、描いてきたものです。先に開催された奈良国立博物館での展覧会でも、東京のほうでも好評と聞いていますよ(笑)。いとうさんそう、はやっているみたいだよね、みうらさんの絵。男性でも女性でも着やすいデザインだし、みうらさんと僕の後ろ姿も入っているので、宗教色だけにならずいい感じで、ばっちりでしたね。みうらさん絵の左下、“見仏”してるのがいとうさんの後ろ姿だとわかったうえで着ると、また気持ちが上がるんじゃないかな?いとうさんえ!?(笑)。どういうこと?みうらさんつまり、Tシャツを着ている人々のお腹のあたりにいとうさんがいるわけで、効力として胃腸を守ってくれてるわけで(笑)。いとうさんなるほど(笑)。ある種のおめでたさと、みなさんの健康を祈るという気持ちが入ったTシャツなんですね。爆売れ「おくすり手帳」誕生秘話――薬師如来坐像が表紙にデザインされたおくすり手帳も、奈良博のときに数千冊も売れたそうで、ネットでも話題になっていました。この企画は、どんなきっかけで生まれたのですか?いとうさん二人でやっている自主ラジオ番組の『ラジオご歓談!』で、あるとき、おくすり手帳の話になったんだよね。この「おくすり手帳」という名前自体が、妙齢の自分たちにはこそばゆい感じがした、とかそんな話になって。みうらさんそうそう。既製のものはいろいろあるけど、僕らが使えそうなグッとくるおくすり手帳がない。ちょうど展覧会にも薬師如来の仏像がお出ましだから、そりゃ薬師如来のおくすり手帳が欲しいよ、とね。いとうさん薬師如来は、手に薬壺を持っていて、そのなかに誰でも治せる万能の薬が入っている、というのが昔から伝わる信仰なんですよ。それで、ラジオでおくすり手帳の話をしたあと、薬剤師の人がメールをくれて、おくすり手帳のデザインに決まりはない、と教えてくれたんですよ。みうらさんだってね。だったら自由につくれると思ったんだよね。薬剤師さんも納得のデザインだと自負しています(笑)。いとうさん 誰でも使うものだから。家族みんなが必要ですよね。みうらさんこれなら、“見仏”の旅にも持っていけますね。急に病気になったとき、便利ですよ。朱印帳代わりにはなりませんが、このお弁当についているシール、ちょっとかわいいな、と思ったら、貼ってもいいですよね、思い出として。いとうさん思い出はやめてください(笑)。それは、高校生の女の子がやるようなものでしょ。これは薬剤師さんが見るものだから、違うシールが貼ってあったら困りますよ。みうらさん承知しました(笑)。お薬のシールだけにしてください。いとうさんでも、本当におくすり手帳は大好評だね。今後、おくすり手帳のマーケットを変える可能性がある商品でしたよね。みうらさん僕ら、仏像大使ではなく、結局グッズ大使ですからね(笑)。牛頭天王キャップのこだわりポイント――牛頭天王のワッペンがついたキャップも、人気があるそうですね。いとうさん当初から、牛頭天王を使いたいと思っていて。牛頭は、あやしい力を持つので、ぜひキャップにつけたいという想いが強くあったし、みうらさんはGOZUという文字を入れたいというこだわりがあったよね。みうらさんそう、ヘビーメタル感を入れたかったもんで(笑)。そもそも、キャップだけでも高いですから。お得だと思いますね、GOZUキャップ。いとうさん高いから、そんなに売れないと思っていたら、奈良では売り切れていたんだよね。みうらさんだってね。世の中、変わりましたね(笑)。ずいぶん前から、展覧会のグッズ企画を出してきましたけどね。僕ら下町ロケットはさ。いとうさん下町ロケット!?(笑)みうらさんいやいや、仏像ロケットですか(笑)。なかなかヒットは飛ばせなかったけど、今回は、こんな宣伝までさせてもらって本当、ありがたいですね。アクリルスタンドの使い方は…――不動明王立像のアクリルスタンドも、奈良では一時完売になったそうですね。いとうさんアクリルスタンドの時代がきていますね。この不動明王は、神童寺にあるもので、僕の“推し仏”のひとつです。不動明王は、邪悪なものに打ち勝つ炎を後ろに背負っています。このお寺の不動は、一般的なスタイルと少し異なり、童子のように膝小僧を出していて、昔、そのあたりを走っていた村の小僧のような雰囲気があるのです。これがアクリルスタンドになって、売れているのがうれしいですね。みうらさんこのアクリルスタンド、おしゃれなスイーツと一緒に写真を撮るといいですよ。僕、この前、はじめておしゃれなカキ氷を食べて、それがメロン1個まるごと入っているような感じで、まるで仏様の螺髪(らほつ)みたな状態でメロンが載っていて。このアクリルスタンドと一緒に写真を撮ってインスタに乗せるといいなぁって思いました(笑)。あとは、手のひらに収まるちょうどいい大きさだから、JRの改札もこれをピッとすれば通れるんじゃないかな?いとうさんSuicaじゃないですから(笑)。十一面観音の見分け方は…――定番グッズの光仏シリーズ、今回は十一面観音が光る仏様になっています。いとうさん光仏シリーズは、電気を消すと仏の姿が浮かび上がるのですが、今回はペンになっています。光る十一面観音が導いてくれます。みうらさん十一面観音は、頭に十の面がついていて、手には水瓶(すいびょう)を持っておられます。もし、街で水瓶を持っている人を見かけたら、「あっ、十一面観音だ!」と思いがちですが、違いますから(笑)。いとうさんそれは、ただ水瓶を持っている人なんですね(笑)。みうらさんですね。いとうさんじゃあ、もし、その人の頭上に十のお面がついていたら?みうらさんそれは、確実に十一面観音です。現世にお出ましになられたということになります。いとうさん救いがあるということですね(笑)。とにかく見てください!――最後に、仏像初心者の人に向けて、この展覧会の楽しみ方を教えていただけますか。いとうさん初心者の方は、仏像について、いろいろ知らなければとプレッシャーに感じるかもしれませんが、それは取り払って、とにかく見てください。仏像って、訳がわからないんですよ。なんで頭の上にたくさん顔があるんだろう、なんで手が千本もあるんだろうって、そのことにいちいち驚けばいいと思うのです。驚いてショックを受けたあと、本を読んでみてもいいし、千本もある手がすごいなと悪夢を見てもいい。美術として驚き続けることもできますし、信仰の気持ちがあってもいい。美術と信仰、片方でも両方でもいいんです。みうらさんこの展覧会のメインは、浄瑠璃寺の阿弥陀如来坐像です。今回、その仏像の修復が終わったことを記念して展覧会が開かれています。東京には一体が展示されていますが、実際現地に行くと、九体の阿弥陀如来が横並びにずらりと、ロイヤルストレートフラッシュ状態におられます。だから、この展覧会を見られた方は、ぜひ浄瑠璃寺に足を運んで、お堂ごと体感してほしいですね。おすすめです。――ありがとうございました!仏像大使は音声ガイドにもゲスト出演!仏友同士であるお二人のトーク、いかがでしたか。難しそうな仏像の話も、お二人が語ると身近で親しみやすく感じられます。本展の音声ガイドでも、みうらさんといとうさんの仏像トークを楽しめます。(音声ガイドナビゲーターは、俳優・タレントの横山由依さんです!)ぜひ、音声ガイドを聴きながら展覧会を楽しみ、見終わったあとはオリジナルグッズもご覧になってみてください。Information会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)会場:東京国立博物館本館特別5室開館時間:9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)※11月3日(金・祝)、4日(土)、10日(金)、11日(土)は19時00分時まで休館日:月曜日、10月10日(火)※10月9日(月・祝)は開館観覧料:一般 ¥1,500、大学生 ¥800、高校生 ¥500※本展は事前予約不要です
2023年10月08日東京・六本木にある国立新美術館で、「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」がはじまりました。本展の音声ガイドナビゲーターは、声優・俳優の津田健次郎さん。今回、サンローランの服をステキに着こなされた津田さんに、展覧会のご感想やファッションのことなど、お聞きしてきました!津田健次郎さんが音声ガイドに!津田健次郎さん【女子的アートナビ】vol. 312本展は、“モードの帝王”と呼ばれ、ファッション界の第一線で活躍してきた天才デザイナー、イヴ・サンローラン(1936-2008)の没後日本ではじめて開催される大回顧展です。1958年、21歳の若さでディオールのデザイナーとしてデビューしたイヴ・サンローランは、1962年に自身のブランドを発表。2002年に引退するまで、世界のトップデザイナーとして走り続けました。彼の40年にわたる活動を、ルック110体を中心に、アクセサリーやドローイング、写真も含めた262点で紹介。イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を受けて開催される、眼福かつゴージャスな展覧会です。本展の音声ガイドナビゲーターを務めるのは、津田健次郎さん。本展の内覧会に登壇した津田さんにインタビューも行い、展覧会やファッションのことなど、いろいろお聞きしてきました!尖ったぶっ飛んだスタイルも!――まず、サンローランの服がとてもお似合いですね。着られてみて、いかがですか?津田さんスタイリッシュな感じがします。それに、ラインがきれいです。前から、サンローランはラインがきれいだと思っていましたが、着ると改めて実感しました。スタイルをよく見せてくれる洋服だと思います。――今回の展覧会をご覧になって、全体のご感想を教えていただけますか。津田さんすごくバリエーションが豊かです。12章立てになっているのですが、章ごとに雰囲気が違い、本当に豊かな世界が広がっているのです。現代でも着られるような洋服もかなり展示されていて、1点1点とてもステキでしたね。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――お気に入りのルックはありましたか?津田さん展覧会のポスターにもなっている、モンドリアンの絵をモチーフにした作品は、かっこいいなと思いました。イヴ・サンローランのアートシリーズは、ほかにもゴッホなど芸術家の作品からインスピレーションを得て、再構築して洋服にされたものがあり、彼はアレンジャーとしてもすばらしい方だと思いました。また、男性のタキシードをアレンジして女性バージョンにしたものとか、その隣にあったジャンプスーツとかも本当にすばらしいと思います。尖ったぶっ飛んだスタイルもたくさんあり、楽しかったですね。「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション――ぶっ飛んだスタイルというのは、どのルックですか?津田さんマトリョーシカからインスピレーションを受けたウエディング・ガウンです。インスピレーションが爆発しているな、と感じました。かわいいのだけれど、きれいでもあるし、恐ろしく手が込んでいます。あのデザインを思いついて、本当に服にしてしまうというのがすごいし、パンチ力がありますね。ファッションは、商業ベースに絶対に乗せていかなければならない世界。彼は、商業思考の脳みそを持ちつつ、芸術家でもあり、このバランスが、いわゆる画家などのアーティストとはまた違う部分なのかな、と思います。また、彼は、フランスを中心としたファッション界でオートクチュール(仕立服)を成功させただけでなく、アメリカの大量消費社会でプレタポルテ(既製服)も受け入れられました。ヨーロッパだけでなくアメリカでも受け入れられたというのが、彼のすごいところのひとつだと思います。もうリスペクトしかない…――音声ガイドを担当されていますが、おすすめポイントはありますか。津田さん音声ガイドは、ナレーションがメインのものが多いですが、今回のガイドはナレーションだけでなく、サンローランの名言も出てきます。そこは声の雰囲気を変えているので、ぜひ多くの方に聴いていただきたいですね。まず、作品を見て、ご自分のインスピレーションでいろいろ感じていただいて、そのうえで作品にまつわる音声ガイドを聴いていただけると、また情報量が増えて、世界が深くなったりするので、その順番がおすすめです。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――音声ガイドで、イヴ・サンローランの人生にも触れられていますが、彼の生き方についてはどう思われましたか。津田さん21歳でディオールを継ぐ、というのは驚異的だと思います。それで自身のメゾンを開いて、すごいスピードでファッション界に躍り出る。彼の才能が開花するスピードに衝撃を受けました。華やかな世界で、華やかな作品をたくさん世に生み出して、しかもトレンドの最前線で戦っていた人ですが、この方はめちゃくちゃ静かな方なのではないか、と音声ガイドをしていて思いました。恐ろしくナイーブな方なのだな、と。本展でも、「想像上の旅」という章がありますが、彼は頭の中で旅をするという作業が一番好きで、それがクリエイティブの根源にあったのではないかな、と思いました。あとは、ご本人がかっこいい。スーツとメガネが本当にステキですよね。あのメガネ売っていないかな(笑)買いたくなっています。――イヴ・サンローランは、仕事に対して完璧主義だったと伝わっていますが、その姿勢についてはどう思われますか?津田さんもう、リスペクトしかないですね。そこまで到達できる表現者は、やはりなかなかいないと思います。まずは、そういう仕事の環境を獲得できるのがすごいことです。あとは、尽きない情熱。最後の最後まで追い込んでいく、という姿勢です。特にファッションは、ひとりの作業でつくれるものではないので、職人さんとともに、もしくはカンパニーとして、ひとつひとつの洋服を本当に極限まで追い込んでつくっていく。