小島秀夫「俳優にオファーするのも実際に会ってから決める」“人は直接、移動して出会うべき”と語る理由
ところが、コロナ禍でのパフォーマンス・キャプチャー(注5)では、苦い経験をすることとなった。撮影現場となるLAのスタジオに、キャストと現地スタッフに集結して貰い、僕は東京のコジプロから遠隔でのディレクションを行おうとした。Zoomやスマホ、タブレットを数十台駆使して、現場のスタッフやキャストと繋いだ。リモート慣れしたはずの我々だったが、それでも無理があった。現場は混乱した。現場でのカメラや俳優たちの位置を把握し、カメラワークや演技指導を的確に伝え、演出するのは困難だった。
苦肉の策として導入したのが、Sonyの研究開発部門が考案した「窓」という最先端のシステム。LAと東京に対になる大きな縦型モニターを2セット設置。
等身大の巨大なスマホ画面だと考えていい。双方向に映像と音声が同時に送れる。向こうへは行けないが、LAと東京に“どこでも窓”が出現した感じだ。この「窓」を通して、キャストたちとのコミュニケーションを取り、なんとか撮影をこなした。
今後は、仕事や会議、デート、面談、面接、飲み会、式典、様々なコミュニケーションがメタバース上で標準化するのであろうか?いや、僕はそれは好きではない。