小島秀夫「他人からサインをねだられる人生なんて、想像もしなかった」 “サイン”遍歴を明かす
これらの証明(サイン)が世界中のファンの元に保管されている。
このサインの原型は、小学校の高学年の頃に描き出したものだ。自分の絵や小説、作品にサインをイタズラに記すようになった。当時、憧れていた松本零士先生のサインを真似て、自分流にアレンジしたものだ。比べてみれば、似ていることが分かるはずだ。イタズラから生まれた適当な記名(サイン)が、いつの間にか世界中に頒布され、小島秀夫の公式象徴(サイン)として登録されてしまっている。単純には喜べない複雑な気持ちだ。サインを描いている時、心の中ではそんなことを考えている。
「これ、小島君のサインやろ?」と、“なっかん”がスマホの写真を拡大する。そこには、“1981”という西暦が丁寧に書かれている。ピースマークはまだないものの、まさしく僕のサインだった。鑑定団でも僕のサインだと認証できる、紛れもない僕の証(サイン)。
「これ、サインもあるし、値打ちあるんとちゃうか?」と“なっかん”が呟く。そんなイタズラな物言いに悲しい顔で返すと、「冗談やで。これは僕らの“思い出”のサインやからな。スケッチブック、実家から持ってくるわ。
小島君に“イタズラ”を返そうとおもて」