その姿勢と、折れない表現の力、強い信念、すごく学ぶべきものがありますよね。今回、音声ガイドの仕事で彼のことを詳しく知り、今日、実際に作品を見せていただいて、「すごいっ!」とひれ伏したくなりました。表現というものは、時代とともについえていくものでもあるのですが、サンローランの服は残る気がします。地域や時代を超えて、残っていくすごみを感じました。感動して拍手したくなる「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――今回はファッションの展覧会ですが、アートの展覧会などにも行かれますか。津田さん芝居の仕事をするなかで、できるだけ自分のなかから出てくる独自のものを表現していきたいと思っているので、いろいろインプットするように心がけています。そのひとつが、美術館に行くことです。――どんな美術展に行かれましたか?津田さん今年は、マティスやシーレ、佐伯祐三などの展覧会に行きました。どれもすばらしかったですね。例えば、マティスは表現を突き詰めていった末、晩年に切り絵のスタイルになりますが、その切り絵が超ハッピーな感じなのです。おじいちゃんになって、新たにドーンと飛び出したような感じで。そんなポップな切り絵を展示室で見たとき、本当に感動して、拍手喝さいしたくなりました。ブラボーで、スタンディングオベーションしたくなるほどの気持ちでした。その後、最晩年にマティスはロザリオ礼拝堂の設計を手がけますが、切り絵で爆発したポップが教会のデザインに着地していくのです。美術館に行くと、キュレーターさんの想いも伝わり、それらも含めてすごく感動します。――津田さんの感動が伝わってきます。ほかにも、記憶に残る展覧会はありますか?津田さん以前見たゲルハルト・リヒター展は、特にすごかったです。なかでも、《ビルケナウ》という有名な絵がある展示空間は、本当にすばらしかったです。展示室内に4つの絵画作品が並び、その作品の複製が向かいに並び、その横には横長の鏡の作品があり、鏡の反対側にはアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の写真があるのです。この空間自体がアートだな、と思いました。現代美術というのは、どんな角度で物事をとらえるのかが大事だと思うのですが、その部分をリヒターの作品で深く体験できました。リヒターという作家は幅が広くて、手法をどんどん変えいくのです。自分がやってきたものが膠着しそうになると、また技法を変えて試していく。絵画とは、アートとは何か、という彼の表現に対する恐ろしいほどの探究心に圧倒されました。――ありがとうございます。では、最後に、展覧会に来られる方にメッセージをお願いいたします。津田さん今回の「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」、本当に写真だけでは伝わらない作品が多数ありますので、ぜひ実物を見に来ていただけたらと思います。刺繍やスパンコールのすごさとかも実物を見ていただきたいですし、超一流の職人さんが一年がかりでつくっている作品もあります。そして、ぜひ音声ガイドとともにご覧いただけたらうれしいです。――ありがとうございました!取材を終えて…上品なサンローランのスーツがとてもお似合いだった津田さん。イヴ・サンローランの才能や、好きなアートについて語るときの熱量が非常に高く、表現者としてさまざまな人や作品をリスペクトされているお姿に感銘を受けました。そんな津田さんの美しく魅力的なボイスがたっぷり聴ける音声ガイドとともに、展覧会を楽しんでみてください。©︎ Musée Yves Saint Laurent ParisInformation会期:~2023年12月11日(月)休館日:毎週火曜日会場:国立新美術館企画展示室1E時間:10:00〜18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,300大学生¥1,500高校生¥900音声ガイド貸出価格:¥650(税込)※お一人様一台につき
2023年10月07日東京・上野の森美術館で10月20日から「モネ 連作の情景」がはじまります。本展のナビゲーターは、俳優の芳根京子さん。今回、モネゆかりの地フランスを訪れた芳根さんに、モネやアートの魅力について、語っていただきました!芳根京子さんがナビゲーター!芳根京子さん【女子的アートナビ】vol. 311印象派の巨匠、クロード・モネ(1840-1926)の人生に影響を与えた第1回印象派展が開かれたのは1874年。それから150年の節目を迎えることを記念して開かれる「モネ 連作の情景」では、フランスやアメリカ、ドイツなど世界各地や日本の美術館などからセレクトされた代表作60点以上が展示されます。本展では、特にモネの「連作絵画」にスポットをあてて紹介。同じ場所やモティーフを異なる時間や季節で描いた「連作」という表現手法は、画家の代名詞にもなっています。有名な〈睡蓮〉や〈積みわら〉をはじめ、ノルマンディー地方の景勝地〈エトルタ〉などの作品も展示される予定。初来日作品もあり、新たなモネの世界を発見できる展覧会になりそうです。そんな芸術の秋にぴったりの展覧会でナビゲーターを務めるのが、俳優の芳根京子さん。本展の記者発表会に登壇した芳根さんにインタビューも行い、モネやフランス旅のことなど、いろいろお聞きしてきました!私で大丈夫かな、と…クロード・モネ《睡蓮の池》1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション © Hasso Plattner Collection――まず、ナビゲーターに就任されたご感想を教えてください。芳根さんアートはそれほど詳しくないので、私で大丈夫かな、と思いました。でも、母が美大出身なので、母と一緒に美術館に行く機会はこれまで何度もありました。「アートをもっと知りたい」という気持ちはあったので、このお仕事に飛び込ませていただきました。私のようにアートに詳しくないけど興味がある、という方などが、今回の展覧会に足を運ぶきっかけになったらうれしいです。――この夏、本展特別番組撮影のためフランスに訪れたそうですね。どんな場所に行かれましたか?芳根さんモネの故郷であるフランスで、彼の人生をたどる旅をしてきました。モネが見てきた世界、描いてきた景色や作品も見ましたし、後半生を過ごした自宅も訪れました。――フランスでご覧になったモネの作品で、印象に残っているものはありますか?芳根さんインパクトが強かったのは、オランジュリー美術館にあった睡蓮の作品です。360度モネの作品に囲まれるので、ステキでした。また、ずっと見入ってしまった作品は、マルモッタン美術館にあった《印象、日の出》です。本物の景色を見ているような不思議な気持ちになり、ずっと見ていられる感じでした。実際に、モネが見たであろうリアルな日の出もル・アーヴルで見せていただいたのですが、その場所は特に印象的な建物があるわけではなく、きれいな日の出が見やすい場所でした。モネは、そんな日常の自然の景色を魅力的に切り取る力が高かったのだな、と感じました。まさか私の人生で行けるとは…――モネは日本好きとしても知られていますが、今回の訪問で日本を感じられる場所はありましたか?芳根さんモネが後半生に住んでいたジヴェルニーの家を訪問したとき、家の中に浮世絵がたくさん飾られていました。また、庭には日本風の橋がかかっていて、全体的に「和」を感じました。その庭園は、派手ではないけれど美しさがあり、モネは日本のことがお好きだったのだな、と感じました。――日本とは遠く離れたフランスで、日本を感じられる庭園をご覧になっていかがでしたか。芳根さんすごくうれしかったです。モネの庭は、アートについて詳しくない私でも知っているような場所でしたが、まさか私の人生で行けるとは思っていませんでした。そこでは、庭を手入れされている庭師の方ともお話をさせていただいたのですが、高知にある「モネの庭」にも関わっていらっしゃると聞いたので、さっそく高知行きの飛行機を予約しました(笑)。「モネの黒」を見てみたいクロード・モネ《昼食》1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cm シュテーデル美術館© Städel Museum, Frankfurt am Main――今回の展覧会で、注目している作品はありますか?芳根さんフランスで睡蓮の池を見てきたので、やはり睡蓮の作品です。国内外から集められた睡蓮の絵がまとめて見られるというので、とても楽しみです。また、今回はじめてフランスに行ったので、パリの街並みを描いた作品も見てみたいです。実際にパリを見てから絵を見ると、「そうそう、パリはこんな感じ」と思えそう(笑)。あとは、初来日の《昼食》も楽しみです。モネが黒い色を使うのは珍しいそうなので、「モネの黒」を自分の目で見たいです。――モネ作品、どんなところがお好きですか?芳根さん光もすばらしいと思いますが、五感で楽しめる絵のような感じがします。実際に、そんなことないのですが、絵から香りがするような気がするのです。また、絵によってそこに流れている空気が違う気がして、体験型みたいな、目だけではない楽しみ方があるなと思いました。――展覧会では音声ガイドも担当されます。これから収録があるそうですが、意気込みを教えてください。芳根さん音声ガイド収録ははじめてなので、とにかく絵を見ている方のお邪魔にならないよう、寄り添えるものになるよう心掛けたいと思います。またモネにあまり触れたことがない方も、モネの絵を見て音声ガイドを聴いて、「モネ好きだな」と思ってもらえたらうれしいです。実際にフランスに行く前と行った後では、モネに対する思いが本当に違うので、そんな私だから表現できる音声ガイドになればと思います。モネに親近感――モネの人生は平坦ではなく、いろいろあって一流の画家になっていきますが、そんな彼の人生をどう思いますか?芳根さんモネは、一人前の画家になるために、悩んで葛藤して、いろいろなものを乗り越えてきました。ただの天才ではなく、ちゃんと悩んで前に進んだ人なのだなと思い、同じ人間のような感じがしてホッとしますし、親近感がわきます。あれだけの作品を生み出しているので、自信家であってもおかしくないと思うのですが、そうではなく、人間味があります。目を患いながらも絵を描き続け、傑作を生み出しているというのがすごいです。――ちなみに、モネは美食家としても知られていますが、芳根さんがフランスで食べて印象に残っているものはありますか?芳根さん毎日食べていたのは生ハムでした。朝からホテルで食べて、昼も夜も食べて(笑)。もともと生ハムは好きでしたけれど、これほど毎日3食全部食べていたのは、本当においしかったからだと思います。全然飽きないのです(笑)。フランスらしいお料理では、ガレットもよかったです。母に解説してあげたい――あまりアートに詳しくないと仰っていましたが、今回のお仕事で何か変わりましたか?芳根さん今まで、アートは知識がないと楽しめないのかな、と自分の中で勝手にハードルを上げてしまう部分があったのですが、このお仕事をきっかけに母と美術館回りをはじめ、フランスに行く前に、はじめて「一人美術館デビュー」もしました。――どの美術館で、デビューされたのですか?芳根さんちょうど松岡美術館(東京・港区)で印象派の展覧会が開かれていたので、チャンスだと思って駆け込みました。とてもよかったです。事前に、モネは光に注目するといいと教わったので、その点を意識して見てきました。何かに注目してアートを見るという経験が、これほど楽しいとは思わなかったです。記念にポストカードも買いました。――お母様は美大出身ですので、ご一緒に美術館に行かれるときは、お母様が作品解説をしてくれるのですか?芳根さん母もそんなに詳しいわけではないのです。きっと、モネに関しては私のほうが詳しいと思います(笑)。母も父も、「モネ 連作の情景」に行きたいといっていて、一回目に行くときは音声ガイドを聴いて、二回目は私を連れて行きたいと話していたので、そのときは隣で解説してあげるね、といいました(笑)。今回、モネのことを集中して学びましたが、とても楽しくて。一気にアートのことをすべて知ろうとすると、範囲が広すぎて難しいと思いますが、美術館にあまりご縁がない方でも、モネは入りやすくて飛び込みやすい世界かなと思います。――では、最後に展覧会を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。芳根さん私もアートは難しいのかな、と思い込んでいたのですが、全然そんなことはなくて、絵を見たときにあふれてくる感情に間違いはないし、否定されることはないと今回のフランス旅で思いました。絵を見ているだけで、パワーやエネルギーがダイレクトに感じられて、4日間のフランス旅でしたが、人生が豊かになった気持ちになりました。今までモネに触れたことがなかった方も、音声ガイドでサポートさせてもらうので、安心して足を運んでいただけたらと思います。今回は、世界中からモネの作品だけが集められた「100%モネ」の展覧会になっていますので、モネが好きな方、美術館やアートが好きな方も、絶対楽しめる展覧会になっていると思います。ぜひ、みなさんもお越しください。――いろいろお話しいただき、ありがとうございました!取材を終えて…キラキラと目を輝かせて、モネやフランス旅のことを楽しそうに語ってくれた芳根さん。ナビゲーターのお仕事をきっかけに、モネやアートに興味をもち、とても多くのことを学ばれて努力しているお姿にも感動しました。芳根さんのモネへの愛が100%詰まったものになりそうな音声ガイドも、聴くのが楽しみです。なお、芳根さんが出演される「モネ 連作の情景」の特別番組は、11月11日(土)にフジテレビ(関東ローカル)で放送される予定。展覧会とあわせて、こちらもご覧ください。Information会期2023年10月20日(金)〜2024年1月28日(日)会場上野の森美術館時間9:00〜17:00金・土・祝日は〜19:00※入館は閉館の30分前まで休館日2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)入館料日時指定予約推奨平日(月〜金)一般 ¥2,800/大学・専門学校・高校生 ¥1,600/中学・小学生 ¥1,000土・日・祝日一般 ¥3,000/大学・専門学校・高校生 ¥1,800/中学・小学生 ¥1,200※会期中は、上野の森美術館チケット窓口にて当日券を販売。混雑時は入場をお待ちいただく場合がございます。※本展は大阪に巡回します。【大阪展】2024年2月10日(土)~2024年5月6日(月・休)大阪中之島美術館※東京展と大阪展は一部展示作品が異なります。
