温かい物語かと思いきや不穏な空気に…寝たきりの女性と高校生の交流を描いた『二人目の私が夜歩く』
高校3年生の茜はある日、寝たきりの患者を訪ねる「おはなしボランティア」に誘われ、交通事故で重い障がいを負った女性・咲子と出会い親しくなる。二人の交流を温かく描く物語かと思いきや、次第に不穏な空気が立ち込めていくのが辻堂ゆめさんの『二人目の私が夜歩く』だ。
昼のわたしと、夜の彼女。一つの体を共有する二人の真実。
「私自身が高校2年生の時、祖母に誘われて同じようなボランティアに行ったことがあるんです。相手は30代の女性の方で、すごく喜んでくださって。受験が終わったら会いに行こうと思っているうちに、その方は呼吸器が抜ける事故で亡くなってしまいました。当時の私はまだ身近な人の死にも直面したことがなくて動揺して、ずっと悲しい思い出として心の中に残っていました」
いつか何らかの形で、その後もあったかもしれない交流を物語にしたいと思っていた。
「でも、そんな簡単に私が普段書いているようなエンターテインメント作品にはできなくて。デビュー10年目になって、ようやくこういう形にすれば書く意味があるかなと思えるものができました」
受験勉強と咲子との交流で過ぎていく日々のなか、茜は自分が深夜、夢遊病者のように出掛けていると気づき、ある結論にたどり着く。