江戸時代から現代まで…『大奥』『きのう何食べた?』作者による、連作オムニバス『環と周』
たとえば明治時代の女性は、親の決めた相手との結婚に疑問すら持たなかったかもしれませんが、女学校という今までなかった世界でお友達を作ることが可能になるわけです。不自由さだけに目を向けず、できることが増えていたのだと想像して描きました」
環と周、同名の人物が出てくることと、“好き”を描いていることだけが共通項に思える各話が、どうつながるのか。大恋愛のようにドラマティックでなくとも、どんな人生もかけがえのない出会いに溢れていると思わせてくれる読後感が心地よい。
「あのときあの人に出会わなかったら、今の自分はなかったと思えるような出会いって、たくさんあると思うのです。たとえ悲しい別れ方だとしても、どの話もこの人に会えてよかったという喜びを前面に出そうと思いました。冒頭の現代の夫婦が一番平凡なんですけど、彼らは平凡だからいいのかなという気がします。そう考えると自分の隣にいる職場の人や同級生なども、実はすごくご縁のある人かもしれないですよね」
久しぶりに短編を描いたことについては「楽しかった」と振り返る。「5つの短編で見えている景色がすべて違うので、描き手としてもいい経験ができてありがたかったです」