2023年09月24日東京都現代美術館で、5人の作家による展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」が開かれています。ユニークなタイトルですが、いったいどんな展覧会なのでしょう?作家さんたちのお話を聴いてきましたので、レポートします!共感しなくてもいい展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」展示室入り口※本記事の写真はプレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 310東京都現代美術館では、例年夏休みの子どもたちに向けてさまざまな展覧会を開催しています。現在開かれている「あ、共感とかじゃなくて。」は、少し大きくなった子どもたちを対象にした企画。東京都現代美術館学芸員の八巻香澄さんは、本展の趣旨について次のように教えてくれました。八巻さん友だちや家族との関係に息苦しさを感じはじめている子どもたちに向けて、共感しなくてもいいんだよ、あなたの気持ちを大事にしていいんだよ、という想いをこめて作った展覧会です。大人のみなさんも、ご覧になって元気になっていただけたらと思います。答えが見つからない作品有川滋男さん本展は、5人の作家による展覧会です。お一人ずつ、ご自分の作品について解説してくれましたので、ご紹介していきます。まずは、映像作家の有川滋男さん。有川さんの展示コーナーでは、おもに映像作品を見ることができます。例えば、《ディープリバー》という作品では、何かの仕事をする女性たちの様子が流れていますが、何をしているのか、映像を見続けていてもよく理解できません。今回の作品について、有川さんは次のように説明されています。有川さん今回の展示は、「架空の仕事シリーズ」から出しています。この名前のとおり、実際にはありえない、非現実的、非合理的な職業や仕事、そこで働く人に関する作品で、映像を最初から最後まで見ても、どんな仕事なのか、なんの目的なのか、どんな人が働いているのか、わからないようになっています。私は、目の前にある作品を人々がどう見るか、どう解釈して、どう捉えるかに興味関心があります。見る人によって捉えかたは千差万別。見る人の社会的背景、年収、言葉、性別、宗教、見るときの気分によっても見方は変わります。自分がもつ固定観念により判断し、答えを出そうとするはずです。私の作品では、「答えが見つからない・判断できない・解釈しづらい」という状態で見続けてもらうことを促しています。想像力を働かせてもらえるような作品を目指して制作しています。コロナ禍で情報が加速度的に錯綜し、ステレオタイプで判断し、偏見をもって物事をとらえることも増えてきました。それを回避するためには想像力が必要不可欠です。この展示で、想像力を喚起できればうれしいです。巨人伝説に魅了され…山本麻紀子さん次にご紹介するのは、アーティストの山本麻紀子さん。落とし物をひろうのが得意という山本さんは、巨人の落とし物の大きな歯をつくったり、植物を染料として絵を描いたりされています。靴を脱いで入ることができる展示室で、山本さんが作品について語ってくれました。山本さんこの展示室の空間は、アトリエのある滋賀県の家を再現しています。私のなかには、「巨人・落とし物・植物」という3つのテーマがあります。巨人というのは、2012年から巨人伝説に魅了され、それから私は巨人を追いかけています。また、ふだん活動しているのは、京都駅のすぐ近くにある被差別の歴史をもつ地域です。そこのコミュニティに入り、外国籍の方なども含めた地域の方々と関わり、そのなかで感じたり思ったりしていることなどを作品にしています。そこでは植物にも出合えて、観察したり描いたりしています。展示室の空気感、モノとモノの関係性など、何かしら感じていただけたらうれしいです。美術館に来られる人は特権性がある渡辺篤さん(アイムヒア プロジェクト)の作品《Your moon》2021年続いての展示室では、かなり暗い空間に作品が展示されています。現代美術家で「アイムヒア プロジェクト」を主宰している渡辺篤さんが、作品について解説してくれました。渡辺さん私のキャリアは特徴的で、足掛け3年引きこもりして、そこから社会復帰しました。今回の展示室では、実際に引きこもりをしている人たちが自身の部屋を撮影した作品や、コロナ禍のときに開始した、同じ月を見て写真を撮るプロジェクトの作品などを紹介しています。月の写真は、引きこもりに限らず、「孤立を感じている人々」という条件で参加者を募集して、国内外さまざまな方にスマホにつける望遠鏡を送り、写真を撮ってもらいました。約50名のメンバーたちが日々送ってくれた写真をライトボックスにして展示しています。私がいくつかのプロジェクトをとおして大事にしているのは、美術館に来られる人と作品を共有し、喜びを分かち合い、楽しむということ。そして、ここにいない人のことを常に忘れないこと。ここに来られる人は、特権性があります。コロナを通じて私たちが知ったのは、ここに来られない人、出られない人がいるということ。コロナが終わっても、引きこもりや障害をもっていて、ずっと出られない人もいます。その人たちがいる同じ社会で我々は生きているということを、この場所で、作品を通して一緒に考えてもらえたらと思っています。教科書カフェ武田力さん次の展示室では、演出家で民俗芸能アーカイバーの武田力さんの作品を見ることができます。武田さんの作品は、《朽木古屋六斎念仏踊り継承プロジェクト》と、《教科書カフェ》の二つ。武田さん日本の集落には、何百年も前から伝わる芸能があります。お盆の時期、集落に帰ってくる祖霊たちに向けた儀式として行われている民俗芸能などですが、地域の人口が年々減少して継承が難しくなり、どうやって継いでいくことができるのか、というのが問題になっています。なんとか、この芸能を継承してほしいということで、ぼくらアーティストに声がかかりました。会場では、2016年に継承が復活したときの映像を流しています。また、《教科書カフェ》という移動図書館のような車には、戦後から平成までの小学校のときの教科書が置いてあります。寄贈いただいたもので、名前が書いてあったりもします。実際に教科書を手にとって、ここに座って読んでみてください。ぼくも、毎日ではないですが、ときどきここに来ていますので、みなさんと交流できたらと思っています。壁を鑑賞!?中島伽耶子さんの作品《we are talking through the yellow wall》展示風景最後は、アーティストの中島伽耶子(なかしまかやこ)さんの作品《we are talking through the yellow wall》。黄色い大きな壁が、明るい部屋と暗い部屋を隔てています。中島さんこの壁は石の壁を突き抜けて、隣の小さな展示室を明るい部屋と暗い部屋に分断しています。この壁を鑑賞してみてください。壁や境界、こちら側と向こう側の違いというのは、目には見えなくても人と人がコミュニケーションする時には必ず存在しています。また、すれ違いや意識のずれなどもあります。それを実際に壁を立てることで表そうとしています。展示室にあるリアルな壁にはスイッチや穴があり、壁の向こう側を想像できます。誰かいそうな感じがして、こちらのリアクションが相手に伝わるような、クリアではないけど向こう側を意識できる状態を作品にしてみました。でも、壁のこちら側と向こう側で受けとれる情報が違うことを体感できると思います。11月5日まで開催不思議な映像を見たり、巨人の落とし物を触ったり、月の写真や昔の教科書、壁を眺めたりと、ひとつの展覧会でさまざまな体験ができます。共感も理解も求められていないので、気楽に楽しめると思いますが、私の場合、全体を見終わったあと、何かいつもと違う部分の感覚が刺激を受け、フシギな感覚に陥りました。何回か足を運んでみたくなる、そんな展覧会です。本展は11月5日まで開催。Information会 期:~11月5日(日)会 場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)休 館 日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10観覧料:一般¥1,300大学・専門学生・65歳以上¥900中高生¥500小学生以下無料
2023年09月01日静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」が開かれています。本展では、静嘉堂文庫美術館が所蔵する仏教美術の名品を一挙に公開。冥界や地獄の様子などを描いた作品が展示されています。“あの世”に行く前に、ぜひ見ておきたい展覧会をご紹介!「地獄の十王」をイッキ見!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示室入り口※本記事の写真はプレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 309「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」では、静嘉堂文庫美術館が所蔵するコレクションのなかから、仏教美術の名品を紹介。「十王図・二使者図」と「地蔵菩薩十王図」全13幅を一挙に展示するほか、江戸絵画の人気作品や円山応挙の《江口君図》、おなじみの国宝《曜変天目(稲葉天目)》も出品。重要文化財や重要美術品なども含まれた、見ごたえある展覧会です。企画を担当された静嘉堂文庫美術館学芸員の吉田恵理さんは、次のように解説してくれました。吉田さん当館が所蔵する仏画は、質が高く珍しい作品があるのが特徴です。静嘉堂の創設者・岩﨑彌之助は、明治時代、廃仏毀釈などによる文化財の海外流出や、散逸を憂い、仏教美術も集めていました。中国や朝鮮半島、そして日本の仏画もコレクションに含まれています。本展では、今回はじめて十王図をまとめて展示しましたので、ぜひ味わってみてください。意外に楽しい!?冥界ツアー河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》より「田鶴の臨終」明治2年(1869)では、各展示室の見どころをいくつかご紹介。第一章「極楽浄土への招待」では、中国、朝鮮半島、日本のさまざまな仏画などを展示。ここでの見どころは、河鍋暁斎の作品《地獄極楽めぐり図》のうち「田鶴の臨終」です。この作品は、日本橋の小間物問屋である勝田五兵衛の娘・田鶴を供養するため、暁斎が描いたもの。勝田は暁斎のパトロンでした。展示されている場面は、14歳で亡くなった田鶴を、阿弥陀三尊が迎えにきたところ。この後、田鶴は地蔵や弘法大師をお供にして冥界ツアーに出かけます。地獄を見物したり、閻魔大王と宴会したりとさまざまな場面が登場。作品の隣に複製が置いてあるので、暁斎が描いた冥界ツアーを自分の手でめくりながら楽しめます。石臼で砕かれる残酷場面も…!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示風景第二章「地獄の十王ここにあり」では、本展のハイライトである十王図が勢ぞろい!十王とは、人が亡くなったあとに行く冥界にいる裁判官のこと。亡くなった人は、冥界の十王によって現世の罪を裁かれ、その後どこに行くのか、何に生まれ変わるのかが決まります。有名な閻魔大王も十王のひとりです。「十王図」の見どころについて、吉田さんは次のように解説してくれました。吉田さん十王図では、王が堂々と大きく配置され、手前には、裁きを受ける亡くなった人が描かれています。亡くなった人が、少しでも良い場所に行けるよう、縁者が王に仏像や掛け軸などを持参する様子もたくさん描かれています。功徳を積んでください、とアピールをする意味も含まれていると思います。また、石臼で砕かれる人を描いた残酷な場面もあり、細かく見ていくと非常におもしろい作品です。応挙の大人気作品が登場!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示風景第三章「昇天した遊女―円山応挙筆『江口君図』の謎に迫る」では、重要文化財の「普賢菩薩像」と、円山応挙の「江口君図」を並べて展示。さらに、応挙型の幽霊を写した「幽霊図」や、重要文化財の「西行物語」、さらに国宝の「建窯 曜変天目(稲葉天目)」も同室にあり、貴重な作品が集まるゴージャスな展示空間になっています。応挙の《江口君図》は、遊女・江口君の亡霊を普賢菩薩に見立てて描いた作品です。吉田さん描かれている江口君は、遊女の面影もありますが、普賢菩薩でもあり、幽霊画であるとも考えられ、いくつもの意味がこめられています。本展では、極楽世界から展示がはじまります。冥界のなかの「あの世」をぜひ探検してみてください。会期は9月24日まで!この展覧会は、9月24日まで開催。功徳を積めば地獄行きを免れるなど、将来、役に立つコトも作品から学べるかもしれません。ぜひ、美術館で“あの世”を探検してみてください。Information会 期:~9月 24 日(日)会 場:静嘉堂@丸の内開館時間:10:00~17:00 ※金曜は 18:00 閉館。※入館は閉館時間の 30 分前まで休 館 日:月曜日、9 月 19 日(火) ※9 月 18 日(月・祝)は開館観覧料:一般¥1,500大学・高校生¥1,000中学生以下無料
