忽然と消えた、ピル解禁を訴えた女性のその後に迫る…桐野夏生によるセミドキュメンタリー風長編
桐野夏生さんの最新刊『オパールの炎』は、1970年代にウーマンリブを牽引していたひとりの女性をめぐり、彼女とさまざまな形で関わっていた人々が当時を語る、セミドキュメンタリー風の長編だ。
’70年代に突如、表舞台から消えたフェミニズムの旗手のその後に迫る。
「きっかけは、小池真理子さんとの対談で、中ピ連(ピル解禁などを訴えた団体)のリーダーだった榎美沙子さんの話が出てきたことなんです。『榎さんの“ピル解禁や中絶の自由など、女性の体についての権利は女性自身が持っている”という主張は正しかったね』と意気投合して。その対談を読んだ女性編集者さんから榎さんについて書いてみませんかと提案されたんですね。私も、鮮やかに現れて、忽然と消えてしまった榎さんがいまどうしているのか、どんなふうに生きてこられたのか知りたいと思ったんです。当時の価値観では榎さんはエキセントリックにも見えて、同性からも賛否両論がありました。けれど、もし生きておられたら、いま彼女を慕う女性がたくさんいることを伝えたい。
そんな復権を願う気持ちもありました」
しかし、いざ取材やリサーチを始めると、予想以上に難航したそう。
「このネット社会で、ここまでわからないと思わなかったです。