地方都市の飲食店と人間模様を描く。食をテーマにした、ごはん小説が登場
また、カフェのランチメニューにするカレーのスパイス調合にのめりこむ夫と、幼児の子育てに追われ孤独を募らせる妊娠中の妻の話も。
「スパイスの調合と、違う立場同士の人の調合が重なるかな、という発想です。夫は誰かに美味しいものを食べてもらいたい人。妻は子供に食べさせるのが精一杯で、それが美味しいかどうか考える余裕がない人。正反対の二人がどうなるかを考えていきました」
とある派遣社員の女性は、贔屓のラーメン店の主人が亡くなり、味を引き継ぐことを決意。しかしレシピが見つからず、味が再現できない。
「これは代替のきく人材として働いていく人生に不安を感じていた女性が、オンリーワンの人生を歩むための選択をする話になりました」
町のパン屋の長男は小麦アレルギーの少女と出会い、独立して米粉のパン屋を開くつもりが前途多難で…。
「取材先の米粉パンのお店の店長のお話を参考にさせてもらいました。
自分でも米粉パンを焼いてみましたが、難しくて。作中でも最初は餅みたいなパンになりますが、それは僕の実体験です(笑)」
また、各話の合間に挟まれるのは、フードデリバリーのバイト女性のエピソード。彼女は食に興味がない。