2023年08月30日サントリー美術館で、「虫めづる日本の人々」が開かれています。本展では、古くから日本の美術作品に描かれてきた「虫」たちに注目。和歌や物語にも登場し、日本で愛されてきた虫の文化に触れられる展覧会です。美術館で「虫」探し!「虫めづる日本の人々」会場入り口風景【女子的アートナビ】vol. 308「虫めづる日本の人々」では、古くから物語や和歌、美術作品のなかで季節感や人の心を表すものとして描かれてきた虫に焦点をあて、中世から近現代までの絵画や工芸、着物などさまざまな作品が紹介されています。サントリー美術館学芸員の宮田悠衣さんは、本展について次のように教えてくれました。宮田さん近年、雑誌『ブルータス』で昆虫の特集があったり、虫の展覧会が開かれたりと虫に注目が集まっています。とはいえ、展覧会は花鳥画に比べると少なく、当館でもはじめての取り組みとなります。虫は古来の日本美術において重要なモチーフであり、例えば『源氏物語』や『伊勢物語』など古典文学のなかでは鈴虫や松虫などの鳴く虫や蛍が登場人物の心情を表す重要な役割を果たしています。絵のなかで、いろいろな虫を探してみてください。きりぎりすの恋バナ!「虫めづる日本の人々」展示風景手前:住吉如慶《きりぎりす絵巻》二巻 江戸時代 17世紀 細見美術館蔵(全期間展示・場面替えがあります)では、いくつか見どころをピックアップしてご紹介。まず第一章「虫めづる国にようこそ」では、江戸時代の絵巻や硯箱などを展示。虫をめでる文化は宮廷を中心に発展し、鳴く虫を捕まえて宮中に献上する虫撰(むしえらみ)も行われていました。また、虫の音を楽しむ虫聴(むしきき)や蛍狩(ほたるがり)などの娯楽も宮廷を中心に育まれたそうです。この章での見どころは、美しい玉虫姫をめぐる虫たちの恋物語を描いた《きりぎりす絵巻》。宮田さん場面の展示替えがありますが、前期では上巻のクライマックス場面が展示されています。セミの右衛門督(うえもんのかみ)が恋の争いに勝ち、玉虫姫と一夜の逢瀬をしたあと、玉虫姫に後朝(きぬぎぬ)の文を届け、その返歌を玉虫姫がしたためている場面です。擬人化した虫たちが、さまざまに活躍する様子を楽しめます。夫婦円満のデザインとは?《梅樹熨斗蝶模様振袖》江戸時代 19世紀女子美術大学美術館蔵(展示期間7/22-8/21)続く第二章「生活の道具を彩る虫たち」では、酒器や染織品などの身近な道具にデザインされた虫たちに注目。華やかな蝶の模様が入った打掛や生活道具などが展示されています。宮田さん熨斗蝶(のしちょう)とは、夫婦円満の印として認識されていた蝶の文様です。2羽の蝶が仲睦まじく飛ぶ様子が夫婦円満を意味する文様となるなど、蝶は昔から縁起が良いものとされてきました。婚礼の衣裳にも蝶がデザインされています。江戸末期になると、裕福な町人階級も婚礼をするようになり、さまざまな階層の人たちに婚礼衣装が広がり、同時に熨斗蝶の意味も広がり、縁起の良い文様として広く認識されるようになりました。「秘めたる恋心」を表す虫とは?喜多川歌麿《夏姿美人図》江戸時代寛政6-7年(1794-95)頃遠山記念館蔵(展示期間:7/22-8/21)第三章「草と虫の楽園―草虫図の受容について―」では、中国から伝わった「草虫図」がどのように日本で愛されたのかについて紹介。会場では、重要文化財に指定されている草虫図などを見ることができます。さらに、3階の展示室にある第四章「虫と暮らす江戸の人々」では、庶民の娯楽として広まった虫聴や蛍狩について紹介。虫をめでる文化は宮廷を中心に育まれていましたが、江戸時代中頃になると庶民も楽しむようになっていきました。町には虫売りが増え、虫聴や蛍狩の名所も登場。そんな虫に親しむ人々の様子を描いた浮世絵などが展示されています。宮田さん喜多川歌麿の《夏姿美人図》では、足元に蛍籠が描かれています。この女性は、身支度を整えていて、これから夜の蛍狩りに恋人と行くところです。さらに踏み込むと、蛍は「秘めたる恋心」を象徴する虫として古くから和歌に盛り込まれてきたものです。蛍という虫が持つ文化的な側面が絵の中にこめられています。ユルッとした若冲の大人気作品!重要文化財伊藤若冲《菜蟲譜》江戸時代寛政2年(1790)頃佐野市立吉澤記念美術館蔵(展示期間:8/9-9/18※場面替えがあります)次の第五章「展開する江戸時代の草虫図―見つめる、知る、喜び―」では、江戸時代に制作された多彩な虫の絵を展示。伊藤若冲の大人気作品《菜蟲譜(さいちゅうふ)》も、この章で楽しめます。東京では7年ぶりの公開となる本作品について、宮田さんが見どころを教えてくれました。宮田さんこの作品には、56種類ほどの虫たちが登場します。9月4日までの前半期間では、葛の葉で遊ぶ虫たちの様子を描いた場面を展示しています。たくさんの虫たちの特徴をしっかりと捉えながらも、生き生きとユーモラスに描かれている点が見どころです。例えば、キリギリスは顔をこちらに向けて視線を投げかけているので、目が合ったりします。表情などもおもしろく、ユルッとしたところも魅力です。西洋人が驚いた!満田晴穂左:《自在精霊蝗虫》令和4年(2022)、中央:《自在鬼蜻蜓》令和4年(2022)、右:《自在大蟷螂》令和5年(2023)すべて作家蔵全期間展示最後の第六章「これからも見つめ続ける―受け継がれる虫めづる精神―」では、明治以降から現代までの虫モチーフ作品を展示。絵画や屏風、自在置物などを見ることができます。明治期には、西洋から影響を受け、新たな技法や表現が盛り込まれた虫作品が生み出されていきました。また、江戸時代に親しまれた虫聴や蛍狩もさらに人々の間に広がり、その様子を見た小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)など西洋の人たちを大変驚かせたそうです。昔から現代まで続く虫に対する人々の気持ちを、さまざまな美術作品をとおして楽しめる展覧会は9月18日まで開催。なお、作品保護のため、会期中に展示替えがあります。詳しくは、公式サイトでご確認ください。Information会期:~9月18日(月・祝)休館日:火曜日※9月12日は18時まで開館会場:サントリー美術館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※8月10日(木)、9月17日(日)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,500大学・高校生¥1,000中学生以下無料
2023年08月12日東京国立近代美術館で、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が開かれています。本展では、スペインの建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)が建設に携わったサグラダ・ファミリア聖堂にフォーカス。日本人が愛するガウディ建築の魅力に迫る展覧会です。日本人彫刻家も活躍!サグラダ・ファミリア聖堂外尾悦郎さん【女子的アートナビ】vol. 307「ガウディとサグラダ・ファミリア展」では、完成の時期が視野におさまってきたスペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂に焦点をあて、建築家ガウディの創造の源泉や、進行中の建設プロジェクトについても紹介。図面や模型、彫刻、写真など多彩な作品や資料に加え、最新映像も見ながら、サグラダ・ファミリア聖堂の魅力にたっぷりと触れられる展覧会です。本展の開幕前日に開かれたプレス内覧会では、彫刻家の外尾悦郎さんが登壇。外尾さんは、サグラダ・ファミリア聖堂の彫刻家として現地で長年活躍され、ミケランジェロ賞や文化庁長官表彰など国内外で多くの賞を受賞されている方です。外尾さんは、次のようにコメントされました。外尾さん私は1978年にヨーロッパに渡り、3か月で日本に帰る予定でしたが、サグラダ・ファミリアに出合い、45年、仕事をさせていただくことになりました。なぜ、45年間もいたのか。サグラダ・ファミリアをはじめとするガウディ作品に魅力があるからです。魅力どころではない、いま我々人類が必要としている大切なヒントが、ガウディにはありました。それが私を惹きつけているのです。その一端を、今回の展覧会で見ていただければ、明るいヒントが見つかるのではないかと期待しています。サグラダ・ファミリア聖堂とは?「ガウディとサグラダ・ファミリア展」展示風景まず、本展の主役であるサグラダ・ファミリア聖堂について、ざっくりとご紹介。サグラダ・ファミリア聖堂は、1882年に起工式が開かれ、ガウディは1883年に二代目の建築家として就任。聖堂は献金で建設資金を得ていたため、彼は設計や建設に携わるだけでなく、資金集めなどにも奔走しました。聖堂は未完のまま、ガウディは73歳のとき路面電車にはねられて亡くなってしまいます。その後、スペイン内戦時にはガウディの模型などが破壊され、またフランコ独裁政権時代には建設資金も集まらず、聖堂は何度も建設中止の危機に陥ります。スペイン王政復古後には経済も上向き、2005年には聖堂が世界遺産に登録されて観光客も増加。その入場料などで資金も増えて工事が進み、コロナ禍で中断しながらも少しずつ完成に近づいています。サグラダ・ファミリアは総合芸術!「ガウディとサグラダ・ファミリア展」展示風景では、展覧会の見どころについて、ピックアップしてご紹介していきます。1章「ガウディとその時代」では、図版やガウディの愛読書などを展示。学生時代のガウディがどのようにして建築家になっていったのか、その形跡をたどれるようになっています。東京国立近代美術館 企画課長の鈴木勝雄さんは、ガウディについて次のように教えてくれました。鈴木さんいかに天才ガウディといえども、彼独自の世界を築くにあたり、古今東西さまざまな建築やイメージソースを吸収し、そこから理論や造形をつくりだしていきました。前半の章では、ガウディの頭の中をのぞくことができます。そこで見えてきたガウディの独創性が、サグラダ・ファミリアへとつながります。ガウディが生きた時代は万国博覧会の時代で、世界各地の文化や技術、さまざまな様式の建築が見られました。そこから異文化を吸収しつつ、彼は自分の世界をつくっていきました。サグラダ・ファミリアは、まさに総合芸術なのです。自然や植物も好きだった「ガウディとサグラダ・ファミリア展」展示風景2章「ガウディの創造の源泉」では、歴史・自然・幾何学に注目。ガウディのスケッチや模型、彼がデザインした椅子などが展示されています。ガウディは、スペインのイスラム建築の歴史に関心もち、くだいたタイルで建物を彩る多彩色建築に取り組み、独自のスタイルを生み出しました。鈴木さんガウディは、自然や植物を丁寧に研究し、自分の装飾パターンに入れていきました。また、当時は洞窟や浸食された大地の奇妙な形に人々が関心を持ちロマンを抱く時代で、ガウディも洞窟にロマンを感じていました。洞窟を思わせるものが、彼の建築の随所に出てきます。さらに、彼は造形を自由に展開するだけでなく、幾何学にも長けており、建築構造に深い知識を持っていました。放物線の形をした超高層ビルの模型もつくり、その形が後のサグラダ・ファミリアの構造にもつながっていきます。聖堂を飾っていた石膏が登場!外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち》サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に1990-2000年に設置作家蔵3章「サグラダ・ファミリアの軌跡」では、ガウディ独自の制作方法などを紹介。彼は、図面だけでなく多くの模型をつくって自分の構想を練り上げていきました。会場では、大小さまざまな模型や、聖堂を飾った彫刻も展示されています。鈴木さんガウディは、彫刻をつくる際、実際のモデルから型を取っていました。モデルは、バルセロナの市民たちでした。彼が亡くなったあとは後世の人たちに受け継がれていき、外尾悦郎さんは聖堂の「降誕の正面」に設置されている「歌う天使たち」の石膏像をつくられました。会場にある作品は、10年間、聖堂に設置されていたものです。ぜひ、天使の表情や所作などをじっくりご覧ください。4K画像で空中散歩も!《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》2001-02年制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室西武文理大学3章の最後では、NHKが最新技術を使って撮影したサグラダ・ファミリア聖堂の美しい映像を楽しむことができます。また、4章「ガウディの遺伝子」では、ガウディ建築が現代に与えている影響や意義を探り、インタビュー映像なども紹介。最後は、ガウディの言葉が映像で映し出されて展示が終わります。なお、この展覧会は連日大盛況で、会場内は混雑しています。公式サイトに混雑状況も載っていますので、チェックしてからお出かけください。Information会期:~9月10日(日)休館日:月曜日(8月28日、9月4日は開館)会場:東京国立近代美術館時間:10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,200大学生¥1,200高校生¥700中学生以下無料※熱中症対策及び混雑緩和のため8月3日以降は日時予約推奨(8月25日以降は休まず夜間開館を実施)。詳細は展覧会公式サイトへ。巡回情報:滋賀会場:2023年9月30日(土)~12月3日(日)佐川美術館愛知会場:2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)名古屋市美術館
