「私は“即興の魔力”に取り憑かれた」。社会的弱者が分断された日本を音楽で変える「即興楽団UDje( )」を率いるナカガワ エリ【前編】
人によって同じ千円でもずいぶんと価値が違うんです。
(みんなで声出し即興のハーモニー_うじゃ芸能研究会/大阪Photo byオカモトマサヒロ)
3歳下の障害を持つ弟の存在
エリさんがこの活動を始めたのは、3つ年下の弟の存在があったから。彼は生まれつき視覚障害、知的障害、癲癇、強い自閉症がある。そのような重度の障害を持つ弟がいる環境をエリさんはこう語ってくれた。うちは家族が機能していなかったんです。弟に障害があったこともあって、小さな頃は母のもとを離れて祖母の家で暮らしていました。だからまず母との付き合い方がわからなかったんです。父は家にお金を入れず、家出ばっかりしてたから、母はとても苦労して私と弟を育ててくれました。
そんな父も私が中学校二年生の時に亡くなってしまって。子供らしくいられなかったから、子供の頃の記憶っていうのがなくて。母親の母役をずっとしていたかもしれません。その後、美術学校で現代美術を専攻した彼女は、作品のテーマを「家族」として取り組んだ。しかし、作品を作れば作るほど、彼女の奥底に眠っている黒い物の蓋を開けていくような気分が続き、とても辛くなり、美術の道をあきらめ、一旦会社勤めをする。