『麒麟の翼』阿部寛インタビュー 刑事・加賀を通して見る父への思い、後輩への思い
その関係性や思いは「赤い指」で描かれているが、阿部さんはさらに、加賀が持つ独特の“優しさ”についても言及する。
「刑事として生き、家族を顧みなかった父への思いが小さい頃からあって、その真意を知るために彼も刑事になって追いかけている。そうした思い以外に、加賀はこの仕事で何かを背負っている気がするんですよね。それが何なのかは分からないんだけど…悲しさや孤独感を感じます。刑事という仕事の限界を知りつつも捜査し、だからこそできる限りのことをやろうとして、時間がないのに多くの人を救おうとしているように僕には見える」。
「赤い指」である種の“和解”を遂げたように見える父と息子だが、本作ではさらに深く、死の間際の父親の思いを加賀は思い知らされることになる。
少しだけ憂いの混じった表情を浮かべ「背中を追ってきた父のさらなる部分――父の哀れさ、息子に対する弱さがあったということは、加賀にとってショックであると同時に嬉しかったとも思う」と語る阿部さん。歳を重ねていく中で気づかされたという、寡黙なエンジニアだった自身の父親に対する思いを明かしてくれた。
「10代の頃は決して嫌いだったわけじゃないんだけど、ほとんど親父と話をした思い出はないです。