小島秀夫「“オキシトシン”よりも大切なものをいただきました」 マッサージ店での出会い
マッサージも、ジムもコロナで辞めてしまった。しかし、しばらくして、マッサージへ通い始めることを決意した。それは、普通の生活に戻るための第一歩としての布石だった。マッサージからでも以前の生活を取り戻そう、そう思って、コジプロのある品川のとある店に飛び込んだ。当時は、まだコロナ禍の真っ只中。リラックスというよりは、緊張感の中でのマッサージだった。それから、1年以上、指名はせず、同じ店に通い続けた。
ある日、小柄なコケティッシュな感じの施術師にあたった。
マスクをしていて、顔はわからない。僕もマスクをしたまま施術を受ける。彼女は自ら名乗ることもなく、僕も誰何しなかった。僕は、施術中には世間話はしない。仕事や悩みから解放されたいからだ。
気がつくと、久しぶりに眠ってしまっていた。僕は、彼女の丁寧な施術と魅力的な声、やわらかで明るい雰囲気に惹かれた。彼女をまた指名したくなった。
でも、名前も顔も知らない。帰宅後、レシートを見ると、そこには担当者の名前があった。
しかも、本名かどうかはわからないが、キュートな名前だった。仮に“Mo”さんと呼ぶ。徐々にコロナが緩和され、僕の方は、途中からマスクを取っての施術を許された。