主人公は作者の世の中に対するモヤモヤを具現化したキャラ!? 不思議な魅力がクセになる『路傍のフジイ』
ギターや絵画、陶芸など意外と多趣味でいろんなことに手を出しているけれど、どれもそれなり。会社の外で特に親しくしているような人も、やはりいない。しかし一見「つまらなそう」とか「寂しそう」などと切り捨ててしまいがちな日常の解像度を上げていくと、実に満ち足りていて楽しそうなのだ。
「何も持っていないように見えるけど、幸せに生きる才能みたいなものを持っているんですよね。そんな魅力に気づく人もいれば、ピンとこない人もいる。いろんな出来事や人物を藤井に当ててみて、彼ならどう振る舞うだろうと考えつつ、聖人として描かないよう気をつけています」
主人公なのに、内面が一切描かれないのもポイント。読者は周辺のキャラクターの視点を通して、表情の乏しい藤井がどんな感情を抱いているのか推し量り、じわじわと彼のことが気になってしかたなくなる。
「タイトルにも込めているのですが、すれ違うだけの人というニュアンスで藤井を描いています。
誰と接しても変わらない人っているじゃないですか。自分はそうじゃないので、いつもブレずにどっしりしている人が羨ましい。藤井はたぶん、そういうタイプなのかもしれないですね」
『路傍のフジイ』3小さな幸せを楽しむ日々、そして知られざる中学時代が描かれる3巻。