2023年08月06日国立西洋美術館の常設展示室で、小企画展「美術館の悪(わる)ものたち」が開かれています。本展では、国立西洋美術館が所蔵する膨大なコレクションのなかから、「悪ものたち」が登場する作品を展示。まがまがしい悪魔から、心惹かれる魅力的なキャラクターまで、さまざまな悪党が登場します。このユニークな展覧会を担当された研究員さんに、展示の見どころなどお聞きしてきました!西洋の「悪ものたち」が勢ぞろい!「美術館の悪ものたち」展示風景【女子的アートナビ】vol. 306「美術館の悪(わる)ものたち」では、国立西洋美術館が所蔵するコレクションからセレクトされた作品を49件展示。デューラーやルーベンス、クラーナハ、ドーミエ、ゴヤなど、ルネサンス期から20世紀までの名作版画のほか、油彩画も紹介されています。描かれている「悪もの」は、悪魔や怪物だけではありません。怠惰や大食い、嫉妬、貪欲、淫欲などもキリスト教会では「大罪(悪徳)」とされ、それらを描いた作品も展示。また、「死」をイメージ化した不気味な版画や、悪徳政治家を揶揄した風刺画もあり、多彩な西洋の悪ものたちが勢ぞろいしています。この楽しい展覧会を企画された国立西洋美術館 学芸課長の渡辺晋輔さんに、見どころや版画の楽しみ方をお聞きしてきました。悩みに悩んで「悪ものたち」に…――まず、本展開催の経緯について教えてください。渡辺さん国立西洋美術館の版画素描展示室では、大きい展覧会を開催するたびに、当館の所蔵作品を使った小さい展覧会をしています。今回、企画展示室では学術的なスペイン版画の展覧会をしているので、その裏番組として、この小企画展ではやわらかめのテーマで版画などを出すことにしました。――「美術館の悪ものたち」というタイトルにとても惹かれます。なぜ、「悪もの」をテーマにされたのですか?渡辺さん夏休みの期間とも重なるので、子どもが楽しめるものにしようと思いました。テーマは悩みに悩み、「悪魔と魔女」も考えましたが、それだけで作品を集めるのは難しく、もう少し広めのテーマとして出てきたのが「悪ものたち」でした。「悪い奴ら」にしようかとも思いましたが、最終的には「悪ものたち」となりました。「悪もの」は自由に描ける!――作品には、悪魔や怪物などキャラクターたちがたくさん登場しています。今のように簡単に情報が得られない当時の芸術家たちは、どんな風に個性的なキャラクターを生み出したのでしょうか?渡辺さん当時も、少ないながらも情報は得られました。その役割を果たしたのが版画です。ルネサンス期は、版画により情報の伝達が進み、各地で描かれている変わった怪物などを知ることができました。例えば、ユニークな怪物を描いたヒエロニムス・ボスの版画を見た画家が、それをもとに工夫を重ねて発展させて描いたりしています。また、16世紀はローマ時代の壁画などが発掘され、古代の変わった装飾模様が見つかった時期でもあるので、そのデザインを発達させたという可能性もあります。――西洋文化のなかで「悪ものたち」のイメージが受け継がれ、発展していったのですね。渡辺さん悪いものや醜いものは、「こう描かなければならない」という制約がありません。例えばキリストや聖人は、描き方が厳密に決まっています。また、美しい人の描き方もある程度決まっています。「悪ものたち」はそれらと正反対にあり自由なので、画家たちは創意工夫を発揮しやすく、自分の能力を示すきっかけにもしていました。不倫の濡れ衣を着せられた人妻の絵…スケッジャ(本名ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ)《スザンナ伝》15世紀――本展の構成を教えていただけますか?渡辺さん会場では、セクションにわけながら、ルネサンス期から20世紀へと時代が下がるように展示していますが、時代の流れは厳密ではありません。また、本展では、当館コレクションのなかでもかなり良い版画を選んであります。テーマを設けていますが、名品展にもなっていて、基本的にどれを見ても良い作品です。――どれも名品とのことで、そこからセレクトするのは難しいと思いますが、各セクションのおすすめ作品を教えていただけますか?渡辺さん最初のセクション「罪深い人々」では、一番目に展示してあるテンペラ画が見どころです。描かれている「スザンナ伝」は、当時とてもメジャーな話です。旧約聖書に題材をとったもので、長老たちに言い寄られ、不倫の濡れ衣を着せられた人妻スザンナの様子などが描かれています。その長老たちが、典型的な悪人とわかるようになっているので、おもしろい作品です。――この絵は、部屋に飾って楽しむためにつくられたのですか?渡辺さん本作品は、もとは「カッソーネ」と呼ばれる、衣服などを入れる長持ちの前面を飾る装飾パネルでした。これは嫁入り道具です。スザンナは貞節を守った女性なので、花嫁のお手本のようなイメージとして、当時の花嫁道具に好んで描かれました。版画史に残る名品!アルブレヒト・デューラー《騎士と死と悪魔》1513年エングレーヴィング――次のセクション「悪魔と魔女」のおすすめ作品を教えていただけますか?渡辺さんデューラーの《騎士と死と悪魔》は、版画のなかで最高峰作品という位置づけで、版画史に残る重要な作品です。技法も優れていますし、「死」をデューラーが工夫して発展させ、あのような版画に仕上げた点もすばらしいです。右側に、ブタの鼻をもつ悪魔も描かれています。「美術館の悪ものたち」展示風景渡辺さんまた、このセクションでは、版画によってイメージがイタリアからドイツへ、そしてドイツからイタリアに伝わったことがわかる作品も3点展示しています。イタリアのマントヴァで制作されたマンテーニャの版画がドイツに運ばれ、それをデューラーが入手し、あるイメージを引用して「魔女」を描きます。その版画が、今度はローマに流通し、ヴェネツィアーノという画家が魔女の作品を描きました。会場では、パネルで詳しく解説してありますので、そちらもご覧ください。ずっと見ていて飽きないイチオシ版画ジョルジョ・ギージ《人生の寓意》1561年 エングレーヴィング――続いて、「魔物」のセクションについて、見どころを教えてください。渡辺さんギージの作品は、16世紀の版画のなかでは非常に有名で、とても魅力的だと思います。作者の空想がすごく発揮され、画面が謎めいていて、今でも何が描かれているのかよくわからない部分もあります。技術力も高く、細かなところまで描き込まれていて、見ていて飽きませんし、純粋に楽しいです。また、本作品は自分が購入を担当したものでもあり、ぜひ見ていただきたかったという思い入れもあります。――この作品は、大きなパネルにもされて、描かれている「生き物」を探すというクイズも出されていますね。渡辺さん動物や怪物だけでなく、よく見ると、「ラファエロ作」という文字も書いてあります。モチーフをラファエロから引用しているところもあり、いろいろな解釈が盛り込まれています。当館ホームページの作品検索ページでも本作品を拡大して見ることができますので、ゆっくり動物など探してみてください。男の醜さを際立たせた作品ウィレム・ファン・スワーネンブルフ、マールテン・ファン・ヘームスケルク の原画に基づく《『世俗財産の悪用についての寓意』より、男に矢を放とうとする死》1609年エングレーヴィング――「死」のセクションのおすすめ作品も教えてください。渡辺さんスワーネンブルフの作品は、世俗財産の悪用を寓意として表しているところがおもしろい作品です。「死」の訪れで財産が崩れ去り、結局死んでしまえば何も残らないという教訓がこめられています。――このような版画は、当時の人たちは飾って楽しんでいたのですか?渡辺さん版画は、本来は手元に置いて、見て楽しむものです。例えば、16世紀に入ると素描のコレクションをする人たちが出てきますが、これは一点ものでなかなか手に入らないので、その代わりに版画をコレクションしていました。今の切手帳みたいに帳面に版画を貼って、鑑賞するというやり方です。裕福な人の趣味ですが、安い物もありました。フェリシアン・ロップス《ポルノクラテスあるいは豚を連れた女》1881年エッチング、アクアティント――最後のセクション「近代都市の悪ものたち」の見どころを教えてください。渡辺さんロップスの作品はインパクトがあります。裸の女性が目隠しをしてブタを連れて歩いている版画です。「ポルノクラテス」とは「娼婦政治家」のことで、自分の利益しか見ていない政治家を風刺している作品です。近代都市の堕落したところを見せつけているように思います。左:フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《『ロス・カプリーチョス』より、何たる犠牲か》1799年エッチング、アクアティント(一部掻き落とし)、ドライポイント右:オノレ・ドーミエ《『表情のクロッキー』より、(39)なあ、いいだろう…ご主人様に接吻しておくれ…今すぐに…》1838年リトグラフ渡辺さんゴヤやドーミエが描いた、中年男性が若い女性を口説く作品もおもしろいです。「不釣り合いなカップル」という主題は歴史が長く、ルネサンスのころからあります。年寄りの男性と若い女性、醜い男性と美しい女性など、いろいろなところが対比となっています。醜い男性を描くとき、いかにして醜さを際立たせるかが画家に求められていました。ゴヤもドーミエも、その部分をうまく表現していると思います。深く考えずに楽しんで!――最後に、版画の鑑賞法について教えてください。版画は、木版やエングレーヴィング、エッチングなどさまざまな技法があり、少し難しいイメージがあります。初心者は、どんなふうに見ればよいのでしょうか?渡辺さんあまり深く考えずに見ていいと思います。技法がわからないと作品がわからない、ということではないと思います。見ていると、素描とは違うというのはわかると思いますので、何か違うなという感じを楽しんでいただければ、それで十分だと思います。例えばデューラーの版画は、純粋に画像が醸し出す雰囲気がすごいと思います。風格があり、見ていると圧倒されます。その魅力を、会場で見て感じていただけたらうれしいです。――詳しく解説していただき、ありがとうございました。クビーンのポスターも見てください!渡辺さんのお話、いかがでしたか。モノトーンの版画は、一見すると地味ですが、描かれているテーマやストーリーを知ると、大変おもしろいアートだと思いました。本展は、タイトルもユニークですが、ポスターも非常にインパクトがあります。アルフレート・クビーンという画家が制作した、不敵な笑みを浮かべた骸骨の版画がデザインされているのですが、残念ながら本作品は著作権の関係で、ポスターも含めて写真を掲載できません。クビーンの作品はネットでも話題になっていて、「あの版画のグッズが欲しい」というコメントもちらほら。間違いなく、本展で一番キャラ立ちのスゴい「悪もの」です。会場で、クビーンの版画は最後に登場するので、ぜひ直接美術館でご覧になってみてください。「美術館の悪ものたち」は9月3日まで開催。Information会期:~9月3日(日)休館日:月曜日※8月14日(月)は開館会場:国立西洋美術館新館2階版画素描展示室時間:9:30~17:30※毎週金・土曜日:9:30~20:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥500大学生¥250※本展は常設展の観覧券または企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」(7月4日(火)~9月3日(日))観覧当日に限り、同展観覧券でご覧いただけます。
