主人公は作者の世の中に対するモヤモヤを具現化したキャラ!? 不思議な魅力がクセになる『路傍のフジイ』
鍋倉夫さんによるコミック『路傍のフジイ』をご紹介します。
世間的な価値観の“蚊帳の外”で幸せを享受するフジイに夢中!
素敵なパートナーがいて、仕事ができ、友達にも恵まれている。誰もが羨む人生かもしれないが、幸せの形はそれぞれで、他人がジャッジすべきではない。“藤井”を見ていると痛感するのだが、鍋倉夫さんはそんな稀有な主人公についてこう語る。
「世の中の空気がどんどん不寛容になっている気がして、普段自分が感じているモヤモヤを具現化した結果、生まれたキャラクターです。こんな人、現実にはいないかもしれないけれど、願望込みで描いています」
藤井は40代独身で非正規社員。結婚式に一度も呼ばれたことがなく、会社でもどこか軽んじられている。社交性があるわけではなく、いつも周りから浮いているが、かといって人嫌いというのでもなさそうだ。
「最初は、いつも笑っているような優しい顔つきにしていたのですが、あまりしっくりこなくて。今のようなちょっと目付きの悪い、への字口にしてみたら、うまくハマりました。見た目が違うだけで印象がこうも変わるのかと、キャラクターデザインの大切さを実感しました」
会社や学校では冴えない人物で通っているけれども実は…、という展開は青年マンガの王道といえるが、藤井の場合は裏の顔や秘めた能力なども特にない。