くらし情報『日中台の関係性を遠景とした男たちの物語…愛と自由と運命を描く、東山彰良『怪物』』

2022年3月15日 20:10

日中台の関係性を遠景とした男たちの物語…愛と自由と運命を描く、東山彰良『怪物』

「僕は、臆面もなく愛とか自由とか孤独とかを書くのが好きなんです。常々思っていることですが、人間て自由に生きているように見えても何か目に見えないものに支配されて動かされているのではないか。そんなテーマを、現代と作中作の間で反復したかったんですよね」

物語の柱は、日本と台湾と中国の関係性を遠景とした男たちの物語だろう。しかし、本書でもっとも心惹かれるのは、柏山が溺れていく編集者の椎葉リサとの愛の行方や琴里との関係。そして、鹿が味わう、台湾の婚約者と新しく知り合ったシャオとの関係についての葛藤だ。

「そこで彼らを支配していたのは、あらゆる意味で、やはり愛と自由のせめぎ合いだった気がします。もし生きるか死ぬかの非常事態下にいたら、善なるものが命取りになるかもしれない。だから表に出てこないように、抑え込んでいなければいけないこともある。
それでも、みんなの、それこそ悪党の胸の内にも、青い鳥みたいなものがいるのではないかと思ってしまうんですね」

そう語る東山さんの思いが結実した、胸が震えるラストが待っている。『怪物』作中作『怪物』の書き出し=〈鹿康平が怪物を撃った〉理由も大きな謎。物語パートと現代パートが浸食し合い、美しいカタルシスへとなだれ込む。

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