2023年07月30日国立新美術館で、「テート美術館展光— ターナー、印象派から現代へ」が開かれています。本展のアンバサダーは、俳優の板垣李光人(いたがきりひと)さん。ご自身でもデジタルアートを手がけるなど、アートが大好きな板垣さんに、展覧会の感想や楽しみ方について、語っていただきました!板垣李光人さんがアンバサダー!板垣李光人さん【女子的アートナビ】vol. 305「テート美術館展光— ターナー、印象派から現代へ」では、英国・テート美術館から「光」をテーマにセレクトされた作品が来日。イギリスが誇る風景画家のターナーやコンスタブル、印象派のモネ、室内の淡い光を描いたハマスホイなどの油彩画や、近代の写真作品、現代アートのインスタレーションなど多彩な作品をとおして、光とアートをめぐる200年の流れを体感することができます。今回、テート美術館から来日する約120点の作品のうち、およそ100点が日本初出品です。本展は、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドをめぐってきた世界巡回展。最終会場の日本では、大人気のロスコやリヒターの作品も特別に出品されます。そんな注目の展覧会でアンバサダーと音声ガイドを務めるのが、NHK大河ドラマ『どうする家康』でモテモテの井伊直政役を演じている俳優の板垣李光人さん。ドイツ語で「光」を意味する「Licht(リヒト)」という名をもつご縁でアンバサダーに選ばれた板垣さんが、プレス内覧会に登場。その後、インタビューも実施しましたので、まとめてご紹介します。すごく不思議な感じ――展覧会のアンバサダーになられて、いかがでしたか?板垣さんすごく不思議な感じです。アートが好きなので、美術館はプライベートでもよく来ている場所です。そこでこうしてお仕事をさせてもらってるというのが不思議な感じですし、本当に光栄で嬉しいです。国立新美術館もよく来ていて、展示室で作品を見たあとは、余韻に浸りながら館内のカフェでお茶しています。そこでケーキを食べたりもしています(笑)。――音声ガイドも担当されています。特に、収録で心がけたことなどありましたか?板垣さん音声ガイドは、作品を鑑賞するための手助けで、作品が主役という意識はありました。また、自分で美術館に来たときにもいつも聴いていたので、どういうテンポがいいのか、どんな感じがいいのか、ある程度はわかっているつもりでいましたので、割とスムーズにできました。完成したものはまだ聴いていないので、また来て聴いてみたいです。――音声ガイドの収録で、特に印象に残った作品解説はありましたか?板垣さん原稿を読んでいて興味深かったのは、草間彌生さんの鏡の作品《去ってゆく冬》です。草間さんの作品は、有名な水玉の絵や立体かぼちゃのイメージでしたが、今回の作品ははじめて知りました。無限を表している作品で、彼女が水玉を描く理由も原稿で触れられいて、興味深かったです。――その作品を実際にご覧になってみて、いかがでしたか?板垣さん会場で作品を見てみると、鏡の奥に続く水玉が、直線で続くのではなく曲線を描くことで、その先が円になるように想像できました。それにより、輪廻というか循環を連想できて、おもしろかったです。あの作品は、写真で見るよりも、やはり実際に本物を見ないとわからないと思いました。解脱したような感じ…――展覧会の全体をご覧になって、いかがでしたか?板垣さんとにかく幅が広いな、と思いました。時代の幅もそうですけど、油絵から現代アートまであり、いろいろな世代の方に楽しんでいただけるのではないかと思います。――お気に入りの作品を教えていただけますか?板垣さんいろいろあるのですが、まずジェームズ・タレルの《レイマー、ブルー》という作品はよかったです。見る人によって解釈や感じ方が全然違うと思うのですけど、ぼくはすごく高尚なもののように感じました。白い無垢な空間に青い光が映し出されるのですが、それがあの世への入り口のような感じで……。安らかで清らかで、煩悩がなくなり、解脱したというか、解脱の入り口にいるような感じがしました。――解脱できるような作品というのはすごいですね。ほかには、どんな作品がよかったですか。板垣さんジョン・ブレットの《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》も好きでした。海に光が降り注ぐ絵で、画家自身が航海に出て見た海の風景を描いたそうで、陸や港から見る海の景色とはまた違う力強さがありました。海の美しさだけでなく、航海に出ているからこそ海の恐ろしさ、厳しさ、力強さみたいなものがわかり、そのうえで描いている絵なので印象的です。波の質感や、光が降り注いで光が波に反射している様子など、ディテールを近くで見るのもいいし、少し離れて全体の力強さを楽しむのもいいです。――鑑賞方法が本格的ですね!板垣さん自分も絵を描いたりするので、ディテールとか見てしまいます。――絵を描かれる立場からご覧になって、すごいと思った作品はありましたか?板垣さんゲルハルト・リヒターの《アブストラクト・ペインティング(726)》はおもしろいと思いました。キャンバスを2個つなげている作品で、アナログで描いているので筆の跡もあるのですが、その筆の動きがデジタルな電子的なものにも思えました。解説を聴いたら、専用のスキージーで描いているそうで、機械的な動きによりその質感が出ているとのこと。油彩的なアプローチによるインクの飛び方とか筆の運び方とかのバランスがおもしろいと感じました。画家自身で自分の色も確立されていますよね。――本展をご覧になり、ご自身のアート制作などでトライしてみたいことなど出てきましたか?板垣さんぼくはデジタルアートを描いているのですが、キャンバスに描きたいなと思いました。リヒターを見たらいいな、と(笑)。専用の部屋を借りてアトリエみたいにして、壁をブルーシートで覆って汚れてもいいようにして、そんな環境が欲しいな、と思いました。衝撃を受けたアートは…――板垣さんは、デジタルアートで現代仏画をお描きになってNFTでリリースされていました。なぜ仏画というジャンルにされたのですか?板垣さんもともと仏教だけでなく宗教画が好きなんです。キリスト教絵画は、印象派などと違う質感があり、おもしろいと感じます。例えば、人物のバランスが、概念的な偉大さや存在の大きさにより描かれるサイズが決まったりして、そのめちゃくちゃ大胆な感じがおもしろいです。色の使い方も、絵の具の発達により変わってきますが、古いものは、その描かれた当時の独特の色の出し方があり、そんな色使いも好きです。ヨーロッパだけでなく、アジアの曼荼羅などもおもしろいですね。だから、もともと宗教画に興味があり、デジタルでイラストを描いていて、さらにファッションも好きなので、その自分の好きなものを組み合わせて紹介したいと思い、たどりついたのが現代仏画でした。――では、お寺などにも行かれたりするのですか?板垣さんお寺も仏像も好きです。お寺や神社にもいろいろ様式があり、例えば仏像でも攻めている感じのものもあったりして、見ていておもしろいです。――アートは、描くのも見るのも好きとのことですが、いつからアートに興味があったのですか?板垣さん絵は、覚えていないくらいのころから描いていました。アーティスティックなものが好きだと自覚したのは、ティム・バートンの『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を見てから。この映画がとても好きでした。小さいころからティム・バートンの作品が好きで、それが今にも通じてくるのかなと思いました。――これまでに見た展覧会で、印象に残っているものはありますか?板垣さん以前、森美術館で開催されていた「塩田千春展:魂がふるえる」。あれは衝撃的でした。今回のテート美術館展でも、大きな卵のような作品《イシーの光》(アニッシュ・カプーア作)がありましたが、あのような生命とかエロティシズムを感じるような作品もすごく好きで、塩田さんの作品も血のような肉体的なものを感じ、そんな作品が好きで強烈だったので覚えています。――たくさん美術展に行かれていますが、アートの楽しみ方を教えていただけますか?板垣さん例えば今回のターナーの作品など、百数十年以上も前に描かれたものです。その時代に生きていた人たちが感じていたもの、考えていたこと、におい、五感などすべて表現されているのが絵なので、その時代にタイムスリップできる感覚を味わえるのが美術だと思います。来たことがない方は、とにかく一回来てみると、自分なりの楽しみ方が絶対に見つかると思います。――では、最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。板垣さんこの展覧会には、はじめて日本にくる作品もたくさんあり、絵だけでなく立体作品もあります。ふだん絵や美術に興味がない方や、美術館に来る機会がない方でも、すごく楽しみやすいと思います。いろいろな時代のものがあり、何か自分のなかにビビッとくる、心惹かれる作品が絶対にあると思うので、いろいろなテートの光を感じに来ていただけたらと思います。――ありがとうございました!取材を終えて…アートについて、非常に造詣の深い板垣さん。作品についての感想も、ひとつひとつがとても深く、でもわかりやすい言葉で話してくださり、聴き惚れてしまいました。容姿だけでなくお声も優しく美しいので、音声ガイドも心地よく聴くことができます。ぜひ、板垣さんのガイドを聴きながら、作品をご覧になってみてください。Information会期:〜10月2日(月)休館日:毎週火曜日会場:国立新美術館企画展示室2E時間:10:00〜18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,200大学生¥1,400高校生¥1,000
2023年07月30日東京駅周辺の便利なエリアには、ステキな美術館がいくつか集まっています。今回は、そのなかから夏のおでかけにおすすめしたい「ゾクゾクする」アートが見られる展覧会を2つご紹介!あやしい絵にゾクゾク!「甲斐荘楠音の全貌」東京ステーションギャラリー【女子的アートナビ】vol. 303まずは、東京駅直結の美術館、東京ステーションギャラリーで開催中の「甲斐荘楠音の全貌」。大正から昭和にかけて活躍した日本画家、甲斐荘楠音(かいのしょうただおと/1894-1978)の代表作が集まる過去最大規模の展覧会です。甲斐荘は、京都生まれ。御所近くの裕福な家庭で育ち、幼少のころから歌舞伎好きで劇場に通うような子どもでした。その後、京都市立絵画専門学校(現:京都市立芸術大学)に進学。ルネサンス美術にも関心をもち、《モナリザ》の模写などもしていました。卒業後は、革新的な日本画を次々と発表し、注目を集めます。《幻覚(踊る女)》1920年頃、京都国立近代美術館彼が描く「あやしい」雰囲気の作品は、おもに大正時代に制作されました。女性の姿が独特な色彩やタッチで表現され、かなりのインパクト。ちょっと官能的でもあり、ゾクゾク鳥肌が立ちます。《春宵(花びら)》1921年頃、京都国立近代美術館ゾクゾクを通り越して、ギョッとする作品もあります。白粉をたっぷり塗った顔がやや不気味にも思える《春宵(花びら)》は、花魁を描いた作品。描きかけの部分もあるので、未完作といわれています。この花魁と似たような姿をした画家自身の写真も、参考資料として展示されています。太夫に扮する楠音、京都国立近代美術館芝居好きの甲斐荘は、ときどき女形として素人歌舞伎の舞台に出ることもありました。さらに、異性装で「女性」として振る舞うこともあり、彼が遊女や女形に扮した写真も多く残っています。《春》1929年、メトロポリタン美術館、ニューヨークPurchase, Brooke Russell Astor Bequest and Mary Livingston Griggs and Mary Griggs Burke Foundation Fund, 2019 / 2019.366また、本展には海外からの出品作もあります。展覧会のメインヴィジュアルにも使われている《春》は、アメリカのメトロポリタン美術館から来日。本作品は、甲斐荘が所属した絵画団体「新樹社」の第1回に出品された作品です。描かれている女性の顔は、以前の画風にあったあやしい雰囲気が薄まり、優しく微笑んでいます。本作は、新しい画風を切り拓いたといわれる作品で、2019年にメトロポリタン美術館所蔵となりました。映画衣裳の世界でも活躍!『旗本退屈男 謎の南蛮太鼓』衣裳、東映京都撮影所 ©東映(映画公開:1959年、監督:佐々木康、製作・配給元:東映株式会社、衣裳着用者:市川右太衛門)あやしい絵のイメージが強い画家ですが、本展では知られざる後半生についても紹介しています。甲斐荘は、風俗の考証家として、時代劇映画の衣裳制作にも携わっていました。会場では、「旗本退屈男」シリーズの豪華衣裳を多数展示。甲斐荘が映画『雨月物語』(溝口健二監督)のために考案した衣裳は、アカデミー賞衣裳デザイン賞にもノミネートされました。世界も認めたデザインセンスをもつ甲斐荘の着物は必見です。《虹のかけ橋(七妍)》1915-76年、京都国立近代美術館最終章では、画家が60年もかけて描き続けた大作《虹のかけ橋》を展示。21歳のときに構想した作品で、少しずつ手を入れたり、顔を描き直したりしながら、最後まで女性の美を追求していたようです。まさに、甲斐荘の「全貌」を見ることができる展覧会は、8月27日まで開催。クールな絵にゾクゾク!「ABSTRACTION抽象絵画の覚醒と展開」アーティゾン美術館外観続いてご紹介するのは、東京駅から徒歩圏内にあるアーティゾン美術館で開催中の「ABSTRACTION抽象絵画の覚醒と展開」。本展では、印象派から1960年代ごろまでのアート作品をとおして抽象絵画の歴史を紹介しています。展示されている作品は、ヨーロッパやアメリカ、アジアの作家など多岐にわたります。各作品は、ポンピドゥー・センターやフィリップス・コレクションなど、海外の美術館や個人コレクションから30点も来日。国内からも、国公立、私立美術館、個人コレクションもあわせて約70点が出品されています。さらに、アーティゾン美術館が新収蔵した作品95点を一挙に公開。あわせて約250点ものクールな抽象絵画を楽しめる大規模展覧会です。ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃石橋財団アーティゾン美術館展示構成は、12のセクションに分かれています。最初のセクション「抽象芸術の源泉」では、マネ、ゴッホ、モネなどの印象派作品を展示。まず1作品目は、セザンヌの作品が紹介されています。セザンヌは印象派を代表する画家のひとりですが、やがて印象派の仲間から離れて独自の革新的な絵画を制作します。彼の作品は、その後キュビスムやフォービスム、抽象絵画へと影響を与えることになりました。抽象絵画の創始者は…フランティセック・クプカ《赤い背景のエチュード》1919年頃石橋財団アーティゾン美術館【新収蔵作品】セクション3「抽象絵画の覚醒」では、抽象絵画の世界を切り拓いた代表的な画家カンディンスキーやモンドリアン、ドローネーなど、巨匠たちの作品が多数登場。なかでも必見作は、展覧会のメインビジュアルにも使われているクプカの作品です。抽象絵画の創始者のひとりといわれるクプカは、当初、挿絵画家として生計を立てながら絵画のスタイルを模索。構図を単純化してしき、やがて作品は抽象絵画へと変化していきました。ほかにも、古賀春江や岡本太郎、ミロ、デュシャン、草間彌生、白髪一雄、瀧口修造など、巨匠たちの作品や、現在活躍している作家の絵画も展示されています。なお、各フロアへの入り口にもぜひ注目してみてください。ポロックやアルトゥングの作品が大きくデザインされ、展示への期待感がグッと高まります。抽象絵画を心ゆくまで楽しめる展覧会は、8月20日まで開催。Information展覧会名:甲斐荘楠音の全貌絵画、演劇、映画を越境する個性会期:~8月27日(日) ※会期中、展示替え有[前期7/1~7/30、後期8/1~8/27]休館日:月曜日[7/17,8/14,8/21は開館]、7/18(火)会場:東京ステーションギャラリー時間:10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで観覧料:一般¥1,400高校・大学生¥1,200中学生以下無料展覧会名:「ABSTRACTION抽象絵画の覚醒と展開」会期:~ 8月20日(日)休館日:月曜日、7月18日(火)※ただし、7月17日(月・祝)は開館会場:アーティゾン美術館時間:10:00~18:00(8月11日を除く金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで観覧料:日時指定予約制ウェブ予約チケット ¥1,800 、窓口販売チケット¥ 2,000 、学生無料(要ウェブ予約)*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットを購入可能*中学生以下の方はウェブ予約不要
