【シネマモード】鬼才アトム・エゴヤンが描く、2人の女
(Photo:cinemacafe.net)
自分が女でありながら、こういう作品を観ていると、女ってつくづく妙な生き物だなと実感させられます。カナダの鬼才、アトム・エゴヤン監督が新作の題材に選んだのは、全く違う人生を歩んでいた2人の女が出会ったことから始まる愛憎劇。2003年にアンヌ・フォンテーヌ監督が、ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール競演で映画化した『恍惚』をベースに、よりサスペンスフルに仕上げられた『クロエ』です。
これまで、『スウィート ヒアアフター』、『エキゾチカ』、『フェリシアの旅』、『アララトの聖母』、『秘密のかけら』などで、印象的な女性像を映し出してきたエゴヤンが今回描いたのは、正反対の2人の女。ひとりは、社会的地位と申し分ない家庭を持つ女医のキャサリン。もうひとりは、若く美しい娼婦・クロエ。最愛の夫の浮気を疑ったキャサリンは、レストランで出会ったクロエを雇い、夫・デビッドを誘惑させて彼がどんな行動をとるかを逐一報告させるのです。
年齢も、住んでいる世界も、社会的地位も全く違う2人ですが、見えてくるのは、心にある満たされない思いと孤独感という共通点。
キャサリンは、何不自由のない生活を送りながらも、息子の親離れや老い、夫の浮気疑惑などに悩み、孤独感と焦燥感を募らせ、女としての自信を失い始めています。