小島秀夫「“オキシトシン”よりも大切なものをいただきました」 マッサージ店での出会い
しかし、施術側の彼女はマスクをつけたまま。彼女とは、約2年もの間、ほとんど話はしなかった。挨拶と天気の話があるくらい。会話はないものの、全くの知らない人とは違う、気持ちのいい距離感。職業や仕事、個人的なことは何も交わさないサイレントな信頼関係。コナミ時代に通っていた六本木の店とかでは、「お客さん、何してる人?」と毎回、執拗に聞いてくるのが常だったのに。
国内にいる時は、週一くらいで訪れるのが習慣になった。ところが、コロナが収束し始めると、お店が混みだした。
“Mo”さんは、お店でも人気らしく、予約できないことが増えていった。僕のスケジュールは流動的で、事前に予約ができないことが多い。予約が取れない時は、別の人の施術を受けた。今年の春くらいだったろうか。予約が取れず、指名なしで、空いている人の施術を受けた。そこで“Mo”さんとはまた違う、別の意味でのうまい施術者に出逢った。もともと指圧や台湾式足ツボが好きな僕には相性がいい“力のある”施術だった。その人を“Mi”さんと呼ぼう。
“Mo”さんにも逢いたいものの、僕は“Mi”さんを優先した。たまに壁の向こうで“Mo”さんの声を何度か聴いたこともあった。