2012年5月21日 18:21
アルモドバルが、生きるファッション。史上最高級の「オートクチュール」とは…?
もともと服は、そんなデリケートな肌を守るためのもの。その機能を考えると、「第二の肌」とも言える存在です。そこで、ゴルチエの衣裳の登場です。今回、彼が作った衣裳は、まさに第二の肌のような存在。ベラが冒頭からほぼ全編を通して着続けているのがこれです。身体の線にぴったりと沿ったボンデージ風の肌色のボディストッキングで、遠目に見ると、裸のように見えるのですが、近づくとその不自然さに気づくというもの。この演出こそ、このテーマについてのアルモドバルらしいファッション・アプローチと言えるのかもしれません。そして、ある意味では、このスーツで自分の気持ちを測ることもできるはず。
考えてもみてください。いくら、「ジャン=ポール・ゴルチエのデザインした服だよ」と言われても、あのスキン・スーツを「着ろ」と言われて喜べるかどうか。もちろん、好みによって着たいという人もいるでしょうが、私には無理…。その気持ちを考えてみれば、ことの大きさは想像に難くありません。
自らの肌をはぎ取られ、ロベル博士により人工の皮膚を与えられたベラの絶望と嫌悪は、自らの内面そのものとも言えるお気に入りの服をはぎ取られ、機能的とはいえ不本意な格好を押し付けられたファッショニスタの絶望や嫌悪と重なるのでしょう。