『ドクター・スリープ』が描き直すことに成功した 「シャイニング」の本当の意味
キングが小説「シャイニング」の続編となる小説「ドクター・スリープ」を発表したのが2013年。その映画化をマイク・フラナガンが手がけるとの第一報が入った時、彼ほどの適任はいないだろうと思った。キングもその強い影響下にある作家、H・P・ラヴクラフトへのオマージュに満ちた『オキュラス/怨霊鏡』(2014年)、まるで『シャイニング』のように少年の見た悪夢(ビジョン)が現実の世界に侵食していく『ソムニア -悪夢の少年-』(2016年)。フラナガン作品は、その物語設定や状況設定の面白さだけでなく、若手監督によるホラー映画にありがちな「投げっぱなし」には終わらず、その初期作品から見事な「まとめ力」と「着地点の美しさ」が特徴的だった。映画『ドクター・スリープ』においても、『シャイニング』が小説と映画で結末が異なることを逆手にとったオーバールック・ホテルでのクライマックスを用意することで(ちなみに小説では『シャイニング』の時点でホテルは焼失している)、映画『シャイニング』の続編として存分に楽しめる作品でありながら、小説「ドクター・スリープ」の映画化としてもパーフェクトと言っていい仕上がりとなっている。