2023年07月30日渋谷区立松濤美術館で、「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」が開かれています。本展では、平安時代から現代までの日本のさまざまな人形を紹介。なじみのあるお雛さまやマネキン、リアルな生人形、さらに性を扱う人形など多彩な造形物が展示されています。会場の様子や学芸員さんのお話など、詳しくレポートします!ボーダーラインを飛び越えた人形が集結!「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」会場入り口【女子的アートナビ】vol. 304「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」では、民俗や考古、玩具、芸術など各ジャンルのボーダーラインを飛び越えた日本のさまざまな人形を展示。多様性をもつ人形をとおして、日本の立体造形表現の変遷を知ることができる展覧会です。本展を担当された松濤美術館学芸員の野城今日子さんは、本展の趣旨について次のように解説。野城さん人形にはさまざまな分野があり、表現方法も役割もすべて違います。ふだん、美術や芸術という枠組みで私たちは考えていますが、美術館に人形を並べてみると、「何が芸術なのか」と概念が揺さぶられるのではないでしょうか。人形の造形表現をとおして、カテゴライズできないところにも日本のモノづくり精神が宿るということをお伝えできればと思います。衝撃的な呪詛人形からスタート!《人形代[男・女]》平安京跡出土平安時代前期京都市指定文化財京都市蔵本展は10章構成。いくつか見どころをピックアップして、ご紹介していきます。第1会場(2階展示室)にある第1章では、考古や民俗資料としての人形を中心に展示。平安時代につくられた《人形代(ひとかたしろ)[男・女]》は、京都で出土したもので、人を呪い殺すためにつくられた人形です。本展のポスターにも使われています。野城さん人形代は、薄い木に顔を描いたシンプルなものが京都などでたくさんつくられ、儀式などで使われていました。約10年前に平安京跡の井戸から出土した人形代は、立体的で肉感もあり、精巧につくられ体に名前も書かれています。リアルにつくることにより、より強く呪いをかけられると当時の人は思っていたようです。大きなお雛さま!末吉石舟《古今雛》文政10(1827)年東京国立博物館蔵続く第2章では、おなじみの雛人形や五月人形を展示。雛人形は、貴族や公家社会の行事で、子どもの健康を願うため、また社会の規範を子どもに教えるためにも使われました。野城さんお雛さまは、小さなものや、子どもの健康を願うものなど、いろいろな種類があります。例えば、「古式立雛」は、今のドールハウスのように、子どもたちがお雛さまで遊んでいたルーツもあるようです。「古今雛」のような大きなお雛さまなどのバリエーションもあり、サイズや表現を変化させながら人々の生活に根づいていきました。彫刻と人形の違いは…小島与一 《三人舞妓》 1924年アトリエ一隻眼蔵前章は江戸時代までの人形でしたが、第3章からは明治に入り、西洋化を推し進める日本でつくられた人形が展示されています。野城さん江戸時代まで、彫刻的なものであった人形は、近代に西洋から彫刻の概念が入ると変化が生じていきます。例えば、展示されている博多人形はどこから見ても破綻のない形で、彩色も美しく、彫刻といっても人形といってもいい存在です。彫刻と人形の差はどう区別するのか、と感じていただきたいです。ギョッとする生人形「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」展示風景第2会場(地下1階展示室)に入ると、生人形(いきにんぎょう)が登場。生人形とは、幕末から明治にかけて流行したリアルな人形で、ギョッとするほど精巧につくられています。野城さん生人形は、見世物として架空の物語や歴史の物語のひとつの場面を表したりしているエンタメのひとつでした。お祭りなどのためにつくられた生人形もあれば、地域伝承に使われるものもあります。例えば、《生人形松江の処刑》は、松山市三津浜地区に伝わるものです。松江さんという女性が地域の乱暴な男に襲われそうになり、男性を殺めてしまいます。それで自分も処刑してほしいと父親に頼み、首を切られる場面を生人形で表しています。松江さんのお墓の横にこの人形を置き、供養のためにみなで踊ったりしていました。マネキンや現代アートも!「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」展示風景第8章では、商業で活躍した「人形」としてマネキンを紹介。さらに、最後の10章では、現代美術家、村上隆さんのアート作品とフィギュアが展示されています。野城さん初期の洋装マネキンは、実は彫刻家がつくっていました。向井良吉は彫刻家で、七彩というマネキンをつくる会社の創業者でもあります。会場では、彼のつくったマネキンと彫刻を並べて展示しています。また、最後の章では、村上隆さんのアート作品とフィギュアを展示。人形に対する思いは、いろいろな分野に分散しながら日本の根底に流れていき、今は現代アートとして世界に発信されています。大人の展示コーナー「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」展示風景第9章は、1階の特別エリアに作品が展示され、大人だけが入場できます。この展示室では、多くの人の心身に寄り添ってきたラブドールなど、性愛を対象にした人形が紹介されています。(18歳未満の方は、ご覧になれません)野城さんラブドールは、性行為をする相手としてつくられた人形で、生きているような血色、肉感がわかり、どこかリアルな感じがあります。生人形から流れている「人をつくりたい」という気持ちが現代にも受け継がれています。役割も表現の仕方も分野もすべて違いますが、人形は私たちと近い距離にあります。美術や芸術という枠組みでカテゴライズできないところにも造形精神が宿る、というのをこの展覧会で感じていただければうれしいです。展覧会は8月27日まで!本展は、前期と後期にわかれ、一部展示替えがあります。また、担当学芸員さんによるトークイベントなども予定されています。ぜひ、多様な人形の世界を楽しんでみてください。Information会期:~8月27日(日) ※前期:7月1日(土)~7月30日(日)後期:8月1日(火)~8月27日(日)※会期中、一部展示替えがあります休館日:月曜日[7/17は開館]、7/18(火)会場:渋谷区立松濤美術館時間:10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで観覧料:一般¥1,000大学生¥800高校生・60歳以上¥500※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料※毎週金曜日は渋谷区民無料
2023年07月23日静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で、「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」が開かれています。昔のサムライたちが身につけていた装身具は、実は日本を代表する美術品のひとつ。世界の愛好家たちも憧れた、クールなサムライアイテムをご紹介します!世界でも高評価!サムライアイテムが勢ぞろい「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」会場入り口【女子的アートナビ】vol. 302「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」では、静嘉堂文庫美術館が所蔵するコレクションのなかから、サムライたちの装身具である印籠や刀装具などのアイテムを展示。江戸時代の美術工芸品は、浮世絵と同じように海外でも高く評価され、世界の愛好家たちに蒐集されてきました。印籠などは小さな作品ですが、そのなかに花鳥風月や故事などが金銀漆で美しく表現され、世界のコレクターからも愛されています。本展では、そんなサムライアイテムのほか、おしゃれな江戸の人々を描いた風俗画も紹介。武士や遊女たちが華やかに着飾るようすも楽しむことができます。※本記事の写真はプレス内覧会で許可を得て撮影しています。サムライのおしゃれとは?《黒蝋色塗鞘桐紋金具打刀拵》江戸時代(17世紀)では、会場の展示作品とともに見どころをご紹介。まず1章は「サムライのおしゃれ」として鎌倉武士たちの華やかな鎧兜姿を描いた絵巻や、江戸の武士が登城するときに身につけた礼装の拵(こしらえ)などが展示されています。サムライや展示作品について、展覧会を担当した静嘉堂文庫美術館学芸員の山田正樹さんは、次のように解説してくれました。山田さんサムライの誕生については諸説ありますが、一説には京都の平安貴族に上級貴族と下級貴族がいて、下級貴族が軍事専門化した家系がのちの平氏や源氏のサムライといわれています。その平安鎌倉の武士たちが身につけていた戦の装束から「サムライのおしゃれ」を解いていくのが第1章です。江戸時代の武士は、腰に大小の刀を二本差していますが、長い刀を収めた打刀拵(うちがたなごしらえ)と、短い刀を入れた脇差拵の二点セットになっています。江戸時代初期、徳川幕府が制定した武士の礼装は裃、袴をつけて二本差しにして、殿中では脇差のみで、右側が空くので印籠を提げる。この三点セットが武士の礼装の基本でした。《蒙古襲来絵巻摸本巻二》明治2年(1869)山田さん《蒙古襲来絵巻》のオリジナルは鎌倉時代・13世紀に描かれたもの。静嘉堂の展示品はその摸本で、明治2年に描かれたものです。鎌倉時代の元寇がテーマの作品で、13世紀後半の武士たちの装束を知ることができます。この絵巻は、元寇の戦に参加して戦功をあげた竹崎季長自身が絵師に依頼したもので、細かく注文をつけて描かせたので武家風俗の考証が的確といわれています。人気のコレクターズアイテムが勢ぞろい!「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」会場風景続く2章「将軍・大名が好んだ印籠」では、静嘉堂が所蔵する276点の印籠コレクションから、40点を精選して紹介。将軍家や大名家につかえた蒔絵師ごとに、作品が展示されています。将軍や大名たちは、印籠を注文製作し、季節ごとに取りかえておしゃれを楽しんだり、贈答に使ったりしていたそうです。趣味で印籠を集めるお殿様もいて、コレクターズアイテムとなっていました。職人たちも技術やデザインを磨き、全国のサムライが集まる大都市・江戸には、腕の良い印籠蒔絵師たちが集まりました。数ある印籠のなかでも山田さんが注目する逸品は、尾張徳川家の御用蒔絵師、吉村寸斎の作品。山田さん作例が少なく、幻の蒔絵師と呼ばれています。木目のように見える背景は、実は黒漆地に金の研ぎ出し蒔絵で木目を繊細に表しています。そこに墨絵で描いた馬の図をそのままに螺鈿の輝く貝に置き換えて表しています。明治になると超絶技巧がはやりますが、寸斎の印籠はその走りとなるような作品です。海外が憧れた黒いモノとは?「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」会場風景3章「江戸の風俗画にみる武士のよそおい」では、江戸時代の江戸や京都の街のにぎわいなどを描いた屏風や、サムライのおしゃれアイテムである刀剣の拵(外装)や装飾金具などを展示。重要文化財の《四条河原遊楽図屏風》では、当時のファッションリーダーだった「かぶき者」や遊女、若衆たちが生き生きと描かれています。川之辺一朝ほか《藤丸写合口拵(長船兼光脇指付属)》明治時代(19世紀)また、江戸から明治にかけてつくられた刀剣の拵は、黒漆塗が大変美しく、海外の人たちも憧れました。ピアノの黒塗は、日本刀の鞘塗りに触発されたといわれているそうです。最後の4章「貴人のおしゃれ」では、重要文化財で世界的にも貴重な「密陀絵」の屏風と国宝の曜変天目(「稲葉天目」)を楽しめます。新発見のサーベルも必見!C.SMITH&SON《サーベル形儀仗刀 後藤象二郎拝領》(1868)本展では、NHKテレビでも報道された新発見のサーベルも展示されています。このサーベルは、後藤象二郎が英国ヴィクトリア女王から拝領したもので、長い間行方不明とされていましたが、世田谷の静嘉堂で発見されました。なぜ後藤にサーベルが贈られたのかというと、幕末に英国公使パークスを襲撃した刺客を、後藤象二郎と中井弘が撃退。その感謝の印として、サーベルが英国から下賜されました。その後、静嘉堂文庫創設者の岩﨑彌之助と、後藤の長女が結婚したことで、サーベルが岩﨑家に継承されたそうです。このサーベルは最初の展示室に展示されています。大変貴重な歴史的資料なので、ぜひこちらもお見逃しなく!Information会期:~7月30日(日)休館日:月曜日、7月18日(火)※ただし、7月17日(月・祝)は開館会場:静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)開館時間:10:00 – 17:00 (入館は16:30まで)※金曜日は18:00 (入館は17:30)まで。観覧料:一般¥1,500、大高生¥1,000、中学生以下無料
