政策として中途半端な点も? 出産育児一時金が42万円から50万円に
一定以上の所得のある約370万人の負担額が1割から2割に引き上げられました。日本の医療費は年々増大し、’19年度には44兆円、約30年の間に倍以上に増えています。
今回の出産育児一時金の増額は、子育て政策に力を入れているというメッセージを伝える意味ではいいですが、少々中途半端ではないかとも思います。出産費用をすべて国費負担にするとか、大学卒業まで面倒をみる、あるいはゆりかごから墓場までの社会福祉政策を行うなど、細々とした策で対処するのではなく、若年層から高齢者層まで一体保障のなかで組み直さなければ、本当の意味で「分配なくして成長なし」にならないのではないでしょうか。一部の人だけ受益があるのは、社会的協力を得られなくなる恐れも出てきます。
北欧の福祉国家では、国民は税金の使い道に敏感で、納得いかない場合は選挙で反対の意を表します。そこは見習いたいですね。自分が年間どれほど税金を支払い、何に使われているかに意識を向けることは、民主主義社会に生きる者の責任でもあると思います。
ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。