「期待を裏切ることをいつも考えている」“ノンバイナリー”を公言した女性監督の戦いと支え
なぜなら、彼女を見ればつねに自分の居場所がわかるからです。私の場合、シナリオを書くというのは意識と無意識のバランスを取る作業であり、その動きのなかから物語が生まれます。無意識の部分は謎めいていてはっきり見えないこともありますが、それを形にしてくれるのがアントニアです。
シナリオを書くうえで、一旦自分を見失うというのも私にとっては大事なことですが、そればかりだとどこかに流れていってしまうことがあります。でも、彼女は海に浮かぶブイのようにそばにいてくれたので、私は完全に自分を見失うことなく、バランスを保つことができました。
―素敵な関係性ですね。ジュリアについてもおうかがいしますが、シーンによっては女性性が強調されているときもあれば、男性性が表に出てきているときもあり、非常に興味深いキャラクターだと感じました。セクシャリティについてはあえて明確にしていませんが、どのようにして人物像を完成していったのでしょうか。
ローラ監督ジュリアは誰にも止められない川の流れのような強い力を持った特異な存在ですが、同時にとても自由な人物にしたいと考えました。彼女を男性性と女性性の間を揺れ動いているように見せたのは、2つの間で絶え間なく動いているイメージを持たせるためです。