監督引退の可能性も…「仕事から離れてゆっくり休みたい」美しき天才グザヴィエ・ドランが明かす思い
と同時に、僕は自分を肯定して愛することにも抵抗がない。ちゃんとできていれば、自分に対して「これでいいんだよ。まさに必要な演技だった」と言えるんです。
―そういった葛藤がドランさんの演技に深みを与えているようにさえ感じます。
ドランさん僕は自分の現場でも、ほかの監督の現場でも演じているときはつねにいろんなことを考えていて、それが止まることはありません。なぜなら、その場面に入り込みたいと思っても、そこには照明があり、多くの人がいて、床には自分の位置を示す印があることも全部わかっているので、完全に自分を忘れることは不可能だからです。しかもクリエイターとして、演者として、また一人の人間としてもさまざまな感情を持っていますからね。
いまは仕事を離れてゆっくりしたい
―つまり役に没頭しつつも、どこか客観的な視点がなくなることはないと。
ドランさんだから瞬間的に何もかも忘れて完全に入り込むのは、僕にとっては自分に嘘をついているような気さえしてしまうのです。もちろん努力はしますし、できる限りのことはします。でも、つねにどこかで「やってはいけないこと」と「やらなければいけないこと」に対する意識が残っているのかなと。