小島秀夫「髭と眼鏡が僕のアイコン」 自身の“ヒゲとメガネ”の歴史を振り返る
2015年年末、30年近く勤めたKONAMIを辞めて、独立した。この時、自分もイメチェンを図ろうと思った。そこで髭を生やそうと考えた。
実は、髭面は嫌いだった。昭和の時代、髭はどちらかというとネガティブな印象を与えるものだったのだ。それに、毎朝、目覚めて髭を剃るという行為が、1日の始まりとしては心地よいものだった。髭を生やせば、その小さなリズムは失われてしまう。
しかし、だからこそ髭は独立の新たなアイコンになる、と考えたのだ。
本当はスピルバーグみたいな映画監督が生やしているボリュームのある髭が良かったが、毛深くはない僕の髭はそこまでは成長しない。仕方なく、手入れの効いた無精髭にすることに。もちろん、起床して無精髭を整えるあの儀式は続けている。
30代からずっと老舗眼鏡屋である白山(はくさん)眼鏡店(注3)を愛用してきたのだが、フランスの眼鏡ブランドであるJ.F.REYに出逢った。2005年くらいのことだ。その美しさや繊細さ、それらのデザインを可能にする職人技に惹かれた。今に至るまでずっとJ.F.REYだけをかけている。元祖デザイナーであり、元祖オーナー(現在は別のオーナー)であったジャン・フランソワ・レイさんとも朋友になった。