2012年5月21日 18:21
アルモドバルが、生きるファッション。史上最高級の「オートクチュール」とは…?
もちろん、衝撃の度合いはかなり違うでしょうが。
本作では、他者に“踏み込まれる”ことの残酷さを、自らの肌を失ったベラの視点を通して繰り返し描いていますが、冒頭では直接的にファッションを他者から押し付けられることの嫌悪を表現した場面も登場しています。物語のキーパーソンである若い男・ビセンテが、母の経営するブティックで意中の店員・クリスティーナにドレスを贈るシーンがそれ。そのドレスこそ、ドルチェ&ガッバーナの花柄ワンピースなのです。彼は、このドレスを着た彼女を見たいと言うのですが、クリスティーナはきっぱりと断ります。するとビセンテはその服の良さを強調し、なお薦めるのです。するとクリスティーナは「そんなに好きなら、自分で着れば」と言うのです。この場面は、物語の伏線として、別の意味でも非常に重要な役割を果たしているので注目していただきたいのですが、ファッショニスタの心情を表現しているという意味でも、クリスティーナの言葉はとても深い意味をもっているのです。
自らの肌を失うことの残酷さだけが、本作のテーマではありません。はじめは絶望に満ちていた彼女が、あることに気づき始めるところから、物語はさらにアルモドバルらしさを増していきます。