【シネマVOYAGE】名作に魅せられた少女が、イタリア中を旅する『フェリーニに恋して』
のチラシを受け取り、吸い込まれるように映画館へ──。
映画祭で『道』を鑑賞し、フェデリコ・フェリーニという映画監督の存在を知り、その世界観に魅了されたルーシーは、帰宅後フェリーニの作品を片っ端から観て過ごす。そして「フェリーニに会いたい! 会って話しをしたい!」と、彼に会うためにイタリアへ行くことを決めてしまうのだった。好奇心や興味によって引き出される行動力はものすごいもので、母に守られてきた娘は、母を想いながら籠から羽ばたき、旅に出る。離れていても心は繋がっている──そんな母と娘の愛の描き方も素敵だ。
旅の途中で、フェリーニの映画に登場するキャラクターが現れるのがユニークだ。『道』のザンパノが幻想の世界への誘導役として登場するほか、『甘い生活』のシルヴィアとマルチェロ、『8 1/2』のグイド、16作品以上の名シーンへのオマージュが散りばめられている。たとえフェリーニの映画を観たことがなかったとしても、ルーシーがフェリーニに導かれたように、観客はルーシーに導かれ、ルーシーと一緒に旅をしているように感じるだろう。
ローマ、ヴェネチア、ヴェローナ…イタリアに行きたくなる。
なかでも行ってみたいのは、ルーシーの旅の終わりと人生の始まりを感じる、とてもファンタジックなシーンとして描かれている場所、ラストシーンで登場する「Osteria Margutta」。