アジアの作家たちによる“奇跡のアンソロジー”も! 押さえておきたい小説界の新潮流
『絶縁』がアジアの作家を知る入り口になってくれるはずです。
三浦:アンソロジーってなかなか売り上げにつながりにくいなかで、想像以上に売れたのが百合小説の『彼女。』です。相沢沙呼さん、織守きょうやさん、斜線堂有紀さんら豪華なラインナップも魅力ですし、ガールズラブという側面だけでなく、女性同士の関係性からジェンダーの問題にまで肉薄し、読みごたえ十分。
吉田:百合というポップな看板を入り口にして、女性性の議論にまでたどり着くのは、すごくいい届け方ですね。
三浦:最近、詩や短歌の世界から小説への流入が目立っています。それも詩や短歌界のスターが満を持して小説デビューしたというより、小説の完成度でまず注目されて実は詩や短歌の有望株だったというケースが多い印象です。
吉田:川野芽生さんも歌人でしたよね。
僕はあまりこのジャンルは詳しくないんです。ほかにはどんな方がいますか?
三浦:すごいと思ったのは、山﨑修平さん。彼は詩人と文芸評論家の二足のわらじを履きながら小説の世界に来た人。初小説の『テーゲベックのきれいな香り』は、詩人である主人公が「書くとは何か」という問いに向き合う連作集で、わかりやすいストーリーがあるわけじゃないけど、読み進めた先に私自身が見知ったような懐かしい風景や感情がふと現れたりする。