三浦透子「難しいけれど、面白いチャレンジになる」 難解な心理を描くイプセンの作品に挑む
この作品が描いているのも、そういう複雑さなんじゃないかと思っています。レベッカは思想を持った確固とした人のように見えるけれど、じつは彼女自身も葛藤しながら選んだ片方の道を積み重ねてしまった気がするんです。思い描いた理想の形とは違う方向へと物事が進んで、自分の中でも着地点を見つけられずにいるように思えて。そこが役の面白さでもあり、表現するうえでの難しさでもあるのかなと思います」
高い評価を受けた映画『ドライブ・マイ・カー』でも、話題を呼んだドラマ『エルピス』でも、一筋縄ではいかない役を演じてきた三浦さん。強さの中にある弱さや弱さの中にある強さといった、表面に見えている一面的な感情ではない人間の重層的で複雑な感情を表現してきた。
「私自身、強い部分もあれば弱い部分もあるんですよね。意見を言うときに、言っていいものなのか考えたり、どういう言葉を選ぶのが適切なのかを必死で考えたりするし、言う寸前に迷ったり、怖くなったりすることもある。それだけ考えても考えても、やっぱり感情を優先してしまって、後悔することもあって。
だから自分が演じる役も、どんなに強く見える人であっても、その言動は少なからず私と同じような葛藤があったうえで出てきたものだろうし、私自身もそう思いたいんでしょうね」