2023年07月11日東京国立博物館で、特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」が開かれています。本展のナビゲーターは、俳優の上白石萌音さん。メキシコで暮らしたことのある上白石さんが、展覧会の感想やメキシコの思い出などを語ってくれました!上白石萌音さんがナビゲーター!上白石萌音さん【女子的アートナビ】vol. 301特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」では、メキシコにある古代都市の遺跡群から、代表的な3つの文明「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」に関する至宝を展示。土偶や土器、石彫、首飾りや壁画など、さまざまな出土品約140件が紹介されています。メキシコは、16世紀初頭にスペインが侵略するまで、3千年以上も高度な文明が栄えていました。前1500年頃にオルメカ文明が興り、野生の動植物で暮らしを支え、暦を生み出し、さらに神への祈りなど捧げる儀礼の場やピラミッド、居住地などもつくられるようになりました。現在、メキシコの古代遺跡や歴史地区の多くは、世界遺産にも登録されています。そんなメキシコに3年間暮らしたことのある俳優の上白石萌音さんが、本展のプレス内覧会に登壇。展覧会の感想やメキシコの魅力を語ってくれました。ふわっと頬がゆるみました特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」会場風景――展示全体をご覧になって、いかがでしたか?上白石さん本当にいろいろな気持ちになりました。ワクワクしたり、おそれの気持ちを抱いたり、ふわっと頬がゆるむ瞬間があったり、精密な技術に驚いたり。すごく充実した楽しい時間でした。大昔の文明の品々なのに、その向こうに暮らしや作った人の存在、現代とのつながりを感じる瞬間もあり、フシギな気持ちになりました。また、私はメキシコで暮らしたこともあるので、すごく懐かしさも感じながら堪能させていただきました。――頬がゆるんだ作品とは、どのようなものですか?上白石さんふわっとした気持ちになる作品は、たくさんありました。出土品に描かれている生き物や人などの表情が、とても愛らしいのです。また、造形が絶妙でシュールなものもあり、そんなところにもメキシコの愛嬌を感じる瞬間がありました。小さい装飾品から大きい像まで、とても丁寧に装飾が施されていて、神や自然へのおそれ、祈りの切実さがにじみ出ているような気がしました。一番圧倒されたのは、「赤の女王」のマスクです。その展示室に差し掛かったときは、なんともいえない気持ちになりました。学芸員さんのお話によると、これを逃したら今後見ることができないかもしれないくらい貴重なモノということでしたので、ぜひこの機会を逃さずに見て、感じていただきたいと思います。ある者を憑依させて…《赤の女王のマスク・冠・首飾り》展示風景――音声ガイドの収録は、いかがでしたか?難しいところなどありましたか?上白石さん私は、音声ガイドを録るのが大好きなので、とても楽しみながらやらせていただきました。メキシコは住んでいましたが知らないことがたくさんあって、本当に勉強になることばかりでした。いろいろ学んだので、友だちに知識をひけらかしているところです(笑)。収録では、ある者を憑依させて読むところが台本にあり、そこが難しく感じました。ある者、というのは、展示されている「赤の女王」で、その女王を憑依させて読む場面があり、難しかったのですが、がんばりました。この部分は、ぜひ聴いてほしいです。――今回のお話がきたときは、いかがでしたか?上白石さん本当にうれしかったです。絶対にやりたいと思いました。メキシコへの恩返しになればいいな、と思い、日本とメキシコをちょっとでもつなぐことができたらと思いました。心をいっぱい動かした――メキシコでは、どんな思い出がありますか?上白石さん最初に思い出すのは、テオティワカンというメキシコシティにあるピラミッドです。住んでいたところからも車で少し行けば着くような場所にある大きな遺跡で、この展覧会でもフォーカスされています。そこに何度も父に連れられて行きました。当時は、まだピラミッドに登ることもできたので、汗をかきながら頂上まで登ったり、その大きさに驚いたり、幼いながらも心をいっぱい動かしながら歴史に触れたことを思い出します。父は社会科の教師なので、歴史のこともいろいろ教えてもらったりしました。――古代メキシコでは、豊穣を願って、生贄や食べ物をお供えしていました。今、上白石さんが祈りをささげて叶えてほしい願い事はありますか?上白石さん長年の念願は、両親と妹と四人でメキシコに里帰りすることです。なので、長期の休みがほしいです(笑)。まだ、一度も里帰りができていないのです。せっかく行くなら家族みんなで行って、長めに滞在したいので、いろいろなところにお願いをして、お祈りをしようかと思います。この展覧会を見て、さらにメキシコ里帰りのモチベーションが上がりました。――最後に、メッセージをお願いします。上白石さん本当に貴重な品がたくさんあるので、お子さんから大人まで、みなさん楽しんでいただけると思います。夏休みもきますし、ぜひ壮大な歴史に触れて、ワクワクしていただきたいです。そして興味が出たら、ぜひメキシコも訪れていただきたいです。もしよければ、音声ガイドもレンタルしてほしいです。よろしくお願いいたします。9月3日まで開催!音声ガイドは、上白石さんのほか、声優・杉田智和さんも担当されています。「赤の女王」や「雨の神」も出てきたり、クイズもあったりして、楽しみながら作品解説を聴くことができます。会場レンタルは¥650。アプリ配信版は¥700でダウンロード可能です。展覧会は9月3日まで開催。その後、福岡と大阪に巡回予定です。Information会期:~9月3日(日)※休館日は月曜日、7月18日(火)※ただし、7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館会場:東京国立博物館平成館開場時間:9時30分~17時00分※入館は各閉館時間の30分前まで※土曜日は19時00分まで開館※6月30日(金)~7月2日(日)、7月7日(金)~9日(日)は20時00分まで開館※いずれも総合文化展は17時00分閉館観覧料:一般¥2,200、大学生¥1,400、高校生 ¥1,000
2023年07月09日上野の森美術館で、特別展『恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造』が開かれています。本展のナビゲーターは、俳優の南沙良さん。恐竜が大好きという南さんに、展覧会の見どころや恐竜の推しポイントについて、お聞きしてきました!南沙良さんがナビゲート南沙良さん【女子的アートナビ】vol. 300特別展『恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造』では、恐竜や古代生物を描いた「パレオアート(古生物美術)」にフォーカスし、19世紀から現代までに制作された復元図や漫画、フィギュア、ファインアートなど、世界各国から集められた約150点の作品を展示。失われた古代世界を、アートで巡ることができる展覧会です。本展を企画された神戸芸術工科大学の岡本弘毅教授によると、恐竜が知られるようになったのは、19世紀前半。イギリスで巨大な爬虫類の化石が見つかり、未知の生物と判明したそうです。恐竜の「発見」から200年たち、その姿や形がどんなふうに変化していったのか、作家と研究者のイマジネーションによってつくられた古生物の姿を楽しめる展示になっています。プレス内覧会では、展覧会ナビゲーターで無料音声ガイドのナレーションも務めた俳優の南沙良さんが登壇。その後、インタビューも実施しましたので、まとめてご紹介します。巨大な生物が好き――まず、なぜ恐竜がお好きなのですか?南さん昔から、巨大生物が大好きなんです。恐竜やゴジラなど、大きいものに憧れていました。映画『ジュラシック・パーク』は全作品見ていますし、図鑑も昔からすごく好きで、飛び出す図鑑などもよく見ていました。恐竜のなかでは、肉食恐竜が好きです。強くて大きくて、自分がいかに小さいか、想像できるのがいいですね。――巨大生物ですと、例えばキングコングのようなものもお好きなのですか?南さん好きですね(笑)。大きくて凶暴なものが好きです。だから、恐竜も肉食がよくて。音声ガイドに「よし来た!」――音声ガイドのナレーションも初挑戦されています。恐竜好きなので、このお仕事は「よし来た!」という感じでしたか?南さんはい(笑)。恐竜に関わる仕事ははじめてなので、「よし来た!」と思いました。私は博物館や美術館も好きなので、うれしい気持ちになりましたね。――音声ガイドのナレーションはいかがでしたか。南さんふだん使わない難しい言葉やカタカナが多く、特に恐竜の名前が難しかったです。事前にいただいた資料を読み込んでから行き、私なりに一生懸命がんばったので、心地よく聴いていただけたらうれしいです。――音声ガイドには、恐竜の解説だけが吹き込まれているのですか?おもしろい聴きどころはありますか?南さん恐竜の解説だけでなく、画家や作品の解説もあります。解説があると、より深く楽しく見られるのではないかなと思います。私が印象に残ったのは、ウォーターハウス・ホーキンズの《イグアノドン晩餐会へのオリジナル招待状、1853年12月31日》についての解説。ホーキンズがロンドンの公園に製作した実物大のイグアノドンの模型の中で晩餐会が開かれたそうなのですが、私も、この晩餐会に参加したいと思いながら読みました。夢があっていいですよね。恐竜同士の戦いに惹かれる…――恐竜の博物館に行くのがお好きとのことですが、本展は美術館で開かれていて、恐竜や古生物を描いた絵画、パレオアートが見どころになっています。この点はいかがですか?南さん確かに、博物館の恐竜展は化石展示が多いですが、本展はパレオアートなので、珍しいと思いました。恐竜の絵には200年の歴史があり、昔はこんなふうに描かれていたとか、進化の過程を見られるのは楽しいです。また、画家によって作風に違いがあり、ポップなものがあったり、精緻なものであったり、いろいろありましたね。個人的には、恐竜の皮膚などが細やかに描写されている部分が好きです。――お気に入りの作品は?南さんチャールズ・R・ナイトの《白亜紀―モンタナ》です。ティラノサウルスとトリケラトプスの対決シーンを淡い色彩で描いた作品で、夢の中に出てきそうな幻想的なところがお気に入りです。私がイメージする通りの太古の恐竜です。恐竜同士の戦いにも惹かれますね。実際に見てみたいですし、想像するとすごく楽しいです。――恐竜にお詳しい南さんが、この展覧会で新たに知ったことはありましたか?南さん200年前にはイグアノドンの角だと考えられていたものが、実は鋭くとがった前足の親指だったというのはすごく驚きましたね。おもしろいなと思いました。フィギュアは何十体も!――コレクター気質があるそうで、恐竜グッズも集めているそうですね。南さんはい、たくさんもっています。パジャマやスリッパ、洋服などいろいろあり、家の中は恐竜グッズであふれかえっています。今日の私服も、ティラノサウルスのニットでした。――リアルにつくられた恐竜のフィギュアも集められているそうですが、どんなふうに楽しむのですか?南さん棚に飾って、眺めて楽しんでいます。恐竜を見て、ロマンを感じながらお酒を飲んだり(笑)。フィギュアは、家のインテリアにはあまり合わず浮いていますが、すごくお気に入りです。――フィギュアはどのくらいお持ちですか?南さん何十体かはありますね。高校生ぐらいから、ちょこちょこ集めて、だんだん増えていきました。――本展でも、コレクターの方が集めたリアルなフィギュアが展示されていましたね。南さんあれは、すごくよかったですね。欲しいです(笑)――最後に、あまり恐竜のことを知らないお友だちをこの展覧会に誘う場合、どんなふうに声をかけますか?南さん150作品もあるから、お互いの好きなものを探しに行こうという感じで誘いたいです。――お話を聞かせていただき、ありがとうございました。取材を終えて…恐竜の話を楽しそうに語ってくれた南さん。小さいころから、アート好きのご両親に連れられ、原美術館などの美術館や上野の博物館にも通っていたそうで、想像力や感受性が豊かな方でした。恐竜愛にあふれる南さんが語る音声ガイドは、ご自身のスマートフォンがあれば無料で利用できます。ぜひ、ガイドを聴きながら恐竜アートの世界を楽しんでみてください。Information会期:~7月22日(土)会期中無休会場:上野の森美術館開場時間:10:00 ~ 17:00(土日祝は 9:30 ~ 17:00)※入場は閉館の 30 分前まで観覧料:一般¥2,300、大学・専門学校生¥1,600、高校生・中学生・小学生 ¥1,000
2023年06月14日